長年、言い尽くせないほどの痛みにさいなまれ疲れ果てたと、安楽死を希望していたアルバータ州の女性が先週初め、医師の立会いのもとこの世に別れを告げた。

 彼女の代理人である弁護士の発表によると、イニシャルがE・Fとだけ公表されている、この58歳の女性は先月、アルバータ州の最高裁判所に該当するクィーンズ・ベンチ裁判所から安楽死の許可を得ていた。

 この女性は精神障害の一種、転換性障害が重度に進行しており、精神的理由から体の各所の筋肉がけいれんし、激痛や偏頭痛が絶えなかった。また、まぶたの筋肉がけいれんし目を開けることができなくなり、実質的に失明状態であったほか、嚥下(えんげ)障害で何も食べられない日が2日間続くこともあったという。歩行機能も失い車椅子の生活となり、有効な治療法もなく裁判所には「自分のクオリティ・オブ・ライフは失われた」と訴えていた。

 なお連邦政府はクィーンズ・ベンチ裁判所の判決に対し、安楽死は近い将来の自然死が十分予見できる身体的な不治の病の場合にだけ認められるべきで、精神障害が原因となっている今回のようなケースは除外すべきだと控訴していたが、アルバータ州控訴裁判所はクィーンズ・ベンチ裁判所の判決を支持し、控訴を棄却していた。

 代理人弁護士によると、E・Fさんはバンクーバーの病院で、家族と友人らが見守る中、安らかに息を引き取ったという。

 

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 アルバータ州を襲った山火事から約1カ月、フォートマクマレーでは6月1日から鎮火した町に人々が帰宅を始めた。

 5月30日、同州レイチェル・ノットリー州首相は避難者の帰宅が可能になったことを発表。「政府としては住民にとってベストな決定をするよう心掛けている。専門家の意見を聞きながら安全を確認し発表を行っている」と記者会見で語った。

 今回は帰宅の第1段階で4地区が対象。約1万5000人が帰宅するとみられている。ただ、消失したり倒壊したりしていないが、帰宅できない家屋やアパートが合わせて約500軒あることも発表。同首相は「残念ながら一部では家屋が大丈夫でも帰宅できない地区があることも告げなくてはならない」と語り、その地区の灰や土は人体に有害な物質を含んでいるためと説明した。現段階ではこれらの家屋には9月までは帰宅できないが、今後の洗浄作業次第ではそれよりも早く帰宅できる可能性もあるとしている。

 ノッテリー州首相は多くの住民が町の変わり果てた姿にショックを受けるかもしれないと気遣った。アルバータ・ヘルスサービスが住民の精神的支援を行う。

 5月3日に発生した山火事は現在も完全に収まっておらず、消火活動は続いている。5月29日には南アフリカから消防士約300人が消火活動支援のためエドモントンに到着した。現在同州ではブリティッシュ・コロンビア州をはじめ、国内各地やアメリカなど海外からの応援も合わせ約2300人の消防士が消火活動に当たっている。

 今後は消火活動に加え、雨の予報もあり、鎮火に向かうとみられている。

 

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 ブリティッシュ・コロンビア州クリスティ・クラーク州首相がアジアとの貿易振興目的で行っているアジアツアーに、今回は不動産業者2社が同行していることが分かり、疑問の声が挙がっている。

 メディアで報道されたのは5月28日。このアジア貿易使節団には約60社が同行しているが、その中に不動産業者2社が含まれていた。

 現在バンクーバーでは海外投資家による不動産高騰の可能性が指摘され、それについての調査も行われている中、海外での販売促進に不動産業者を同行させるのは適切なのかというもの。

 不動産業者側はあくまでも商業用物件の販売促進が目的で、個人用住宅物件のためではないと説明している。

 この報道を受け、クラーク州首相は5月30日のツイッターで、今回の目的はBC州経済と雇用促進であり、BC州の個人用不動産の販売促進は含まれていないと説明した。

 クラーク州首相一行は、5月23日にバンクーバーを出発、24日韓国入り、26日フィリピンに移動、28日に東京に到着し、30日には東京を発ち、帰国している。今回は中国への訪問は含まれていない。

 東京では、主にテクノロジー関連と液化天然ガス(LNG)のプロモーションに力を入れ、関係企業やイベントに参加した。

 

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 保守党は5月28日、バンクーバーで開催した党大会で同性婚を容認する方針を決めた。党大会に参加した党員による投票の結果、容認賛成が1036票、反対462票と賛成が反対を圧倒した。

