2016年12月8日 第50号

 ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンドの住宅街に、中国人排斥のビラが最初にまかれてから約2週間がたった先週、今度は別の団体によるビラが、まかれた。

 ビラには、中国人が住んでいると想定される豪邸の前で、それをうらやましげに眺める白人家族の後姿が描かれている。このビラをまいたのは、イミグレーション・ウォッチ・カナダ(Immigration Watch Canada)。ビラには、何万人もの裕福な中国人が不動産価格をつり上げ、税金をほとんどが全く払わないまま、この国の医療や教育制度に「ただ乗り」していると批判。またその子供たちは外見による少数派という、就職に際する優遇措置を享受しているとも指摘している。

 最初のビラに抗議するため、11月27日に同市内でデモ行進を企画した香港出身のエドワード・リウさんは、28日に放送された中国語専門ラジオ局の番組に招待され、危機感を訴えた。

 その中でリウさんは、最初のビラの内容に不安を感じたため、自分たちはカナダ人でありカナダを愛していることを表明するため、デモを実行したと説明した。また番組のリスナーに、ビラは決してリッチモンド全体の意見を代表しているわけではないから、過敏に反応しないよう求めていた。

 さらにリウさんは、ビラに書かれていた「アジア系移民はカナダ国内に溶け込もうとしない」という表現に対し、自分が知っている移民の9割以上は入国前に何らかの英語の学習を行っていたとして、公平ではないと反論している。

 マスメディアや人種、民族問題に詳しい、クワントレン大学のチャールズ・キスト=アデデさんも、今回のビラの一件には驚き憂えていると取材に語っている。キスト=アデデさんは1992年にアフリカ・ガーナからカナダに移民している。その上で、中国からの移民は地元の文化―ヨーロッパ系白人の文化―に溶け込む努力を行っておらず、そのことが差別主義団体の行動を正当化させていると率直に指摘している。

 一方、ビラに対するリッチモンド住民、特に白人の対応には感心させられたとも語っている。27日のデモには、東部リッチモンド選挙区選出のBC州議会議員リンダ・リードさんとその家族など、非アジア系の住民も加わっていた。

 

2016年12月8日 第50号

 オンタリオ州のナイアガラ・フォールズが、新しい照明設備でライトアップされるようになった。

 過去20年間にわたり、白熱(ハロゲン)電灯で照らされてきたナイアガラ・フォールズだが、1日からはエネルギー効率の高いLEDを用いた照明設備によって、様々な色にライトアップされるようになった。

 カナダ側のホースシュー滝を照らすタワーは、その真横にあるテーブル・ロック・センターに、アメリカ滝とブライダルベール滝については、対岸のカナダ側に設置されている。

 滝を管理するナイアガラ公園委員会によると、400万ドルの予算をかけたLED化により、使用電力を削減しつつ約2倍の明るさでライトアップすることを実現したという。また色の範囲も広がったほか、プログラムで光を自在に操ることも可能になった。

 なおナイアガラ・フォールズが最初にライトアップされたのは、1860年のこと。この時は航海用信号灯200個が用いられた。また電化されたのは、1879年。

 ライトアップのスケジュールは、月ごとに変わる。詳細は、ナイアガラ公園委員会のウェブサイトで確認できる(『Niagara』『Falls』『illumination』で検索)。

 

2016年12月8日 第50号

 ケベック州控訴裁判所は1日、ピットブルに関する同州モントリオール市の条例を制限するよう求めた訴えを退ける判決を下した。

 この訴えは、モントリオール市が9月に動物に関する条例を変更、ピットブルなど危険性のある動物を規制できるようにしたことに反対して起こされていたが、今回の判決により同市では、ピットブルの所有に関する制限が施行されることとなった。

 現在、同市内で飼われているピットブルの所有者は、12月中に登録を済ませる必要があるほか、口輪をはめること、短い綱につなぐこと、および大人が世話をすることが義務付けられる。

 しかし今年9月27日以降にモントリオール市で飼い始められたピットブルについては、市内での所有が認められなくなった。

 動物愛護協会モントリオール支部は、控訴審の判決に失望すると同時に、健康的で素行に問題のない犬たちの里親を市内で探すことができなくなったことを憂慮しており、この条例に反対し続けていくという声明を同日発表した。

 またかねてから条例に反対してきた同市議会議員のスターリング・ダウニーさんも、今回の判決でも条例の不備は変わらないし、犬による傷害事件も減らないだろうと指摘している。

 一方、条例賛成派は、犬種による規制は他の都市や州でも行われていることであり、重篤な傷害事件をできる限り減らすことがその目的だと主張している。デニス・コディーレ、モントリオール市長も、控訴審における勝訴を喜んでいるひとりだ。同氏は、ケベック州の別の裁判所でも数日前にピットブル規制を支持する判決が出されたことに触れ、危険性をはらんだ犬の所有を制限する必要性が合法的であることが認められたと、取材に答えていた。

