ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド在住のケリー・ストラチャックさんは、コミュニティの相互理解のため、英語を全く用いない看板に対する規制を強化するよう、同市議会に働きかけ続けてきた。

 彼女はこの夏、外部のメディア(日本テレビとラ・プレス(ケベック州・モントリオール))を招いて、当地における中国移民の影響―地価の高騰や、コミュニティの調和と統合の問題―を案内して見せた。

 その中のひとつが、同市中心部で目抜き通りのNo3ロード沿いの住宅建設現場。高々と掲げられた看板には、建設会社の名前と電話番号以外は中国語のみで書かれており、中国語が理解できなければ建築内容はわからない状態だ。

 また不動産のオープンハウスで見かける、ひとつの物件にいくつもの不動産業者の看板を乱立させる(市の条例ではひとつの物件につき、ひとつの業者の看板のみ)行為にも触れ、自分の利益のためにはルール違反も気にしない彼らの行動がコミュニティのそこかしこで起こっていると指摘、規制強化はせずに、ビジネスへの指導・教育だけでこの問題を解決しようとしている市の姿勢を非難している。

 中国語のみの看板に対して、全くイニシアチブを取ろうとしない市の態度には不満でいっぱいだと語るビジネス・コンサルタントのルパート・ホイッティングさんも「法律がどうであろうと、ここではみんな何でも好き放題やっていいようだ」と現状を皮肉くる。

 彼は中国語のみの看板の後ろで建築が進んでいる住宅を指差し、この家は中国人以外には売れないだろう、そもそも最初から中国人以外に売るつもりもないのだろうと、問題の核心を指摘していた。

 そんなリッチモンド市が最近、この問題を扱う人材の募集をオンライン上で始めた。その概要は以下のとおり。

 

雇用機関と形態:1年間で、フルタイム 

年俸:7万ドル程度 

技能要件:中国語に堪能

業務内容:中国語のみの看板問題を扱う、広告・事業ライセンス審査・監視職

業務環境:言い争い、脅迫、不服従的な応答のほか、物理的な暴力に発展する許容しがた い状況になる可能性あり

 

 市は、業務環境についての記述は他の条例監視職の求人と同じものだとしているものの、この職種での暴力沙汰は時によっては現実のものであることを認めている。その上で、今回の業務内容は新しいものなので、実際にどのくらいの頻度で身体的被害を受けるかは未知数だとしている。

 このような市の対応についてストラチャックさんは、たとえばトランスリンクが管理するバス停などの中国語のみ広告には市の権限が及ばず、その効果に疑問を呈している。

 

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