2020年1月30日 第5号

 次期保守党の党首を決める党首選に大きな動きがあった。立候補を期待されていた有力候補予定者が立て続けに辞退を表明、すでに一騎打ちの様相を呈している。

 25日に正式に立候補を表明したのはピーター・マッケイ氏。元保守党議員でスティーブン・ハーパー政権時代は、国防相、法務相、外務相の重要ポストを歴任。2015年の選挙には立候補せず一度引退して政界からは離れていたが、今回の党首選を機に政界復帰を目指す。2017年の党首選にも立候補するか注目されたが、当時は見送った。

 ノバスコシア州出身でこの日は自身の元選挙区だったセントラル・ノバで立候補を表明した。「前回は辛い決心だったが、この会場で引退を表明した」と語り、そして、その時にこの会場で引退を見守ってくれた家族や支援者が今日もここに来てくれていると語った。

 マッケイ氏は2003年の保守党設立の当事者でもあり、17年経ってようやく党首になれる機会を得ることになった。

 アンドリュー・シェア党首と違い、性的少数派の権利と同性結婚を支持することを表明している。

 続いて立候補を表明したのは、エリン・オトゥール議員。2017年の党首選にも立候補して、シェア党首、次点のマキシーム・ベニエ元保守党議員に次いで3番手に付けた。オンタリオ州トロントのダーラム選挙区選出。ハーパー政権時代の2015年には復員軍人相に就任している。主張はマッケイ氏とほとんど変わりはなく、今後どれだけ違いを出せるかにかかっている。

 現在の立候補者は5人。この2人が本命トップ2とみられている。

 一方で打倒トルドー政権を期待されていた立候補予定者が、相次いで立候補辞退を表明した。

 保守党の中で最も期待が大きかったのはロナ・アンブローズ前暫定党首。17年に政界を引退したが、今回党内からの期待の声を受けて立候補を考慮すると発表。しかし今月22日に立候補しないことを発表した。アルバータ出身で、ハーパー政権時代には環境相、労働相、保健相などの主要閣僚を歴任。2015年に保守党が自由党に敗れ、ハーパー前党首が辞任したのを受けて正式な次期党首が決定するまで暫定党首を務めた。女性の権利保護に力を入れ、暫定党首時代の手腕もあり、党内の信頼も厚く、トルドー首相に対抗できる候補として期待されていただけに、失望する声が保守党内外から聞こえた。

 その翌日にはピエール・ポリバー議員が立候補しないことを発表した。すでに立候補に向けて準備を進めているとみられていただけに、驚きの声が上がった。現職議員の中では最も党首に近い存在とみられていた。アンブローズ氏が辞退したことでマッケイ氏との一騎打ちになるのではと予想されている。ポリバー議員は、仮に党首になると選挙、そして首相というシナリオが実現すれば多忙を極めるため、現在1歳の長女の成長を近くで見る機会を逃すのではと考え、どちらが大事か熟慮した結果、立候補しないことを決断したと理由を語った。

 これで2人の最有力候補が党首選から退いたことになる。その前にはケベック州ジャン・シャレ元州首相も立候補しないことを発表した。

 今後立候補を表明する可能性がある大物候補者はアルバータ州ミッシェル・ランぺル・ガーナー議員。24日時点では立候補の可能性もあると記者団に語っている。ランぺル・ガーナー議員は、現在の立候補者の状況ではアルバータ州をはじめとするカナダ西部の声が反映されないと主張している。

 

2020年1月30日 第5号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市にあるバンクーバー仏教会が盗難の被害にあっていることがわかった。27日グローバルニュースが伝えた。

 日系カナダ人コミュニティに親しまれている仏教会に何の目的か分からないが、地下にあるカギのかかった倉庫から盗まれたという。

 仏教会は、ジャクソン・アベニューをはさんでオッペンハイマー公園の向かいにある。同公園は現在ホームレスが生活するテントが並び、テントシティと呼ばれている。

 被害にあったのは1月18日で、倉庫のドアがこじ開けられ24時間開けっ放しとなっていた間に多くの人が出入りして「フリーマーケットのように持ち出していた」と仏教会関係者はセキュリティビデオの様子を語っている。

 ビデオ映像を確認すると、盗んでいく人々の多くが以前に見たことがあるオッペンハイマー公園生活者と気づいたという。

 そこで翌朝公園を歩いてみると盗まれた品々がみつかり、約80パーセントは公園で回収できたと話している。自分たちの持ち物がオッペンハイマー公園のそこら中にあったのを見てすごく失望したと語った。

