ジャスティン・トルドー首相は10州3準州首相と、環境問題への連邦、州政府合わせての取り組みで、炭素へなんらかの形で課金する制度を導入することで合意した。ただ、詳細は6カ月後に持ち越された。

 3月3日、バンクーバー市で会議を行ったトルドー首相と州首相は、「バンクーバー宣言」を発表。炭素への課金方法については各州の事情を考慮し、かなり広義に導入した。

 トルドー首相は「各州によって方法は違っていても、炭素への課金が(環境問題への)解決策の一つであるということに変わりはないし、全州がその目標に向かって努力することで合意した」と記者会見で発表した。

 今回の会議で連邦政府は全国一律炭素課金の最低基準合意を目指していたが、各州の事情による強い反対があり、それは実現しなかった。6カ月間の猶予を持たせ、次回10月の会議で全国的な気候変動対策計画の詳細を決定するという。

 炭素への課金については、炭素税もしくはキャップ&トレード制度で、ブリティッシュ・コロンビア州、アルバータ州、マニトバ州、オンタリオ州、ケベック州が導入している。しかし、サスカチワン州ブラッド・ウォール州首相やノバスコシア州スティーブン・マックニール州首相はこれを全国一律に導入することに反対、各州のやり方で炭素排出量削減を目指すことを主張している。

 今回の合意ではその主張が認められ、現在サスカチワンで実施されている火力発電所でのCCS(二酸化炭素の回収と貯蓄)も広義の意味での炭素への課金方法とみなされることになった。

 気候変動への対策として、クリーンテクノロジー・イノベーション、炭素課金方法、温室効果ガス排出削減、気候変動と厳しい気候への順応という4つの項目に焦点を当てることで合意。なんとか全州の主張を取り入れ合意に達したことで次の段階へ進めていくことが重要との見方をどの州首相も示した。

 カナダは昨年12月にパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、2030年までに2005年比で30パーセントの温室効果ガス排出削減を目標とした。しかし、これは昨年5月に前保守党政権が発表した目標設定で、自由党政権はこれを超える独自目標を立てると公約。しかし、11月の新政権発足からパリ会議まで時間がなかったことから、会議終了後90日以内に州首相との会議を開き、話し合うことを約束していた。その公約は果たしたが、もう一つの公約だった最低炭素価格設定は今回は実現しなかった。

 

 ケベック州フィリペ・クイラード州首相は2日、バンクーバーでオンタリオ州キャサリン・ウィン州首相との合同記者会見に臨み、ケベック州でのエナジーイースト・パイプライン建設計画について語った。

 ケベック州政府は、同パイプライン建設を計画しているトランスカナダ社に対して訴訟を起こしている。パイプラインは、アルバータ州のオイルサンドを東海岸のニューブランスウィック州まで運び、一部は精製所へ、残りはそこから海外市場へと運ばれる。そのパイプラインはすでに存在しているパイプラインを使用する計画だが、ケベック州を通る部分は新設される。

 これに対してケベック州政府は、人口密集地や多くの河川を通る計画のパイプライン建設に簡単には賛成できない、同社はケベック州の環境条件を満たす必要があると主張している。

 アルバータ州のオイルサンドをブリティッシュ・コロンビア州北西部海岸からアジア市場へと運ぶノーザンゲート・パイプライン計画については、自由党は選挙前から反対の立場を示していた。

 しかし、オイルサンドを運ぶパイプライン建設計画については、自由党政権は基本的には必要であるとの立場をとっている。この日バンクーバーで記者会見を行ったジャスティン・トルドー首相は、パイプラインも再生可能エネルギーもカナダ経済には両方必要との立場を示した。

 総費用157億ドルのエナジーイースト計画は、連邦政府に決定権があり、連邦政府とカナダエネルギー委員会が承認すれば、トランスカナダ社は2018年には着工、2020年には完成し、一日110万バレルを運ぶことになる。

 3日に世論調査会社アンガスリードが発表した結果によると、同計画には国民の64パーセントが賛成を示している。アルバータ、サスカチワン州では87パーセントと高く、ケベック州では48パーセントとなっている。

