ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンドのタウンハウスに住むアンドレアス・カーグートさんは昨年12月に、自分が理解できない中国語で会議が行われるのは人権侵害にあたるとして、BC州人権裁判所に訴えを起こしていた。

 同市ウェリントン・コートの54世帯が住むタウンハウスの管理組合理事会では、2014年に中国語(マンダリン)を話せない理事を排斥して以来、理事会では英語が用いられなくなっていた。

 このような状況に対し、連邦議会議員のジョー・ペスキソリドさんと、州議会議員のリンダ・リードさんは、カーグートさんを支持する立場を公にした。

 州議会議長であるリードさんは動議を提出することができないが、タウンハウスなどの管理組合に関する法律、BC州ストラータ・プロパティ・アクトの中に言語に関する規定を盛り込むべきだとメディアに語っており、実際にどのような文言であるべきかを話し合っているという。

 また彼女は、23日に予定されている理事会では、カナダの公用語である英語が用いられるべきであり、カーグートさんの訴えを全面的に支持すると表明している。

 カーグートさんは、この力強い支援に感謝している。またリードさんは彼と会った際に、この問題はリッチモンドではもはや「起こるかもしれない問題」ではなく「いつ起こるかという問題」だと指摘している。

 また、今回の問題は中国語オンリーの看板問題と同じかというメディアの質問に対しリードさんは、根本的に違いはないと答えている。カナダ国内にいる以上、ビジネスは英語で行われるべきで、唯一の例外はフランス語だとリードさん。さらに、ここでビジネスをする人にはそれが何であれ、英語で不自由なく意思疎通できるようになることを期待していると付け加えていた。

 またペスキソリドさんは、自分が連邦議会議員であることから、州の法律についてのコメントは控えつつも「カナダに住む人の絆を強めるための言語を用いることが重要であり、ここリッチモンド市でも、それは英語にほかならない」とメディアの取材に答えていた。

 

 アルバータ州カルガリー郊外のボブスレー施設、カナダ・オリンピック・パークで6日未明、営業時間後にコースを滑走していた10代の青年らが途中のゲートに激突、2人が死亡、6人が重傷を負う事故が起こった。

 死亡したのは、双子の兄弟ジョーダン・カルドウェルさんとエバン・カルドウェルさん。

 カルドウェルさんらは営業終了後の施設に侵入し、持参したそりでボブスレーコースを滑走していた。同コースは1988年の冬季五輪大会のほか、いくつかのワールドカップ大会でも使用されている。

 このコースは、ボブスレー用コースと、リュージュ用コースが別々のスタート地点から始まり、途中で合流する形になっている。合流地点には鋼鉄製の仕切りゲートがあり、片方のコースをふさぐ形でもう一方のコースが一定の幅になるよう動かせる仕組みとなっている。カルドウェルさんらは、このゲートに激突した。

 カルドウェルさん兄弟はカルガリー市内の高校に通っていたが、成績は優秀でいくつかの奨学金も大学から受けていたという。またジョーダンさんは生徒会会長を務めるなど、学内での人気も高かった。

 コースを運営するウィン・スポーツは、長年にわたり施設を安全に運営してきたとコメントを発表。今回のように営業時間後に何者かが侵入して、コースを使用するといった事件はなかったとしている。

 その一方でソーシャルネットワークのウェブサイトには、営業時間後にコースを『変なもの』で滑走するのは、同パークの従業員にとって恒例行事のようなものだったと書き込む者も。それに呼応するかのように、自分はビールを何本か空けた後に、ひっくり返した公園ベンチでコースを滑走したと書き込む者や、今までにも負傷して入院沙汰になったケースがあると指摘する者が現れた。

 ちなみにカルドウェルさん兄弟も昨シーズン、同パークの『ヒル・アンバサダー』として働いていた。

 カルドウェル兄弟が通っていた学校の生徒は今回の事件に大きなショックを受けているが、カルガリー教育委員会は、彼らに対し必要なサポートを速やかに提供すると発表した。

 また、8人の青年が営業時間後の施設に忍び込むという決断をしたことを責めるのではなく、悲劇で終わるような間違った決断をすることは誰にでも、特に若いうちは起こるのだということを、今回の事故から学んでほしいと呼びかけていた。

 

 ジャスティン・トルドー首相は1月29日、4人が死亡、7人が負傷した銃撃事件のあったサスカチワン州北部の町ラ・ロチェを訪問した。

 人口約2600人、90パーセント以上が先住民族という小さな遠方の町で、国内では過去10年で最悪となる銃撃事件が起こったのは1週間前。トルドー首相は、死亡した被害者の家族や負傷者、コミュニティリーダーと面会した。

