モントリオール銀行のエコノミストは12月15日、現在の国内のガソリン価格は不当に高いと指摘した。原油価格が現在のように40ドルを下回る状況では、少なくとも2008年のガソリン価格1リットル約80セントが妥当との意見を示した。

 現在、国内のガソリン価格は約1ドルで、原油価格が下落し続けているにもかかわらず、ガソリン価格は上昇することがある。カナダが世界有数の原油生産国であり、原油価格下落に伴い経済が停滞しているという事実に、国民にとっては納得のいかない話である。

 ただ、ガソリン価格はいろいろな要素で決まり、カナダのガソリンは輸入に頼っているため、現在のようにカナダドルが安い状況では、それがそのままガソリン価格に反映されるという。

 アメリカの連邦準備理事会(FRB)が利上げを実施し、事実用アメリカドル高になることが予想され、カナダドル安へと転じる可能性を考慮すれば、これからも国内のガソリン価格がこれ以上に下がるということは、しばらくはなさそうだ。

 

 メトロバンクーバーの市長で構成されている市長委員会は、メトロバンクーバーの公共交通機関を管理管轄するトランスリンク社の管轄権をブリティッシュ・コロンビア州から市長委員会に移行するようBC州政府に働きかけている。その実現に向けた提言が12月13日、理事で承認された。

 トランスリンクは財政難が続き、2015年の春にはトランスリンクへの資金支援のためにメトロバンクーバーに限定して州税を0・5パーセント引き上げるかどうかの住民投票が行われた。しかし結果は州民がノーを突きつけた。それには、トランスリンクの最高経営責任者(CEO)をはじめとする理事に高額な報酬が支払われていたり、スカイトレインが何度も途中停止するなど、州民のトランスリンクに対する信用がガタ落ちとなった背景があった。

 そうした信用を取り戻すためにも、利用者の声を聞き入れやすい市長委員会が管轄することが最善ではないかと、住民投票後から主張している。

 しかしBC州政府ピーター・ファスベンダートランスリンク担当相は、トランスリンクの管轄を変更する予定はないと13日、すぐに回答した。

 

 オタワで現在行われている上院マイク・ダフィ議員の裁判で12月15日、ダフィ議員本人が証言台に立ち、弁護士の質問を受けた。

 この日焦点となったのは、ダフィ議員が返金した経費不正受給分約9万ドルについて、スティーブン・ハーパー前首相がかかわっていたのかどうか。ダフィ議員の裁判は、2015年春から始まり、何回かの休廷を挟みながら現在に至っている。その間、関係者が証言し、ようやく問題の真相が明らかになりつつある。

 上院議員経費不正受給問題は、2013年に入ってから問題が明らかになり始め、さまざまな人々がかかわっていた。その中でも、注目されたのがダフィ議員。元ジャーナリストという経歴で、ハーパー首相が、プリンス・エドワード島を基盤とする上院議員に任命、保守党系上院議員として党内でも大車輪の活躍をしていた。

 しかし、2013年に上院議員の住宅手当や交通費の不正受給が明らかになり、上院の調査で4人が大金を不正受給していたことが分かった。

 ダフィ議員は不正受給が指摘された当初は完全否定。手続きミスはあったが、故意に不正受給をしたわけではないと説明した。当時は自身で不正受給分が約3万2千ドルと思っていた。しかし、結局約9万ドルの不正を指摘され、結局全額を上院に返金した。

 ところが、この9万ドルの返金はダフィ議員本人が支払ったものではなく、当時首相事務所の首席補佐官だったナイジェル・ライト氏が立て替えていたことが2013年5月に明らかになった。ダフィ議員は5月にメディアで報道されるまでライト氏が立て替えたことは知らなかったと語った。

 ダフィ議員は2015年2月22日、CBCにテレビ出演し、自分のミスで不正に受給したことを認め、全額返金すると語った。

 この時点ですでにハーパー前首相が関与していたという。ダフィ議員は、22日のテレビ出演での告白はハーパー前首相を含む首相事務所に強いられたもので、自分は不正をしたとは思っていなかったと語った。また、ハーパー前首相が返金分はライト氏が何とか解決すると自分に告げたとも証言した。ダフィ議員の不正金返済についてのシナリオは前首相をはじめとする首相事務所で出来上がっていたとダフィ議員。もしシナリオ通りに行動しなければ、上院議員を辞めることになるとも言われたと語った。

 その後同年3月にダフィ議員は全額を返済。同年5月にライト氏がダフィ議員の不正分を全額融資したことが明らかになり、ダフィ議員はこの時初めてライト氏が全額を支払ったことを知ったとも語った。

 不正したとは思っていなかったのに、それを認め返金したことについて、「保守党が用意したシナリオ通りに行動しなければ、議員を辞めなければならなくなると脅されたとも語った。

 ダフィ議員はライト氏に支払いを肩代わりしてもらったことで、自身がなんの得もしなかったと説明。このシナリオで利益を得たのは前首相で政治的なものに限定されていたとも語った。