 8日にはケベック州でトランスカナダ社の説明会前に反対派が押し寄せ、説明会を妨害しようという行為に出た。クイラード州首相は、少なくとも説明を聞く必要はあると賛否両州民に冷静になるよう促している。

 

 連邦政府ジョン・マッカラム移民・難民・市民権相は8日、オンタリオ州ブランプトンで記者会見を行い、ことしの移民受け入れ数を大幅に増加することを発表した。

 同移民相は2016年に28万から30万5千人の永住者を受け入れるとし、前年の保守党政権の計画2015年末までに26万から28万5千人受け入れから大幅増となる。

 内訳は、約15万から16万人がケアギバー、州政府推薦、技能労働者などの経済関連移民で、7万5千から8万2千人が配偶者、子供、親、祖父母など家族移民、5万1千から5万7千人が難民、人道的理由での受け入れとしている。ここには1万8千人の民間支援難民も含まれる。

 シリア難民に関してはことし2月末までに政府・民間支援合わせて2万5千人を達成したことをカナダ政府はすでに発表。今年中にさらに政府支援1万人を受け入れるとしている。

 マッカラム移民相は、「移民政策が大きくシフトしたことを示したものとなった。家族の合流、経済成長、そして難民や保護を必要としている人々の受け入れるカナダの人道的な支援へとシフトした」と語った。

 さらに保守党政権時代に滞っていた家族移民申請者の審査を迅速にし、未処理・保留申請を減らしていくとも語った。

 

 ファイナンシャル・ポスト電子版は7日、マレーシア国営企業ペトロナス社が今月31日までに連邦政府の承認がなければ、現在ブリティッシュ・コロンビア州北西部で計画中の液化天然ガス(LNG)開発から撤退すると連邦政府に通告したという関係者の証言を伝えた。

 自由党新政権は環境対策強化を進行中で、それがペトロナス社が率いるパシフィック・ノースウエストLNG計画にも影響するという。これまでも計画発表からここまでに、度々の遅延と後退に悩まされてきた。先住民族や環境活動家の反対はもちろん、BC州政府の遅い対応、アメリカのLNG輸出による競争激化、原油価格急落に同調する価格の下落、さらに、保守党政権時代ですら高水準だった環境対策、それでも同計画だけが現在最終投資決定し、計画を前進させている。記事では、ペトロナス社はこれ以上の変更は許容できないと語っていると伝えている。

 LNGを取り囲む状況はBC州で計画が持ち上がった時から大きく変化している。最も影響を及ぼしているのが原油価格急落による価格の暴落で、ことしに入りアルタガスのダグラス・チャンネルLNGはすでに開発停止、ロイヤルダッチシェルは最終投資決定をことし末まで引き延ばした。これでパシフィック・ノースウエストが撤退すればBC州にとって大きな打撃となる。

 この記事についてBC州政府はそういう話はないと否定。これまで通り計画は進行していると記事内容は真実でないと語った。8日クリスティ・クラーク州首相もペトロナス社はそういうことは言っていないと否定し、記事が不正確なのではと語っている。

 

 ブルームバーグ電子版は7日、カナダ・モーゲージ&ハウジング・コープ(CMHC)が国内の3都市で海外資本による不動産売買の調査を強化することを計画していると伝えた。

 CMHCは現在、海外投資家によるカナダ国内での住宅市場への影響を正確に示すデータがないことを認め、調査の強化方法を話し合っていると語ったとも伝えている。

 バンクーバー、トロント、モントリオールが調査の対象で、特にバンクーバーとトロントは近年急激な不動産の高騰により一般市民が購入できないほどの価格まで達している。不動産価格の急騰についてはブリティッシュ・コロンビア州政府もようやく重い腰をあげ、来年度予算案の最優先事項として取り上げた。

 これらの都市での不動産売買には、マネーロンダリングの可能性もあるとして警察や税務署とも連絡を取っていることも明らかにした。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。