 ミッシェル・レンペル議員は、「ようやく保守党が少しカナダらしくなったと思う」と容認決定を喜んだ。元閣僚ら、議員もおおむね容認を賛成している。マクシム・ベルニエ議員は「(個人の)自由と敬意を尊重したもの」と語り、議論の末、カナダらしい決定になってよかったと容認決定を称賛した。

 一方、男女1対1の結婚制度を支持する反対派は、同性婚容認で保守党としての党のアイデンティティーがどこにいくのかという疑問を投げていた。ただ個人的にはそうした考えを持っていても、党の方針として連邦レベルで同性婚反対を貫くことは難しいとの声が多数を占めた。

 5月26日から28日に開催された党大会の初日には、スティーブン・ハーパー前首相が党員の前で演説した。ハーパー前首相が公の場で演説するのは昨年10月19日に保守党が政権交代をして以降初めて。ハーパー前首相自身は選挙で当選したものの、党は自由党に大敗。その責任を取って党首を辞任したものの、議員としては活動していた。ただインタビューなど公の場ではこれまで一度も言葉を発したことはなかった。

 今回の演説の約30分間の内容は自身で考えたという。ハーパー前首相は秋の国会開会前には議員を辞職するだろうと報道されている。

 保守党はこれまで党設立時からの12年間、党首はハーパー前首相ひとり。2006年にはそれまでの自由党から政権を奪取し、10年間首相を務めた。ハーパー前首相が党首を辞任して以降は、ローナ・アンブローズ暫定党首が党を率いているが、来年には正式な党首を決定する。

 今回の党大会でも、その有力候補が出馬に意欲を見せるなど、舞台裏での駆け引きも見られた。現在、立候補を表明しているのは、ケリー・リーチ前労働相、マクシム・ベルニエ前中小企業担当相、マイケル・チョン議員。その他、ジェイソン・ケニー前国防相、すでに議員を辞職しているピーター・マッケイ前法務相が意欲を見せている他、リサ・レイト前運輸相の名前も挙がっている。

 今党大会には、CBCの番組ドラゴンズ・デンなどに出演して知られているビジネスマンのケビン・オレリー氏も参加。数日前に党員になったばかりという同氏は、CBCのインタビューで経済対策など政策についての持論を語り、出馬について意欲を見せた。

 保守党党首を決定する投票は2017年5月27日に行われる。

 

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 ブリティッシュ・コロンビア州で計画されている液化天然ガス(LNG)開発事業について、国内外の研究者が承認しないよう自由党政権に働きかけていることが5月30日分かった。

 カナダをはじめ、アメリカ、オーストラリア、イギリスを含む90人の科学者が連名で自由党政権に送った書簡は、パシフィック・ノースウエストLNG計画について温室効果ガス排出量が増加するとの意見をまとめたもので、一般にも公開された。

 それによると、事業に関係する全ての排出量を合わせると、同プロジェクトによりBC州の温室効果ガス排出量は最大で22・5パーセント増加し、国内で最大の排出量施設の一つとなると報告している。

 またLNGのアジアへの輸出は、地球規模でみると、アジア地域での石炭発電の減少につながり環境問題に一役買うとの推進派の主張に対しても、LNGが石炭発電に取って代わるという保証はなく、石炭もLNGも両方利用するという可能性があるとして反論している。さらに、LNGを利用することによって、再生可能エネルギーの生産が減少する可能性があるとも指摘している。

 BC州政府はLNG開発事業に力を入れており、クリスティ・クラーク州首相は2013年の選挙ではLNGを同州経済の根幹に置くと公言、10万人の雇用を生み出し、州の借金を完済できる可能性があると主張していた。

 BC州で計画されている多くのLNG事業開発計画でも、マレーシアの国営企業ペトロナス社が率いるパシフィック・ノースウエストLNG計画は最大級。日本、中国、インド、ブルネイも参加している。

 キャサリン・マッケナ環境相はことし3月、カナダ環境アセスメント局が認可すれば閣僚会議にかけ承認するか決定すると語っている。今回の書簡は、マッケナ環境相をはじめ、ジャスティン・トルドー首相、ジェームズ・カー天然資源相、ジョディー・ウィルソン‐レイボールド法務相に宛て送られている。

 書簡には、LNG計画を実行することによりBC州の温室効果ガス削減目標が達成できないことになり、カナダの国際的な環境問題への取り組みに傷をつけることになるとも訴えている。

 昨年パリで開催された環境会議でカナダは温室効果ガス削減に取り組むことを約束しており、計画を却下することで今後何十年にもわたる排出量増加を食い止めなければならないと計画中止を訴えている。

 ことし6月下旬までには決定するとマッケナ環境相はすでに表明している。

 

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これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。