オンラインゲームがきっかけで5年ほど前に知り合い、昨年結婚したブリティッシュ・コロンビア州のカップルが、夫のがん治療のためにアメリカの施設に赴くことを決めた。

 当時アメリカ・テキサス州オースチンに住んでいたミッシェルさんが、将来の夫ブランドン・デュリエウさんをはじめて知ったのは、世界中で人気のオンラインゲーム『ワールド・オブ・ウォークラフト』の中でのことだった。その後3年間、彼らはオンライン上で親交を深めていったあと、ミッシェルさんは意を決してビクトリアに住むブランドンさんに会いに行くことにした。1週間の滞在だったが、二人は一目で恋に落ち、ミッシェルさんはビクトリア大学海洋生物学科への入学手続きを進めた。彼女は小さい頃から海洋生物学者になることを夢見ていた。

 一緒に暮らし始め全てが順風満帆に見えた二人に、昨夏変化が訪れた。造園技師として働いていたブランドンさんが、脱力感を訴えるようになり、また理由もなくあざができることが増えた。

 そんなある日、彼らが見ていた医療ドラマの中で自身と同じ症状を呈している患者が白血病と診断されているのを見たブランドンさんは、念のためホームドクターを訪れることにした。昨年8月のことだった。

 血液検査の結果すぐに総合病院に行くよう促され、出された所見は急性骨髄性白血病(AML)、進行性の強いがんだった。

 バンクーバー総合病院に入院したブランドンさんには2セットの化学療法が施された。その間に彼はミッシェルさんにプロポーズし、二人は結婚式の準備を進めることにした。

 こうして昨年10月18日、家族と親しい友人に囲まれて結婚式をとり行った二人だが、化学療法が全く効いていなかったことを医師から告げられたのは、その前日だった。

 続いて行われた新薬の治験では、当初快復の兆しがみられたものの再びがんが進行するようになった。ブランドンさんの肝臓に負担をかけることから、新薬の投与は打ち切られ、今年1月には医師から打てる手は全て打ったと告げられた。

 それでも常に前向きに、そしていい面を見るようにしている二人は、カナダでは試すことのできない治療薬のためアメリカ・テキサス州ヒューストンにあるがん専門の治療施設、MDアンダーソンがんセンターで治療を続けることを決めた。

 しかしカナダ国外、それも認可されていない新薬の治療にはBC州の健康保険もきかず、最初の診断だけでも3万7000米ドルかかる。その先の治療には何十万ドルも必要となるだろう。最近ミッシェルさんはオンライン上の募金サイトを立ち上げ寄付を募り始めた。

 家族や友人からさっそく申し出があり、ウェブサイト開設から1週間で6万ドル以上が集まった。ミシェルさんは人々の思いやりに感謝しても感謝しきれないと、取材に語っている。

 

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