 「被害者の家族には、心からの弔意を表するとともに、負傷者の一日も早い快復を祈ります。またカナダ国民も、ラ・ロチェの人々と共に深く哀悼します」とトルドー首相は述べた。

 今回のこの事件により、遠方の隔離された先住民族が抱える問題にも焦点が当てられた。ラ・ロチェには、サスカチワン州ブラッド・ウォール州首相の他、ジョディー・ウィルソン‐レイボールド法務相、ジェーン・フィルポット保健相、自由党ラルフ・グッデイル議員、先住民族関係者も同行した。

 町の人々の中には、連邦政府、州政府からの支援が必要なことを分かってもらえたのはいい機会になったという声もあったことも報道を通して伝えられた。

 

 連邦政府は1月27日、暫定的ながらパイプライン建設に関する新環境基準を導入すると発表した。

 ジェームズ・カー天然資源産業相とキャサリン・マッケナ環境・気候変動相が記者会見し、現在建設計画が進んでいるキンダーモーガン社のトランス・マウンテン計画とトランスカナダ社のエナジー・イースト計画もその影響を受けることになると明らかにした。

 マッケナ環境相は、「連邦政府の環境調査過程が国民に信用されることが重要」と述べ、「国民の懸念、先住民族の権利、天然資源産業への支援を考慮しなければならない」と語った。国民への説明や先住民族との話し合いなど、これらに配慮した新基準が導入されることになる。

 環境調査の中には、温室効果ガス排出量も含まれる。調査対象はパイプラインだけではなく液化天然ガス(LNG)のターミナルも含まれる。

 すでに計画が進んでいるパイプライン建設について、全く一から対象となることはないが、トランス・マウンテンも、エネジー・イーストも、現在の計画よりも遅れる可能性はある。

 今回発表された新基準は、現在のカナダエネルギー委員会(NEB)とは切り離して行われる。NEBはパイプライン建設のプロジェクトについて条件を満たしているかなどの調査を行い承認する役割を担っている。

 しかし、前保守党政権時代には、環境に対する調査がほとんどおこなわれていなかったとの批判もあり、自由党は選挙期間中にNEBの改善を約束していた。マッケナ環境相は、NEBの機能を完全に見直すには数年の時間がかかると語った。

 今回の自由党政権の発表に、環境活動家などは一定の評価をしているが、野党保守党や天然資源産業、天然資源産業を主要産業とする州政府からは不満の声があがっている。原油価格が急落し、苦しい経済状況に直面している現状で、パイプライン建設の遅れは州経済や雇用に直結すると訴える。さらに、パイプラインが最も安全で確実に天然資源を運ぶ手段であることも強調している。

 カナダでは3件の巨大パイプライン建設計画があるが、そのうちの一つエンブリッジ社のノーザン・ゲートウェイ・パイプライン計画については、自由党政権は認可しない意向をすでに発表している。昨年はアメリカのバラク・オバマ大統領によってキーストーンXLパイプライン建設計画も中断を余儀なくされ、カナダの石油産業に大きな影響が出ている。

 天然資源産業がカナダ経済を支える主要産業の一つであることは間違いなく、環境問題とどのようにバランスを取っていくのか。自由党政権にとって難しい舵取りが迫られる。

 

 ブリティッシュ・コロンビア州2選挙区で2月2日、補欠選挙が行われ、両選挙区とも新民主党(NDP)候補が当選した。

 補欠選挙が行われたのは、コキットラム‐バーク・マウンテン選挙区とバンクーバー‐マウント・プリザント選挙区。両選挙区とも、前議員が昨年10月に行われた連邦選挙への立候補のため辞職し空席となっていたため、1月5日クリスティ・クラーク州首相が補欠選挙を発表した。

 バンクーバー‐マウント・プリザント選挙区は、NDPジェニー・クワン前州議員の選挙区で、1996年からNDPが常に優勢だった。今回もそれをそのまま引き継ぎ、マラニー・マーク候補が大差で当選した。マーク議員はBC州議会初の先住民族出身女性議員となる。

 一方コキットラム‐バーク・マウンテン選挙区は2009年に新設された時から、自由党ダグラス・ホーン前議員が議席を守ってきた。しかし今回は接戦の末、NDPジョディ・ウィケンズ候補に自由党候補者ジョアン・アイザックス候補が敗北した。

 自由党は補欠選挙に弱い。最近では2人しか当選していない。そのうちの一人がクラーク州首相。2013年の選挙で落選したクラーク州首相は、違う選挙区の議員に辞職をしてもらい、補欠選挙で自身が立候補して当選した。

 BC州では来年、州議会議員選挙が行われる。5回連続政権を狙う自由党政権にとって、今回の結果は懸念材料となった。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。