虚偽の市民権申請を1000人分以上も行ってきたとして摘発された事件を調査してきたカナダ会計検査院は3日、連邦政府は市民権詐欺を効果的に摘発、予防できていないとする報告書を提出した。

 この事件は、ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンドで移民コンサルタント事務所を無許可で経営していたシャン・『サニー』・ワン受刑者が、中国からのクライアント1200人あまりから、虚偽の申請で市民権を取得する報酬として合計約1000万ドルを得てきたとされるもの。

 裁判は昨年10月、ワン受刑者に7年の実刑判決と、罰金90万ドルを1年以内に支払うよう命じている。捜査の過程で押収されたクライアントのパスポートには、移民件取得に必要なカナダ滞在日数を満たすために、偽造出入国スタンプが押されているなどしていた。

 また報告書によると、ワン受刑者が作成して同時期に提出された異なる申請書に、同じ住所が使い回しされていたケースが50件以上見つかっており、こうした明らかな虚偽申請すら審査の段階でチェックされていないと指摘している。このうちの7件では、市民権が発行されていたという。

 さらに報告書は、重大罪を犯した人物の移民権や市民権の処置について、RCMPと移民局の間で情報共有が適切に行われていないことも指摘していた。

 この報告書を受け、移民・難民・市民権大臣ジョン・マッカラム氏は、この問題を解決するよう努力するとコメントしている。

 

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 ブリティッシュ・コロンビア州クリスティ・クラーク州首相は4日、同州の最低賃金を2回に渡り引き上げると発表した。

 今年9月15日に現在の時給10・45ドルから40セント引き上げ10・85ドルに、さらに来年9月15日にも40セント引き上げ、11・25ドルとする。

 通常最低賃金引き上げ率は、インフレ率を基に決められるが、今回はBC州経済を考慮しインフレ率よりも高い水準で引き上げられる。インフレ率を基にすれば、今年の引き上げ額は10セント程度となるのが妥当。

 クラーク州首相は「BC州は国内でも最も経済が好調で、州民は最低賃金でもその恩恵を受ける必要がある」と語った。

 今年に入り、ニューブランズウィック州で最低賃金が時給10・65ドルに引き上げられたため、現在BC州の最低賃金は国内最低となっている。

 今回のBC州政府の発表に、BC労働連合は「BC自由党はまだフルタイムで働きながら貧困の域から出られない人々が必要とするところまで(最低賃金を引き上げるに)至っていない」と述べ、クラーク州首相と州政府は正当なことを行う機会を見送ったと語った。BC労働連合は最低賃金15ドルを主張している。

 一方でBC商工会議所は、最低賃金が引き上げられることで中小企業に悪影響が出るのではとの懸念を示している。今回の州政府の引き上げ率はBC商工会の予想を上回っていたという。最低賃金引き上げに反対というわけではないが、中小企業のビジネスが許容できる範囲が好ましいと語った。

 カナダ自営業連合も雇用主への負担が大きくなる、と悪影響を主張した。

 州政府は中小企業への影響を考慮し、中小企業への法人税を引き下げている。

 

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 ビールの製造に欠かせないホップの需要が高まっていることを受け、ブリティッシュ・コロンビア州アボッツフォードでは、ホップ栽培が盛んになってきている。

 BC州では何十年か前にもホップの栽培が行われたことがある。しかしその時は、地ビール産業が成熟していなかったため、すぐに下火になってしまった。

 しかし現在は地元ビール会社からの需要や世界的な供給不足などから、BCホップ・カンパニーのような地元のホップ栽培企業が急成長している。またビールに使用するためにはホップを加工する必要があるため、その工場の建設も進んでいる。

 同社によると、ヨーロッパでは昨年の収穫量が20パーセントも減少する一方、需要の急増によってホップの供給不足が顕著になってきたという。

 BC州サレーでビール醸造を行っているセントラル・シティ・ブリューイングは、地元産ホップを積極的に使用している醸造所のひとつだが、最近はホップのアロマが利いたビールが好まれていると、取材に答えている。

 この醸造所は、5〜10ヘクタールの農地から収穫されるホップを買い付ける契約を結ぶところだが、それでも年間に使用されるホップの量の25パーセントをまかなえるほどでしかない。今後、ブドウ栽培が盛んなBC州内陸部のオカナガン地方南部でもホップの作付けが始まらないかと、同醸造所のブルーマスター、ゲーリー・ローヒンさんは期待している。

 

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 大規模パイプライン建設を手掛けるトランスカナダ社の最高経営責任者ラス・ガーリング氏は4月29日、エナジー・イースト・パイプライン建設の遅延はカナダ経済に大きな損失を与えているとの認識を示した。同社第1四半期報告後の記者会見で語った。

 同社が手掛けるキーストーンXLパイプライン建設が昨年11月オバマ大統領によって却下され、カナダ国内では現在エナジー・イースト・パイプライン建設計画も、自由党政権になり環境調査基準が厳しくなったため遅れている。カナダエネルギー委員会(NEB)は同パイプライン建設の審査予定を、2018年3月までに終了すると今週発表した。

