2019年5月30日 第22号

 それは和の空間へ繋がる門だった。凛とした空気。清々しい静寂。 その日、私はカラフルなキツラノの街を越え深い森に入って行った。その奥に白壁に瓦の塀が目に入る。静かに佇む瀟洒な門をくぐると、濃い緑が明るい輝くような色に変わり、潤いのある苔の香りに包まれた。

 新渡戸稲造メモリアル日本庭園。茶道裏千家 千宗室十五世家元により修復、命名された『一望庵』で5月17日に開かれたお香の会に参加するため、日本から着物を持参し朝早くから用意をした。居住まいを正し一望庵に向かう。庭の待合で、席をご一緒する皆様にお会いして気持ちが華やぐ。やはり和装は美しい。淡い水色、萌黄色、柔らかな桃色、色とりどりの着物が庭園の鮮やかな緑とヒモウセンの朱に映える。 お茶室に案内され、お香の楽しみ方を習う。大切なお道具を傷つけず、上手に香りを楽しむ作法。そして『お先に』と言う周りの人への気遣い。 お香やお茶会。勿論それは香を嗜みお茶を愉しむ場であるが、それだけではない。作法を守り、ともにその場に居る皆様へ気遣うことで、我が身を律し人への想い遣りを学ぶ時間でもある。そんな精神修養も魅力の一つだ。

 今回教えて下さるのは、日本から来た香道泉山御流の直門師範である松尾瑶香先生。床の間に飾られたお軸の話から日本の方位学まで、時に冗談も交え座が盛り上がる。そんな楽しい雰囲気の中、その日は四時香が行われた。まず四つの香りを聞いて、その後一つだけ選ばれた香りを当てるのだ。お香は嗅ぐのではなく、香りを『聞く』。耳を傾けるように香りに心を傾ける。答えを当てようと真剣な眼差しでお香を聞く客人たち。そんな小さな緊張感も心地良い。 その後、カナダでお茶の先生をしているまい子ベアさんが、手作りの練り切り“あやめ”で客を持て成し、一服点てて下さった。生の柚子がちりばめられ風味豊かな和菓子に舌鼓をうつことこの上ない。お茶はキツラノO5 Tea Bar お勧めの「キリシマ」。お抹茶の香りと喉越しに身体が芯から癒された。 お香、お茶の空間は精神の世界。雑然とした日常を忘れ、松尾先生のお言葉に、いにしえの世界に魂が飛び瞑想に浸る。 日本から7500キロ余り。バンクーバーに生き続ける和の心に触れることが出来た貴重な経験だった。

(文 読売テレビ 植村なおみ)

 

著者の植村なおみさんが席中でお香を聞く

 

 


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