2017年2月16日 第7号

 オンタリオ州ウィンザー市とその周辺の学区を統括する、グレーター・エセックス郡教育委員会は12日、アメリカへの修学旅行を「安全と公平性への懸念」から中止すると発表した。

 この決定により、2月と4月に計画されていたアメリカ行きの旅行が中止されると、同教育委員会理事のクララ・ハウイットさん。4月の行き先はアメリカ・ワシントンDC州が予定されていたが、同じタイミングで何十万人の人が参加すると予想される集会が開かれるため、安全面の理由で今回の決定に至ったと説明している。

 また2月の旅行に関しては、イスラム教が多数を占める7カ国からの入国を禁止する大統領令にトランプ大統領が署名したことから、生徒間の公平性を保つことが困難となるためとしている。この大統領令は、裁判所から差し止めを命じられ、またカナダ市民権や永住権も同時に保持している者には適用されない、とされてはいるが、今後の事態がどのように展開するか予測することが困難であることも、その理由のひとつだと付け加えている。

 教育委員会がここまで慎重になるのには、理由がある。かつて2001年9月11日にアメリカ・ニューヨーク市で同時多発テロ事件が発生した直後、同市の生徒が乗ったバスが国境で長時間拘束された挙句、入国を拒否された経緯がある。

 今回の決定も、このような事態が再び起こらないようにするためのものであり、今のところ過渡的な措置であるとハウイットさんは説明している。教育委員会は今後、状況を再評価するとしているが、いつ行われるかについては言及されなかった。

 

 

2017年2月16日 第7号

 国会では14日、新民主党(NDP)が提出した、政府の選挙制度改革断念と公約違反への謝罪を求めた動議が自由党の反対多数で否決された。

 選挙制度改革は自由党の選挙戦時からの公約。政権を取って以降もトルドー首相は必ずやり遂げると強調していた。昨年には党派を超えた議員で構成された諮問委員会で改革案について会議が開かれ、提案もされている。

 しかし今月1日、政府は選挙制度改革を断念すると発表した。首相は、制度を改革するか、どの制度を採用するかで、民意が得られないと説明した。以降、国民から怒りの声が上がっている。

 国会では首相は「(制度改革を)前進させる明確な道が見えない」と発言。制度改革によって政府がカナダを不安定にするのは無責任と語った。

 諮問委員会の一員だった新民主党(NDP)ネイサン・カレン議員は、国会後の記者会見でトルドー首相を「嘘つき」と非難した。同じく委員会メンバーだったグリーン党エリザベス・メイ党首も「非常にショック」とツイートした。

 現在カナダは1選挙区1議員の小選挙区制を採用している。トルドー首相は2015年の総選挙時から、今回がこの制度を採用するのは最後、2019年は新制度になると、選挙制度改革を公約としていた。自由党が政権を取ってもその発言は変わらず、諮問委員会も設立した。

 変化があったのは昨年12月。当時のマリアム・モンセフ民主機構相が、諮問委員会が提案した制度改革前の住民投票実施を却下。必要がないと一蹴した。さらに同相は、こうした意見しか出せない諮問委員会は「働き方が足りない」と国会で批判して、翌日に発言を謝罪する騒動も起きた。

 トルドー首相は今回の改革断念の決断について、党への影響があると覚悟しているが全ては自分の責任として受け止めると記者会見で語った。

 しかし国民の怒りは収まりそうもない。7日には署名活動が開始された。11日にはトロントやバンクーバーをはじめ、国内20都市以上で選挙制度改革断念へのデモ活動が実施された。

 現行の小選挙区制度は総得票率が40パーセント以下でも過半数の議席を獲得できる。2015年総選挙では39・5パーセントの自由党が338議席中184議席を獲得して大勝した。逆にグリーン党のような小政党は得票率があっても、実際には議席を一つしか確保できないという不公平さがある。それを改善するというのが自由党の選挙制度改革だった。

 

 

2017年2月16日 第7号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーで1月18日、託児所内で1歳児が死亡した事故を受け、託児施設の改善政策を州政府に求める声が高まっている。

 死亡したマカラン・ウェイン・サイーニちゃんは、もうすぐ16カ月になるところだった。死因については現在調査中で、明らかにされていない。

 託児施設改善について政府に働きかけているシャロン・グレッグソンさんによると、BC州内にはおよそ36万人の子供の母親が仕事を持っているが、認可保育施設は10万5千カ所足らず。多くの子供が無認可託児施設に預けられているのが現状だ。

 サイーニちゃんの死を無駄にしないためにも、託児システムの大胆な改革が必要だとグレッグソンさん。多くの親たちが、託児所の空きスペースを血眼になって捜したり、何かを犠牲にしなければならなくなったりしているが、手ごろで安全に子供を預けられる場所のために、自分たちは戦い続けていくと取材に語っている。

