2017年3月16日 第11号

 アメリカ国土安全保障省ジョン・ケリー長官が10日、オタワを訪問した。トランプ政権閣僚がカナダを訪問するのは、これが初めて。

 会談したラルフ・グッデイル公安相は、国境警備問題、アメリカからの亡命希望者の増加、カナダ人のアメリカ入国拒否など、多岐にわたって話し合ったとテレビインタビューで語った。

 アメリカとの国境問題は、警備や移民問題だけではない。人や物の円滑な流れが、経済活動に大きく影響することから、クリスティア・フリーランド外相や、アームド・ハッセン移民相、その他関係する閣僚もケリー長官と会談した、とグッデイル公安相が語った。

 CBCテレビに出演したケリー長官は、カナダ人旅行者が国境で入国を拒否されたのには、それなりの理由があるとし、詳細はプライバシーにかかわるので明かされないと語った。また、カナダがマリファナを合法化する動きがあることについて懸念があるかとの問いには、アメリカでも、すでにいくつかの州では合法化されており特に懸念はない、ただ国境を越える時は「ポケットの中ももう一度チェックするように」と語った。

 一方で、他局で出演した時の発言が波紋を呼んでいる。航空会社へのテロ攻撃の可能性を示唆し、アメリカのユナイテッドや、カナダのエアカナダが標的になっているかのような発言をした。

 これに対し、エアカナダは同社がテロ攻撃の対象となった事実はないと否定。グッデイル公安相も、長官は一般論を言っただけで、現実的に特定の航空会社が標的となっていると言ったわけでない、と説明した。そういったことがあれば、カナダ政府として対応する、自分が公安相に就任して、そういう事実はないと語った。

 

 

2017年3月16日 第11号

 カナダ税務局(CRA)が一時、ウェブサイトを閉鎖していたことが13日、分かった。連邦政府が公表した。

 政府によると、10日カナダ統計局のウェブサイトが新種のバグにハッキングされたことが分かり、サイトの脆弱性が明らかになったことから、連邦政府が税務局のサイトを一時閉鎖したという。統計局のデータには被害はなかったと報告している。

 CRAは以前にも不具合でサイトを閉鎖。タックスリターン(確定申告)の時期と重なり、申請期間を延長する対策を講じたという経緯がある。

 CRAは12日に声明を発表し、閉鎖は事前対策で、ハッキングされたからではないと説明。オンラインでのサービスも再開したと発表した。

 

 

2017年3月16日 第11号

 下院議会が338人の若い女性で埋め尽くされた。圧巻ともいえる光景だが、これは今月8日、国際女性デーのイベント。各選挙区から、18歳から23歳までの女性が1人選出され、この日の国会に出席した。70人の先住民族女性も含まれている。

 今回のイベントは、女性の政界進出を支援する組織イコール・ボイスの協力によって実現した。イベントに出席したジャスティン・トルドー首相は「なかなかいい光景だ」と笑顔で若い女性議員候補を出迎えた。

 首相への質疑応答になるとなかなか厳しい質問も。イスラム教徒への迫害、選挙制度改革断念、先住民族問題など、カナダが抱える社会問題が次々と飛び出した。

 今年は、カナダでほとんどの女性が選挙権を得て、ちょうど100年となる。現在、下院は338議席のうち女性議員は88人、全体の26パーセントを占める。これはカナダ史上、最も多い数字。しかし、まだまだ少ない。今回のイベントは、若い女性に国会を体験することで、政治への関心を持ってもらい、政界入りへの可能性を後押ししている。

 

 

2017年3月16日 第11号

 アルバータ州エドモントンに住むブローディ・スクラムさんは、大の車好き。しかし自分の好きなだけ車を所有するのは難しい。そこでスクラムさんは、代わりに娘のダイアナちゃんのための、中古の子供用電動乗物玩具(電動カー)をインターネット上の売買サイトから購入、新品のように修復してプレゼントすることにした。ちなみに、ダイアナちゃんの電動カーは、高級スポーツカー、アウディR8スパイダーを模したものだ。

 すっかり調子に乗ったスクラムさんは、地元のストレリー子供病院の協力を得て、今度は病気の子供たちのために電動カーを修復することにした。

 そうしたスクラムさんの電動カーをプレゼントされたのは、5歳になるバエリン・バゼルちゃん。彼女は動脈の閉塞を起こす大動脈血管炎を患っており、脳梗塞を起こしたこともある。そのためにバゼルちゃんは長い距離を歩くことができない。

 そんな彼女のためにスクラムさんが手がけたのは、キャデラックのSUVを模した明るい紫色の電動カー。バゼルちゃんの両親は、この電動カーがあれば、彼女は普通の子供と同じように犬と散歩したり、ちょくちょく外出したりできるようになり、その生活を大きく変えるだろうと、取材に話している。

 笑顔で愛車を乗り回すバゼルちゃんの姿を見守るスクラムさんは、こうした笑顔のために、これからも中古の電動カーを修復して子供たちにプレゼントしていきたいと語っていた。

 

 

2017年3月16日 第11号

 オンタリオ州北西部のオブジワ族独立居住区出身で、先住民ジャーナリスト兼作家として活躍してきたリチャード・ワガミーズさんが10日、死去した。

 2012年に刊行された著作『インディアン・ホース(Indian Horse)』は、先住民文学に関する文学賞を受賞したほか、カナダ公共放送(CBC)の書評ラジオ番組で最終選考に残るなど特に有名。

 この本は、カナダの先住民同化政策の一環であった寄宿学校(Indian Residential Schools)で虐待を受けてきた少年が、ホッケーへの情熱に救いを見つける物語で、映画化も決定している。

 ワガミーズさんは1979年にジャーナリストとして執筆業を開始。1991年には先住民ライターとしては初めて、全国新聞賞(National Newspaper Award)を受賞している。その後も執筆した小説などが数々の賞を受賞、作家としての知名度を上げていった。

 ワガミーズさんの姪のロンダ・フィッシャーさんは、彼の作品には幼少時の経験が色濃く反映されていると説明している。彼は州政府が推し進めた、先住民の児童を強制的に非先住民の家庭へ里子に出す、いわゆる『60年代スクープ(60s Scoop)』政策によって家族から引き離され、オンタリオ州南部の家庭に引き取られた過去がある。

 ワガミーズさんの本を何冊か出版した、ペンギン・ランダムハウス・カナダの編集長兼社長のクリスティン・コックレーンさんは、ワガミーズさんはカナダを代表する作家の1人だと評価、その死を悼んだ。

 また先住民会議の議長ペリー・ベルガーデさんも、ワガミーズさんは心から先住民族の物語を語ってくれたと、大きな存在を失った悲しみを表現していた。

 

 

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