 

2016年12月1日 第49号

 ジャスティン・トルドー首相は11月29日、注目のトランスマウンテン・パイプライン拡張計画について承認すると発表した。今年12月19日を期限としていた同拡張計画の発表だったが、他の2計画と共にこの日に発表された。

 トランスマウンテン・パイプライン拡張計画はキンダーモーガン社が手掛けるアルバータ州からブリティッシュ・コロンビア州バーナビーまでの現存するパイプラインに沿って拡張する事業費68億ドルをかけた計画。完成すれば、これまでの3倍の一日89万バレルのオイルサンドを輸送することになる。

 トルドー首相は、この日の記者会見で「カナダの天然資源がより環境に配慮した方法で海外市場に輸出可能とするのは、カナダ政府の義務だと思っている。これにより雇用を促進し、経済も発展する」と語った。

 ただ157項目の条件付きとなっている。「BC州沿岸に安全性が保障されなければ、自分が反対していた」と首相は語った。

 これに対し、BC州では「裏切られた」の声があがった。この事業は計画当初から反対が根強い。パイプライン沿いの先住民族をはじめ、環境保護活動家、メトロバンクーバーの関係住民、バーナビー市デレク・コリガン市長、バンクーバー市グレゴール・ロバートソン市長も強く反対している。

 この日、バンクーバー市内ではさっそく反対のデモ行進が行われた。反対派は政府のこの承認の判断について徹底的に戦う構えを見せている。

 この日にはその他、エンブリッジ社による2つのパイプライン建設計画についても発表された。一つはアルバータ州からBC州北西部沿岸までのノーザン・ゲートウェイ・パイプライン建設計画で、これは選挙前の公約通り承認しないと発表した。保守党前政権時代には承認に向けて着実に段階を踏んでいた、この大型パイプライン建設計画だったが、パイプラインがBC州の貴重な生態系が残る地域を通ることもあり、先住民族や環境活動家の反対が強く、トルドー首相自身も前からこのパイプライン建設計画には反対の意向を示していた。

 もう一つはアルバータ州からアメリカのウィスコンシン州までのライン3計画で、古くなった既存のパイプラインを取り換える計画。特に大きな議論となっていなかったこのパイプラインについては承認された。

 今回のオタワでの発表にはアルバータ州レイチェル・ノトリー州首相も駆けつけた。トルドー首相とツーショット写真の機会を作るなど全面協力の姿勢を示した。トルドー首相も記者会見の中で「ノトリー州首相のリーダーシップとアルバータ州の気候変動対策プランがなければ今回の(トランスマウンテン)プロジェクトの承認はできなかった」と称賛した。ノトリー州首相は長く暗いトンネルをようやく抜け光が差し始めたと会見で述べ、「これでようやく中国や他の市場にいい価格で(オイルを)輸出する機会が得られる」と、自由党政権の発表を歓迎した。

 一方でBC州クリスティ・クラーク州首相は記者会見すら開かなった。12月19日の期限より前倒しで発表され、意表を突かれた形となった。またBC州野党新民主党(NDP)ジョン・ホーガン党首も記者会見は予定されていなかった。

 

2016年12月1日 第49号

 首相事務所は11月28日、ジャスティン・トルドー首相がキューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長の葬儀には参列しないことを発表した。

 11月25日に死去したカストロ前議長に対し、トルドー首相は26日、「優れたリーダー」だったと表現し、「キューバ最長の議長」と死を悼む表現を使った。

 しかしカナダ国内では、キューバ国民を長年苦しめた独裁者に対して、この表現は不適切との批判が噴出。フランス語圏会議に出席のためアフリカのマダガスカルを訪問中だったトルドー首相は27日の記者会見で、カストロ前議長が独裁者だと思うかと聞かれ「思う」と答え、前日のコメントについては「彼の死に際し、カナダ国民とキューバ国民の深いつながりを伝えたつもりだった」と答えた。

 カナダとキューバの関係は、ピエール・トルドー元首相時代に、G7(主要先進7カ国)やNATO(北大西洋条約機構)諸国の首脳としては初めてトルドー元首相が1976年にキューバを訪問しカストロ前議長と会談。2000年トルドー元首相が死去した時にはカストロ前議長はモントリオールでの葬儀に参列した。

 トルドー首相は会見で「父は(前議長を)友人と呼んでいたことを誇りに思っていたと思う」とも語った。

 首相事務所は葬儀欠席の理由を、スケジュールの調整が難しいためと説明した。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。