ジャスティン・トルドー首相は4日から2日間、オタワで全国主要市長と会談した。保守党政権時代にはなかなか実現しなかった首相と市長との会談。トルドー首相は5日の記者会見で、「10年間無視されてきた関係を再構築する」と語った。

 大都市の市長で構成される委員会BCMCの議長を務めたバンクーバー市グレゴール・ロバートソン市長は、首相と共に記者会見に臨み、市長の立場として首相と協力できることを歓迎すると語った。

 今回の会談でのBCMCの目的は、自由党政権が約束しているインフラ整備予算拡充に対する分配の懇願。首相は全ての要求に応じることはできないが、必要としているところに公平に分配すると語った。他にもシリア難民救済のための住宅問題の解決や温室効果ガス削減も会談内容に含まれた。

 ロバートソン市長は、メトロバンクーバーのインフラ整備に言及し、2本の新規スカイトレインの早期着工のための支援が必要と主張。その必要性は首相も理解していると述べた。

 また同日にオタワを訪問し、首相と会談したブリティッシュ・コロンビア州クリスティ・クラーク州首相は、BC州の橋と港湾の整備、BC州とアルバータ州を結ぶ送電線の改善などの必要性を主張。カナダで最も経済的に安定し、成長し続けているBC州でのインフラ整備はカナダ全体にとって重要で、連邦政府の支援と協力が不可欠と主張した。

 

 日本の種子島宇宙センターより、12日に打ち上げが予定されているX線観測衛星アストローH。この衛星は、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が米国航空宇宙局(NASA)やカナダ宇宙局、ヨーロッパ宇宙機関などと共同で開発を進めてきた観測衛星だ。

 カナダ宇宙局は、この衛星が宇宙のどの方角を向いているかを、レーザーを用い正確に計測する装置『カナディアン・アストローH・計測システム(CAMS)』の開発を担当。実際の装置を製作したのは、オンタリオ州カナタに本社を置くネプテック・デザイン・グループ社。

 このプロジェクトに、カナダの主席研究員として10年近く携わってきたセント・メアリー大学(ノバスコシア州ハリファックス)の教授で天文学者のルイジ・ギャロさんは、打ち上げに立ち会うために日本に向かった。ギャロさんはメディアの取材に対し、まるでクリスマスを待ち焦がれる子供のように興奮していると答えている。

 宇宙に存在する天体は様々な波長の光を放っているが、われわれが地上で観測できるのは可視光など、ごく一部に限られている。それ以外の光(X線など)を観測することで、銀河の生い立ちや中性子星やブラックホールの周りの極限状態での物理法則を探ることができると言う。

 ブラックホールは周りのものを全て飲み込み、何も出てこられないというのが現在の定説だが、実は同時に多量の物質を吐き出しているのでは、とギャロさんはみており、今回のX線観測衛星がどんな新発見をもたらしてくれるのか、心待ちにしている。

 アストローHは打ち上げ後、機器の調整とテストを行い6カ月以内には観測を開始する予定。

 

 イギリス・オランダの石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルは4日、ブリティッシュ・コロンビア州北西部キティマットで進めている液化天然ガス(LNG)開発事業について、最終的な投資決定を今年末まで延長すると発表した。当初は今春にも決定を発表する予定だった。

 同日に発表した2015年通期決算で、利益が前年比87%減の19億4000万ドルと13年以上ぶりの低水準だったと報告。原油価格の急落が要因で、これからも必要があれば経費削減をさらに進めていくと発表した。

 同社はすでに事業計画の延期や撤退を表明。カナダ国内では、昨年10月、アルバータ州カーモン・クリークのオイルサンド事業から撤退することを発表した。

 シェルカナダ広報は、「LNGカナダ合弁事業パートナーは、市場の状況を踏まえ、最終投資決定を2016年末まで延長することが理にかなっているということで合意した」と発表した。LNGカナダは、シェルが50パーセントを出資、その他、中国石油天然気、韓国ガス公社、三菱商事が共同出資している。