 4人の不正受給については調査を連邦警察に委ねることが決定され、4議員は上院議員としての活動停止と給与凍結が決定した。

 

 イスラム教の創始者、ムハマンドを歌った伝統的な歌『タラ・アル・バドル・アライナ』。

 イスラム教の国々では子供から大人まで幅広く知られているこの歌を、12月3日にカナダの小学生が歌った動画がインターネット上で公開され、世界中から賞賛されている。

 7世紀に起こったとされるタブクの戦いから、メディナに凱旋したムハマンドを迎え入れるために住民が歌ったというこの歌は、1400年の歴史を持ち、イスラム教関係の歌としては最古のもののひとつ。

 この歌を合唱したのは、オンタリオ州オタワ地区の小学校から集まった4年生から6年生を主体とする300人近くの生徒たち。そのほとんどはフランス語公立小学校からの生徒だと、合唱を企画したオタワ・ラサール高等学校の合唱ディレクター、ロバート・フィリオンさんは取材に語っている。同高校は、この合唱が行われた会場でもある。

 ちょうどシリアからの難民の第一弾がカナダに到着するのと同時に公開されたこの動画。そのタイトルにも『Welcome To Canada Syrian Refugees』とあるが、「毎年このイベントでは異なった文化の歌を取り上げてきており、ほぼ1年前からイスラム教文化の歌を取り上げようと企画してきた」ので、カナダ政府のシリア難民受け入れとは偶然時期が重なっただけだと、フィリオンさん。

 合唱に参加した生徒の親が撮影した動画がインターネット上で公開されているのを、フィリオンさんが知ったのは12月11日のこと。その翌日には、彼の元にはこの動画について世界中からの電子メールが次々と寄せられるようになった。

 「こんな反響があったことは今までにはなかった、信じられない」とフィリオンさん。自分たちのちょっとしたコンサートが、世界中の人々に楽しんでもらえてうれしいと語っている。

 動画のサイトには、「自分はアラブ人だが、このビデオには泣けた。たっぷり泣けた」、「世の中には、まだ希望がある」などのコメントのほかに、カナダに対する感謝のメッセージなどが数多く寄せられていた。

 「音楽でインパクトを与える。これこそが音楽を続ける理由だ」とフィリオンさん。しかし、これほどのインパクトを与えられるとは彼にも予想できなかったようだ。

 

 ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド在住のケリー・ストラチャックさんは、コミュニティの相互理解のため、英語を全く用いない看板に対する規制を強化するよう、同市議会に働きかけ続けてきた。

 彼女はこの夏、外部のメディア(日本テレビとラ・プレス(ケベック州・モントリオール))を招いて、当地における中国移民の影響―地価の高騰や、コミュニティの調和と統合の問題―を案内して見せた。

 その中のひとつが、同市中心部で目抜き通りのNo3ロード沿いの住宅建設現場。高々と掲げられた看板には、建設会社の名前と電話番号以外は中国語のみで書かれており、中国語が理解できなければ建築内容はわからない状態だ。

 また不動産のオープンハウスで見かける、ひとつの物件にいくつもの不動産業者の看板を乱立させる(市の条例ではひとつの物件につき、ひとつの業者の看板のみ)行為にも触れ、自分の利益のためにはルール違反も気にしない彼らの行動がコミュニティのそこかしこで起こっていると指摘、規制強化はせずに、ビジネスへの指導・教育だけでこの問題を解決しようとしている市の姿勢を非難している。

 中国語のみの看板に対して、全くイニシアチブを取ろうとしない市の態度には不満でいっぱいだと語るビジネス・コンサルタントのルパート・ホイッティングさんも「法律がどうであろうと、ここではみんな何でも好き放題やっていいようだ」と現状を皮肉くる。

 彼は中国語のみの看板の後ろで建築が進んでいる住宅を指差し、この家は中国人以外には売れないだろう、そもそも最初から中国人以外に売るつもりもないのだろうと、問題の核心を指摘していた。

 そんなリッチモンド市が最近、この問題を扱う人材の募集をオンライン上で始めた。その概要は以下のとおり。

 

雇用機関と形態:1年間で、フルタイム 

年俸:7万ドル程度 

技能要件:中国語に堪能

業務内容:中国語のみの看板問題を扱う、広告・事業ライセンス審査・監視職

業務環境:言い争い、脅迫、不服従的な応答のほか、物理的な暴力に発展する許容しがた い状況になる可能性あり

 

 市は、業務環境についての記述は他の条例監視職の求人と同じものだとしているものの、この職種での暴力沙汰は時によっては現実のものであることを認めている。その上で、今回の業務内容は新しいものなので、実際にどのくらいの頻度で身体的被害を受けるかは未知数だとしている。

 このような市の対応についてストラチャックさんは、たとえばトランスリンクが管理するバス停などの中国語のみ広告には市の権限が及ばず、その効果に疑問を呈している。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。