2019年4月4日 第14号

 この間、お友達とお茶をしていたら、「うちの旦那はカナダデーをお祝いしない」と言う発言に、みんなで驚きました。そしたら同席していた別のお友達も「うちの旦那もしないわよ」と。二人とも旦那さんはカナダ人なのに、どうしてお祝いしないのだろう?

 カナダデーとは、ご存知の方も多いと思いますが、カナダの建国記念日で、首都オタワでは朝から晩までパレードやイベントや花火など、人でごった返す派手な祝日です。カナダの首相や総督が家族を引き連れて参加するだけなく、イギリス王室からゲストが参加したり(ケイトとウィリアムも来ました!)、有名な歌手たちが参加したりと、カナダ人にとっては特別な日だと思っていたのですが…。

 「ケベック州では、7月1日は引越しの日。旦那も義両親たちも、フランス系カナダ人だから、建国記念日はお祝いしないのよ」と、同じカナダでもケベック州に限り、「引越しの日」が存在することを教えてくれました。でも、どうしてわざわざ、建国記念日に、州をあげて「引越しの日」なんかになってしまったのか。そこには深い歴史が関係しているようです。

 もともと、フランスの植民地であったケベック州は、17〜18世紀のフランスの法に基づき、最近まで、借家の場合、5月1日が「リース更新の日」と制定されていたようです。ただ、5月1日に引越となると、子供のいる家庭では、学校を変える必要性が出てきたり、お友達ともお別れするなど、引越しに伴う複雑な問題が増えます。それを理由に1973年にこの法は廃止され、リースの更新をする場合は学校の終業式が終わってからの7月1日となりました。ただ、法律で制定されているわけではないので、7月1日以外にも引っ越すことは可能ですが、現在も伝統として残っているようで、例えば、モントリオール(家賃が比較的安いので、住民の約63%が借家であるといわれている)では、モントリオール・ガゼット紙によると、昨年だけでも7月1日に13万人がモントリオール内で引越しすると想定されていました。

 そうなると、ケベック州のフランス系カナダ人には、建国記念日のような大切な日があるのかと思いますが、それが、6月24日のケベックの日(聖ヨハネの日)となります。ケベック州のみ、この日は、祝日となり、ケベック独自の歴史と文化を祝います。お祝いは、前日23日から始まり、街は、ケベック州旗で染まり、朝から晩までパレードやイベントが行われ、住民間ではBon Saint-Jean!(ボン サン・ジャン)と言葉を交わし合うようです。フランス系カナダ人としての誇りを感じる日のようです。

 そしてこのお祝いの1週間後に、カナダの建国記念日をお祝いするのは、少々複雑な気持ちになってしまうのも理解できます。カナダの建国記念日のお祝いの背後には、フランスの植民地であったケベック州が、イギリスとの戦争に負け、イギリスの植民地となり、その後カナダという国ができた歴史があるだけに、多くのフランス系カナダ人にとっては、あまりおめでたい日ではないのかもしれません。この日が「引越しの日」として、伝統を引き継ぐ理由には、フランス系カナダ人のプライドが関係しているような気がしました。

 


 ■ 小倉マコ プロフィール

カナダ在住ライター。新聞記者を始め、コミックエッセイ「姑は外国人」(角川書店)で原作も担当。フェイスブックで繋がれたら嬉しいです。エッセイ等のご意見もお気軽に!https://www.facebook.com/ogura.mako1

 

 

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