2017年3月9日 第10号

 アメリカの移民対策がカナダに影響を及ぼしている。ケベック州では6日、アメリカとの国境にある入国審査所でカナダ人女性が入国を拒否されたことが分かった。

 この女性によると友人二人と5日に米バーモントで過ごす計画で、国境を超えるため入国審査を受けた時に、5時間以上足止めされた上に、結局入国できなかったという。

 この女性はインド系カナダ人で、カナダ生まれのカナダ育ち、カナダのパスポートを所持していた。それでも、質問攻めにあい、指紋や写真などをとられ、結局、カナダ生まれであっても彼女がアメリカに入国するにはビザが必要と言われたという。理由は説明されず、どういう種類のビザが必要なのかも伝えられなかった。その後、オタワのアメリカ大使館を訪ね、事情を説明。大使館からも必要なビザの種類の明確な回答はなかったという。白人の友人二人は問題なしと言われたとこの女性は語っている。

 こうしたカナダパスポート所有者が、国境でアメリカ入国を理由もなく拒否されるという問題が、この数週間に何件か起きているとモントリオールのテレビ局は伝えている。拒否された人々は、いずれも非白人という事実も報道されている。

 この問題に対してラルフ・グッデイル公安相は、アメリカ国土安全保障省ジョン・ケリー長官に、この問題を提示したと語った。しかし、「その国の国境は各国に支配権がある」と国会で記者に語り、今後も同様のことが起こる可能性を否定はしなかった。「カナダ国民全員が公平に対応されると期待している」と述べるにとどまった。

 これに対し野党は、自由党政権の対応を不十分と批判している。新民主党(NDP)ジェニー・クワン議員は、自由党政権はトランプ大統領に毅然とした態度で「こういうことは受け入れられない」と言うべきだと非難した。

 さらに同日の国会ではNDPトム・マルケア党首がジャスティン・トルドー首相に対して、ドナルド・トランプ大統領の入国制限新大統領令に対し「人種差別だと非難すべきだ」と迫った。

 しかしトルドー首相は、難民や移民を受け入れるカナダのオープンな立場を述べ、「国民は政府に、経済発展のためアメリカ政権とうまくやっていくことを望んでいる」といつもの主張を繰り返すだけだった。

 マルケア党首は、カナダ国民は首相に差別的政策に対して強い姿勢を取ることを期待していると反論した。

 この日トランプ大統領は、イスラム圏6カ国、イラン、リビア、シリア、ソマリア、スーダン、イエメンの市民へのビザ発給を90日間停止する新大統領令に署名。1月27日に署名された前回の入国制限大統領令の対象7カ国からイラクを外した。3月16日に発効される。

 カナダでは今年に入り、アメリカから国境を違法に超える亡命希望者が急増している。アームド・ハッセン移民相は、大統領令が要因の一つではあると思うが、直接的な最大の要因とはみていないとCBCでのインタビューで答えた。現時点でアメリカからの亡命希望者を拒否するつもりがないことも示唆。今後も様子を見守る立場を続けると語った。

 またカナダ国民でアメリカ入国に困難を生じた場合は、移民省へ連絡するよう呼びかけた。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。