 バンクーバー・コースタル保健局によれば、サイーニちゃんが死亡したイースト・バンクーバー地区にある託児所は無認可だった。認可託児施設であれば、地元の保健局職員が定期的に施設を訪問、保健および安全基準が守られているかどうかをチェックすることができる。

 託児所不足は、BC州全体で常態化している。またバンクーバー市の育児費用は、カナダ国内で3番目に高額となっている。2歳と4歳の子供を持つ家庭が負担する育児費用は、月に約2200ドルとなっている。

 グレッグソンさんはケベック市が20年前に導入した、州政府の補助による1日10ドル託児システムを引き合いに出し、これがBC州での問題解決になるとしている。しかしBC州子供と家族省の試算では、そのようなシステムに州政府がつぎ込む予算は年15億ドルに上り、現実的ではないとしている。

 これに対しグレッグソンさんは、橋や道路、また低価格住宅への投資が可能なら、託児システムへの初期投資も不可能な理由はないはず。また、その投資はすぐに回収できると力説していた。

 

 

2017年2月16日 第7号

 ウィリアム・モルノー財務相の経済諮問委員会議長ドミニク・バートン氏は6日、アメリカ対策としてカナダ経済の構造改革が必要との報告書を発表した。

 カナダは輸出の75パーセントがアメリカと極端に依存している。トランプ大統領は、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しや国境税の導入などを主張しているが、報告書ではこれまで以上にアメリカとメキシコとの経済的な関係を強化していく必要があるとしている。その上で、中国、日本、インドとの自由貿易協定を進めていくことを提案し、貿易の多角化を推奨している。

 国内では、これまで戦力的な労働力として注目を浴びてこなかった、先住民族、低所得者、子育て中の女性、高齢者の積極的な労働市場参入を促す必要があると提案。教育や研修の充実や、子育て中の女性が働きやすい環境を整備するために連邦政府によるチャイルドケアプログラムの創設なども提案した。

 その他、工場の自動化による失職を防ぐための職業訓練や、成長企業への支援強化、農業・フード産業など、伸びしろのある産業を強化するなどが盛り込まれた。

 記者会見でバートン氏は、「カナダが巨大貿易国ではないことを認識し、自国の運命はもっと自国でコントロールする必要がある」とアメリカに左右されない貿易が必要と語った。

 

 

2017年2月16日 第7号

 食料品のパッケージやプラスチック袋など、環境に悪影響を与えるゴミの発生を極力抑える工夫をした店が増えてきている。

 ブリティッシュ・コロンビア州ソルトスプリング島に昨年オープンしたグリーン・ゼロ・ウェイスト・グロサリーは、カナダ国内で栽培または製造されたものだけを扱う、量り売り食料品店だ。

 店のオーナー、クリスタル・レヒキーさんは、かつてはBC州北部の大手スーパーのマネジャーを務めていた。ある晩、TVで見ていたプラスチックなどによる海洋汚染のドキュメンタリー番組にショックを受けたレヒキーさん、次の朝には環境に優しい自分の店を持つことを決心していた。

 夫のケルビン・フィーゼルさんと店のロケーションを探していた時、環境意識が高いソルトスプリング島ならうまくいきそうな感触を得て、この地に店を構えることにした。

 店では地元産、有機、そしてフェアトレードの食材をパッケージなし(量り売り)で販売するかたわら、利用客には食材を入れて持ち帰る『マイ容器』の持参を求めている。もちろん、容器の持ち合わせがなかった人のために店のものも用意はしているが、ほとんどの人は『マイ容器』を持ってくるとレヒキーさん。それどころか、手にすくったまま持ち帰る人、さらにはポケットいっぱいに詰め込んで帰る人もいたという。

 持ち込まれた容器は最初に重さを量り、その分を会計時に差し引くが、その重さが印字されたステッカーを容器に貼るとゴミを増やしてしまうというので、洗い落とせるワックス鉛筆で直接記入するようにしている。

 このように顧客に『マイ容器』の持参を奨励する動きは徐々に広がっている。量り売り食材店の全国チェーン、バルク・バーンも、全国の260店舗で2月24日から『マイ容器』の利用を認めると発表している。同社副社長ジェーソン・オフィールドさんは、こうした動きは『ゼロ・ウェイスト・ホーム』の著者ビア・ジョンソンさんの提唱によって広がっていると取材に語っている。

 普段の暮らしの中で、いかに個々人がゴミを減らせるかが語られていることは、同社にとり、追い風となり、さらに顧客のニーズにこたえていきたいと、オフィールドさんは付け加えていた。

 なおバルク・バーンで使用できる『マイ容器』については、いくつかの条件がある。詳しくは同社のウェブサイトで確認できる(『bulkbarn』『waste』『free』で検索)。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。