2017年2月16日 第7号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーのスタンレー公園で10日午後、氷の張った池に落ちた犬を警察官が救出した。

 同地域に多くの雪の被害を及ぼした寒波のため、薄氷が張った公園内の池、ロストラグーンの上をボールを追って走っていた犬が氷を踏み抜き、溺れていると住民から通報が入ったのは午後4時30分ごろのことだった。

 警察官らが駆けつけたとき、まだ犬は水面に顔を出していたが、事態は一刻を争うと、警察官のひとりが身に着けていた装備や余分なユニフォームを脱ぎ、救出用ロープの端をつかんで池に飛び込んだ。もう一方の端を保持した警察官が池のほとりで、犬を抱えた警察官を岸に手繰り寄せた。

 この警察官も犬も無事だったと、警察はメディアに電子メールで回答している。

 またこの状況を捉えたいくつかの画像が、SNSのツイッターに掲載された。そのうちのひとつは、片手で犬を抱え、もう一方の手でロープを握り締め、氷の割れ目を通って岸に向かっている警察官の姿が映されていた。また別の画像には、雪に覆われた岸を、上半身は半そでシャツ、足は裸足のままブーツを手にしてパトカーに戻る警察官の後姿を捉えていた。ツイッターでは彼の果敢な行動に対し、多くの賞賛が寄せられた。

 

 

2017年2月16日 第7号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市街地に隣接する、スタンレー公園で傷害致死事件が連続して起こったことを受け、公園委員会は公園管理官(レンジャー)による見回りを、日没から夜11時まで行うことにしたと、11日発表した。

 同公園では昨年11月に、82歳の男性が暴行を受け大けがを負ったあと、駐車場に止めてあった本人の車に放置されるという事件が起こった。また2月1日深夜には、同公園のセカンド・ビーチとサード・ビーチの間でアマチュア写真家のルボミール・クーニックさん(61歳)が殺害されているのが発見されている。

 このためバンクーバー市警察は、日没後には一人で公園に出向かないこと、不審な行動を目撃した場合には速やかに警察へ通報するよう、一般への警告を発表した。

 見回りは現在のところ小型ピックアップトラックで行われているが、より公園内を見回れるようにするため、照明装置を装備したATV車(バギー)も使用される予定。

 

 

2017年2月9日 第6号

 ブリティッシュ・コロンビア州で最も物議を醸しているトランスマウンテン・パイプライン拡張計画で、承認した同州クリスティ・クラーク州首相に利益相反の疑いがあるとして市民団体が訴えを起こしていることが1月31日分かった。

 同パイプライン拡張計画は、アルバータ州エドモントン市近郊からBC州バーナビー市まで延びるオイルサンドを運ぶ現存するパイプラインを拡張するキンダーモーガン社が手掛ける68億ドルの事業。昨年11月に連邦政府が承認を発表。その後、クラーク州首相がBC州政府が要求する5つの条件を満たしたとして承認を発表した。

 これに対し、非営利団体とパイプライン建設反対市民団体が、自由党がキンダーモーガン社と関係企業から6年以上にわたり56万ドルの献金を受け取っていた事実を提示。クラーク州首相はこの間、党から年間5万ドル合計30万ドルの助成金を州首相として受け取っていたことから、同社が手掛ける事業計画への州首相の承認は利益相反の疑いがあるとして訴えている。2団体は、州が承認した環境調査証明を再精査するよう申請している。

 

 

2017年2月9日 第6号

 先月の内閣改造を受け、政界から事実上引退する2人のベテラン議員が1月31日の国会であいさつ。与野党の議員から大きな拍手を受けた。

 引退するのは、ジョン・マッカラム前移民相とステファン・ディオン前外相。マッカラム前移民相は、内閣改造時に中国大使として就任することがすでに発表されていた。中国語もこなす元経済学教授は、ジャン・クレティエン自由党政権時代の2000年に議員として初当選。ポール・マーティン政権では閣僚を歴任した。2015年10月、自由党が再び政権復帰後に移民相に就任。最も印象深い仕事は「シリア難民の受け入れ」と語った。カナダは昨年末までに約4万人のシリア難民を受け入れている。難民を積極的に受け入れるというトルドー政権で大きな役割を果たした。

 ディオン前外相は、米ドナルド・トランプ大統領の就任により英仏露の3カ国語に堪能でアメリカとロシアに精通するクリスティア・フリーランド前国際貿易相が外相に抜擢されたため、政界引退ではとの見方が強く、引退後については発表されていなかった。

 しかし、この日のあいさつで自らが欧州連合とドイツの大使の兼任を任されたことを公表。昨年カナダが自由貿易協定合意に成功した欧州連合からイギリスが離脱するという転換期に大使を任され、さらにドイツ大使も兼任するという驚きの配置転換となった。

 ディオン前外相は、1996年に当時の自由党政権クレティエン首相からの要請で政界へ。ケベック州の独立運動に備えた法整備に尽力。ケベック州が一方的に独立を宣言できないとしたこの法律は、カナダを一つにするとして与野党一致で可決された。

 2006年には野党第一党自由党党首に就任。2008年総選挙で「グリーンシフト」を掲げて戦ったが、リーマンショック直後のカナダで経済再建を主張した保守党に再び敗れ、党首を辞任した。

 トルドー首相は、2人の尽力でカナダがより一つになったと貢献を労い、国会がさみしくなると言葉を贈った。マッカラム前移民相は、「包容力と賢明さを持って、カナダがさらに良くなるよう頑張ってください」と現職議員にエールを贈った。

 

 

2017年2月9日 第6号

 再開した国会で、1月27日に米ドナルド・トランプ大統領が発令したイスラム圏中東・アフリカ7カ国出身者の入国一時禁止の大統領令について、1月30日、新民主党(NDP)トム・マルケア党首が首相はこの入国禁止令について非難すべきだと詰め寄った。

 ジャスティン・トルドー首相は、大統領令の翌日にツイッターで「カナダは難民を歓迎する」という趣旨のツイートを発信したものの、大統領令についての非難的な発言は一切行っていない。国会でもマルケア党首の質問に対し、カナダの寛容な受け入れ態勢を繰り返しただけで非難する発言はなかった。

 だがカナダ政府はこの大統領令の対応に追われた。カナダ市民権、永住権を保有する7カ国出身者への影響を確認したり、31日には党派を超え、議員が大統領令への対策を協議する緊急会議を招集したりと振り回された。

 大統領令の影響は、連邦地裁の一時差し止め命令により、国内ではやや落ち着いたが、対象となる7カ国出身のNEXUS(米加で合意している国境通過のための事前登録制度)保有者が、明確な理由もなくアメリカ政府から登録失効の通知を受けたり、国境を越えて米国から難民がマニトバ州に入国したりと、まだ続いている。

 トルドー首相が大統領令への直接の非難を避けている理由に、アメリカとの関係に余計なひびを入れる必要がないとの判断があるとみられている。ロイターカナダ電子版は、首相は先週中にもアメリカを訪問する予定だったが、先月29日にケベック州ケベック市で起きたモスク襲撃事件のため取り止めとなったという知人の言葉を伝えている。今週は防衛大臣、外務大臣、財務大臣がアメリカを訪問する。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。