2017年6月15日 第25号

 ビクトリアの街を訪れたことのある人の多くは、この町の「清潔さ」にまず気付くようだ。かくいう私も、活気はあるもののきれいとは言い難いカナダ最大の都市トロントから3年前に国内移住した時、まず驚いたのは公共の場のちり芥の少なさだった。

 とはいえ小規模ながら、ここは州議事堂のあるBC 州の州都。場所によってはゴミも散乱しているし、当然(!?)ながら、ホームレスも居れば麻薬中毒患者がうろつく一角もある。

 夏を迎える季節になると、彼らに関する負のニュースが目立ち、市民に注意を促す記事がメディアを賑わす。それは学童たちが公園でエクササイズや各種のアクティビティを行い、また週末には音楽祭を始め野外での催し物が開催されることが多くなることで、公園で寝泊まりするホームレスの問題が再燃するからだ。彼らが捨てる使用済みの麻薬の注射器などが草むらで発見されるなども市民のいら立ちを募らせる。先日はある小学生の女の子が捨てられた針に刺された事件が報告された。

 都会であれば必ず聞かれるホームレス問題。一年程前までは、ダウンタウンにあるBC 州裁判所の裏手に広がる庭に、200 人近い人々が群がり住んで「テントシティ」を呼ばれるコミュニティを形成していた。

 騒音、麻薬、売春、不潔な生活からはびこる大ネズミの発生等など、悪の温床と化した場所から彼らを立ち退かすのに関係者たちは躍起になった。もちろん追い出すだけでは問題解決にならないことから、市は彼らの生活の立て直しのために、古い建物や学校を改築するなど2600 万ドルもの資金を投入し、一時的/半永久的な低賃金の住宅を提供した。

 だが、これで問題が一掃したかといえばNO である。何しろ当市は国内では一番温暖なため、寒冷地のエドモントンやカルガリーの某機関は、自分たちの街からホームレスを追い払うためバスの片道切符を渡して追い出すようなこともしている、などの噂も流布されるほどである。

 ではテントシティ跡はどうなったかといえば、写真の様に子供の歓声が響く遊園地へと大変身した。汚染された土を50 センチも剥ぎ取り、ダンプトラック75 台分の新たな土が運ばれ、何本ものあった大木が切り倒され、子供の身に危険がないように視界が利くことに配慮された。〆ての費用は35 万ドル。

 まさにイタチごっこの感があり、ホームレス問題は今までも、そしてこれからも決して消滅することはない成熟社会が背負い続ける永遠の課題であると言えよう。

 

 

 


サンダース宮松敬子氏 プロフィール
フリーランス・ジャーナリスト。カナダ在住40余年。3年前に「芸術文化の中心」である大都会トロントから「文化は自然」のビクトリアに移住。相違に驚いたもののやはり「住めば都」。海からのオゾンを吸いながら、変わらずに物書き業にいそしんでいる。*「V島 見たり聴いたり」は月1回の連載です。(編集部)

 

 

今週の主な紙面
6月15日号 第24号

バンクーバー新報は毎週木曜日発行です。

あなたにぴったりの学校がきっと見つかる! School Information…V-5
認知症と二人三脚…V-3
深田晃司監督作品『淵に立つ』VIFFで特別アンコール上映…V-12
オタワ便り…V-22
老婆のひとりごと…V-23
CLASSIFIED…V-20~26
求人情報…V-23

詳しくは6月22日号 第25号
バンクーバー新報をご覧下さい。

配布リストはコチラ