大規模パイプライン建設を手掛けるトランスカナダ社の最高経営責任者ラス・ガーリング氏は4月29日、エナジー・イースト・パイプライン建設の遅延はカナダ経済に大きな損失を与えているとの認識を示した。同社第1四半期報告後の記者会見で語った。

 同社が手掛けるキーストーンXLパイプライン建設が昨年11月オバマ大統領によって却下され、カナダ国内では現在エナジー・イースト・パイプライン建設計画も、自由党政権になり環境調査基準が厳しくなったため遅れている。カナダエネルギー委員会(NEB)は同パイプライン建設の審査予定を、2018年3月までに終了すると今週発表した。

 エナジー・イースト・パイプライン建設計画は、アルバータ州からカナダ東海岸までパイプラインを建設し、そこから海外市場へと運ぶ。完成すれば、1日110万バレルのオイルサンドを輸送できる。ガーリング氏はパイプライン建設により初めて市場へのアクセスが可能になる。そうすることによりカナダの天然資源が競争力を増す。パイプライン建設の遅れはカナダ経済に直接的に大きな影響を及ぼすと語った。

 パイプライン建設については、4月24日から3日間、ジャスティン・トルドー首相が財務相などと共に、アルバータ州カナナスキスで同州レイチェル・ノッテリー州首相と会談した。

 ノッテリー州首相は、パイプライン建設は雇用創出や経済回復というだけでなく、環境にとっても、人々にとっても、トラックや列車で運ぶよりも安全で、温室効果ガスの排出がより少ない原油の輸送方法だと主張した。

 アルバータ州経済は2014年後半からの原油価格の急落で大きな影響を受けている。昨年、進歩保守党政権からの政権交代を実現した新民主党(NDP)政権は今年度赤字予算を計上した。アルバータ州は現在アメリカのみとなっているオイルサンド輸出先を、新しいパイプラインを建設することにより、アジアやヨーロッパ各国へと市場を拡大する必要がある。

 トルドー首相もオイルサンドの輸出がカナダ経済にとって重要との認識はすでに示しているが、パイプライン建設についてはより厳しい環境基準による審査が必要とし、パイプライン建設が保守党政権時代よりもさらに遅れている。

 さらにパイプライン建設についての自由党政権の立場として、エンブリッジ社のノーザン・ゲートウェイ・パイプライン建設計画については、トルドー首相は選挙戦時から計画中止を公約として掲げており、政権奪取後オイルサンドの市場拡大は必要との認識を示しても、ノーザン・ゲートウェイ計画は承認しないことを明確にしている。ノーザン・ゲートウェイはアルバータ州からブリティッシュ・コロンビア州北西部キティマットまでパイプラインを新たに建設する計画で、完成すれば一日当たり50万バレルのオイルサンドを運ぶ。そこからタンカーに移し、アジア市場へ輸出する。この計画は保守党政権時代にすでに200以上の条件付きながら承認されている。しかし、トルドー首相はアルバータ州での会談後の記者会見で、ノーザン・ゲートウェイ計画は、キティマットからプリンス・ルパートへルート変更しても建設の可能性はないと断言した。パイプライン建設が計画されている周辺地域は、BC州でも貴重な生態系が残る場所として知られ、環境活動家や先住民族などが建設計画に反対している。トルドー首相はこの場所にパイプラインが通ることはないと改めて強調した。

 パイプライン建設計画については、西ルートのノーザン・ゲートウェイ計画とアメリカへのキーストーン計画が中断しているため、今後は東ルートのエナジー・イースト計画への承認と、アルバータからBC州バーナビーへのキンダー・モーガン社によるトランス・マウンテン・パイプライン拡張計画に注目が集まる。トランス・マウンテン計画も、メトロバンクーバーの中心を通るため、周辺市町の反対や先住民族、環境活動家、さらには周辺住民の反対も根強い。連邦政府が今後どのような対応を取るのか注目されている。

 

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