 同じくキティマットでLNG開発事業を進めているマレーシアの国営企業ペトロナス社主導の計画は、昨年6月に一応の最終投資決定をした。しかし、設備建設の環境査定が現在も進行中で、自由党政権の環境審査基準変更により、さらに遅れる可能性がある。一方、LNGカナダはすでに環境基準については許可が下りている。

 今回のシェルの発表についてBC州クリスティ・クラーク州首相は、原油価格急落により事業縮小が行われる中、LNGカナダが依然BC州のLNG事業に関心を持ち今年中に回答を出すというのは前向きな姿勢だと思うと語った。

 

 オンラインゲームがきっかけで5年ほど前に知り合い、昨年結婚したブリティッシュ・コロンビア州のカップルが、夫のがん治療のためにアメリカの施設に赴くことを決めた。

 当時アメリカ・テキサス州オースチンに住んでいたミッシェルさんが、将来の夫ブランドン・デュリエウさんをはじめて知ったのは、世界中で人気のオンラインゲーム『ワールド・オブ・ウォークラフト』の中でのことだった。その後3年間、彼らはオンライン上で親交を深めていったあと、ミッシェルさんは意を決してビクトリアに住むブランドンさんに会いに行くことにした。1週間の滞在だったが、二人は一目で恋に落ち、ミッシェルさんはビクトリア大学海洋生物学科への入学手続きを進めた。彼女は小さい頃から海洋生物学者になることを夢見ていた。

 一緒に暮らし始め全てが順風満帆に見えた二人に、昨夏変化が訪れた。造園技師として働いていたブランドンさんが、脱力感を訴えるようになり、また理由もなくあざができることが増えた。

 そんなある日、彼らが見ていた医療ドラマの中で自身と同じ症状を呈している患者が白血病と診断されているのを見たブランドンさんは、念のためホームドクターを訪れることにした。昨年8月のことだった。

 血液検査の結果すぐに総合病院に行くよう促され、出された所見は急性骨髄性白血病(AML)、進行性の強いがんだった。

 バンクーバー総合病院に入院したブランドンさんには2セットの化学療法が施された。その間に彼はミッシェルさんにプロポーズし、二人は結婚式の準備を進めることにした。

 こうして昨年10月18日、家族と親しい友人に囲まれて結婚式をとり行った二人だが、化学療法が全く効いていなかったことを医師から告げられたのは、その前日だった。

 続いて行われた新薬の治験では、当初快復の兆しがみられたものの再びがんが進行するようになった。ブランドンさんの肝臓に負担をかけることから、新薬の投与は打ち切られ、今年1月には医師から打てる手は全て打ったと告げられた。

 それでも常に前向きに、そしていい面を見るようにしている二人は、カナダでは試すことのできない治療薬のためアメリカ・テキサス州ヒューストンにあるがん専門の治療施設、MDアンダーソンがんセンターで治療を続けることを決めた。

 しかしカナダ国外、それも認可されていない新薬の治療にはBC州の健康保険もきかず、最初の診断だけでも3万7000米ドルかかる。その先の治療には何十万ドルも必要となるだろう。最近ミッシェルさんはオンライン上の募金サイトを立ち上げ寄付を募り始めた。

 家族や友人からさっそく申し出があり、ウェブサイト開設から1週間で6万ドル以上が集まった。ミシェルさんは人々の思いやりに感謝しても感謝しきれないと、取材に語っている。

 

 中南米地域を中心に、世界中に感染が拡大しているジカ熱。特に妊婦が感染した場合、胎児や新生児に脳の欠陥や障害を引き起こす小頭症との関連が指摘されており、カナダは同ウィルスの国内への侵入を水際で防ぐ対応を進めている。

 その一環としてカナダ血液サービスは、国内で供給されている血液がウィルスに汚染されるリスクを低減させるためとして、アメリカ本土やヨーロッパからカナダに入国した者に対し、入国後21日間は献血を禁止する待機期間を設定した。また、この制限は臍帯血(さいたいけつ)や幹細胞ドナーに対しても適用され、5日より実施されている。

 この対策により国内での血液供給量が減少する事態に備え、カナダ血液サービスは旅行の予定がある人には出発前に献血するよう呼びかけている。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。