 エナジー・イースト・パイプライン建設計画は、アルバータ州からカナダ東海岸までパイプラインを建設し、そこから海外市場へと運ぶ。完成すれば、1日110万バレルのオイルサンドを輸送できる。ガーリング氏はパイプライン建設により初めて市場へのアクセスが可能になる。そうすることによりカナダの天然資源が競争力を増す。パイプライン建設の遅れはカナダ経済に直接的に大きな影響を及ぼすと語った。

 パイプライン建設については、4月24日から3日間、ジャスティン・トルドー首相が財務相などと共に、アルバータ州カナナスキスで同州レイチェル・ノッテリー州首相と会談した。

 ノッテリー州首相は、パイプライン建設は雇用創出や経済回復というだけでなく、環境にとっても、人々にとっても、トラックや列車で運ぶよりも安全で、温室効果ガスの排出がより少ない原油の輸送方法だと主張した。

 アルバータ州経済は2014年後半からの原油価格の急落で大きな影響を受けている。昨年、進歩保守党政権からの政権交代を実現した新民主党(NDP)政権は今年度赤字予算を計上した。アルバータ州は現在アメリカのみとなっているオイルサンド輸出先を、新しいパイプラインを建設することにより、アジアやヨーロッパ各国へと市場を拡大する必要がある。

 トルドー首相もオイルサンドの輸出がカナダ経済にとって重要との認識はすでに示しているが、パイプライン建設についてはより厳しい環境基準による審査が必要とし、パイプライン建設が保守党政権時代よりもさらに遅れている。

 さらにパイプライン建設についての自由党政権の立場として、エンブリッジ社のノーザン・ゲートウェイ・パイプライン建設計画については、トルドー首相は選挙戦時から計画中止を公約として掲げており、政権奪取後オイルサンドの市場拡大は必要との認識を示しても、ノーザン・ゲートウェイ計画は承認しないことを明確にしている。ノーザン・ゲートウェイはアルバータ州からブリティッシュ・コロンビア州北西部キティマットまでパイプラインを新たに建設する計画で、完成すれば一日当たり50万バレルのオイルサンドを運ぶ。そこからタンカーに移し、アジア市場へ輸出する。この計画は保守党政権時代にすでに200以上の条件付きながら承認されている。しかし、トルドー首相はアルバータ州での会談後の記者会見で、ノーザン・ゲートウェイ計画は、キティマットからプリンス・ルパートへルート変更しても建設の可能性はないと断言した。パイプライン建設が計画されている周辺地域は、BC州でも貴重な生態系が残る場所として知られ、環境活動家や先住民族などが建設計画に反対している。トルドー首相はこの場所にパイプラインが通ることはないと改めて強調した。

 パイプライン建設計画については、西ルートのノーザン・ゲートウェイ計画とアメリカへのキーストーン計画が中断しているため、今後は東ルートのエナジー・イースト計画への承認と、アルバータからBC州バーナビーへのキンダー・モーガン社によるトランス・マウンテン・パイプライン拡張計画に注目が集まる。トランス・マウンテン計画も、メトロバンクーバーの中心を通るため、周辺市町の反対や先住民族、環境活動家、さらには周辺住民の反対も根強い。連邦政府が今後どのような対応を取るのか注目されている。

 

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 カナダ銀行は4月29日、紙幣に印刷する女性肖像画の候補を12人に絞ったと発表した。これまでカナダの歴史で女性が紙幣の肖像画として採用されたことはなく、今回が初めてとなる。

 今年3月の国際女性デーにジャスティン・トルドー首相が女性肖像画採用を発表して以来、諮問委員会には4月15日の締め切りまでに、2万6000件の意見が寄せられ、約460人の女性が候補として名前が挙がった。

 肖像画として採用される条件は、カナダ生まれ、もしくはカナダ市民権取得者で、素晴らしい功績を残し、1991年4月15日以前に亡くなっていること。

 今回はこの条件を満たした公募から12人に候補が絞られた。候補者は以下の通り。アルファベット順。

ピテオラック・アシューナ(1904‐1983)  イヌイット芸術家
エミリー・カー(1871‐1945) 著名な芸術家、作家
テレセ・カスグレイン(1896‐1981) 活動家、政治家。 ケベックで女性参政権運動を起こし、カナダ初の女性党首となった
ヴィオラ・デスモンド(1914‐1965) ノバスコシア州の黒人ビジネスウーマン。同州での黒人差別と戦ったことで知られる
ロッタ・ヒッチマノヴァ(1909‐1990) 人道活動家。カナダユニテリアンサービス委員会創設に関わった
ポーリン・ジョンソン(1861‐1913) 詩人、作家
エリザベス・マックギル(1905 ‐1980) 世界初の女性航空機デザイナー
ネリー・マックラング(1873‐1951) 政治活動家、教師、政治家。女性参政権運動リーダー
ルーシー・モード・モンゴメリー(1874‐1942) 作家。「赤毛のアン」の作者
ファニー・ローゼンフィールド(1905 - 1969) 1928年夏季オリンピック陸上競技ゴールドメダリスト
ガブリエル・ロイ(1909‐1983) フランス系カナダ人作家
イドラ・セイント‐ジョーン(1880‐1945) ケベックのジャーナリスト

 今後はこの12人について世論調査を行い、調査をもとに専門家などの意見も交え、諮問委員会が3人から5人に絞り込み、ビル・モルノー財務相に提出。最終的には財務相がカナダ銀行法に基づき決定する。

 

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これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。