 オッペンハイマー公園でのテント生活者に対して、公園を管轄するバンクーバー公園庁は、強制撤去ではなく協力的な立ち退きを昨年9月に決定した。

 しかし公園では事件や事故が後を絶たない。バンクーバー今年最初の殺人事件もこの公園で起きた。

 市民からは一日も早い安全な公園に戻ることを願う声が相次いでいる。

 

2020年1月30日 第5号

 中国河北省武漢を発祥とする新型コロナウイルスの感染者数が増加するにつれて、カナダ国内で中国系カナダ人に対する差別的な言動が見られるようになったと各メディアが伝えている。

 カナダ最初の感染者が確認されたオンタリオ州トロントでは、ヨーク地区教育委員会に最近中国から帰国した家族の子どもたちを登校させないように要求する請願書に9千人が署名して提出したことが明らかになった。教育委員会は、心配する気持ちは分かるが、こうした行為は差別を助長するとして非常に残念との声明を発表した。

 またトロントの中華街も人通りが少なくなっているという。

 カナダは2003年サーズ(SARS)が流行した時に、アジア以外では唯一死亡者を出した国で44人が犠牲になった。その時の恐怖はまだ記憶に新しい。

 ソーシャルメディアにも、中国系カナダ人やアジア系カナダ人への差別的な投稿が多くみられるという。SNSでは新型コロナウイルスに対するデマも広がっていることが報告されている。ブリティッシュ・コロンビア州衛生保険官は正確な情報源として連邦、州政府保健省の情報を確認してほしいと語っている。

 

2020年1月30日 第5号

 オンタリオ州オタワに本社を置くショッピファイ(Shopify)がブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーオフィス開設にともない、千人の雇用を予定していると28日に発表した。

 2020年末までにダウンタウンに4階建て、総面積6500平方メートルのオフィスをオープンする予定という。

 今回募集しているのは、バックエンド開発者、データエンジニア、モバイル開発者、ウェブ開発者、プロダクトデザイナー、プロダクトマネージャーなど。

 新オフィスを率いるリンジー・トンプソン氏は、バンクーバーにオフィスを開設する理由を、人材の中心地であり、成長が期待できる都市だからと説明した。千人を集めるには2年はかかると思うが、長期的にビジネスを展開する予定とバンクーバーでの事業に期待を寄せた。

 ショッピファイはクラウド型のEコマースプラットフォームで、オンタリオ州トロント、ケベック州モントリオール、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスや、ベルリン、シンガポール、東京にもオフィスを構えている。

 

2020年1月30日 第5号

 カナダで初の新型コロナウイルス感染者が出たことが26日、分かった。

 感染者が出たのはオンタリオ州トロント。25日にオンタリオ州保健省が感染の可能性を公表。州の検査で陽性が認められ、27日に連邦検査機関の検査で感染を確認した。

 オンタリオ州政府によると感染したのは50代の男性で、中国・武漢を訪問して中国からの直行便で22日にトロントに帰国。翌日呼吸器系障害のような症状が認められたため、病院で治療したと説明した。27日には男性の妻も感染が認められたが発症はしていないという。男性は入院しているが、妻は入院せず自主的に隔離して医療機関が観察していると発表している。

 さらに夫妻が搭乗した中国からの便に同乗し、近くにいた可能性のある乗客に連絡を取っているとも語った。

 カナダでは2002年、03年に大流行したサーズを彷彿とさせるため、国民には動揺する声も聞こえる。連邦政府パティ・ハイデュ保健相は、カナダ政府、各州政府、市町村、全国の医療機関が連携して情報を共有し万全の準備をしていると、26日の記者会見で語った。

 サーズでは、カナダは44人の死者を出している。アジア以外でこれだけの犠牲者を出したのはカナダだけとされている。

 専門家は今後もカナダ国内で感染者が出ると予想されるが、大流行する可能性は低いとの見解を示している。27日時点でカナダ国内では19人に感染の疑いがあるとして調査中と発表している。

 カナダ政府は27日、中国・湖北省への渡航を中止する勧告を発表した。

 国内の3空港、バンクーバー、トロント、モントリオールで、到着ロビーの電光掲示板にインフルエンザのような症状がある渡航者は国境サービス庁職員に申し出るよう注意を促している。

 25日には春節を迎え、中国系移民の多いカナダでは中国の正月を祝うイベントが多く予定されたが、今回の新型コロナウイルスの広がりを受け、イベントの縮小などの動きが相次いだ。

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーでは、サレーやラングレーで26日に予定されていたイベントが中止となったほか、中華街でのチャイニーズ・ニューイヤー・パレードでも参加予定団体の参加取り止めに配慮するなどの動きが見られた。パレードは予定通り決行され、大勢の人が見学に訪れ新年を祝っていた。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。