2018年3月15日 第11号

 オンタリオ州トロント市の北、人口33万人ほどのマーカム市の病院で、出産直後の女性が死亡したほか、他の産婦人科の患者も病気を発症、院内感染が疑われている。

 2月10日に死亡したのは、同市に住むアイシャ・リアズさん(24歳)。リアズさんは2月7日に男の子を出産したが、予定より3〜4週間の早産だったため、新生児の様子をモニターするため病院にとどまっていたと、友人のカリーダ・ナシリさんは取材に話している。

 出産直後は母子ともに健康だったものの、2月10日昼頃、リアズさんの様態が急変した。急性の敗血症性ショック症状に見舞われて多臓器不全を起こし、それからわずか2〜3時間で死亡した。何らかの原因で彼女がA群溶血性レンサ球菌に感染したことが原因とみられているが、容態急変まで病院関係者はそのことに気がついていなかった。

 リアズさんの家族は、出産時の病院の対応にいくつかの疑問点があると指摘している。例えば分娩室で出産に立ち会ったのは看護師だけで医師の監督はなかったため、感染の疑いを見逃して通常分娩として扱われた可能性を疑っている。また容態急変後に運び込まれた集中治療室にはたった一人の担当医師しかいなかったという。この件に関して病院側は、患者の情報保護のため、出産時に医師が立ち会ったかどうかについては明らかにできないとしている。

 しかしリアズさんの死亡直後、A群溶血性レンサ球菌感染の可能性が明らかになると、病院は内部調査と、感染拡大予防措置(器具の追加洗浄や外来者数制限など)開始した。

 リアズさんの突然の死に際し、友人らは残された家族のためにオンライン上の寄付サイトを立ち上げた。同サイトによると、トロント大学を卒業したリアズさんは、トロント市内のサニーブルック総合病院でボランティアをしていたほか、近所の子供たちの家庭教師をするなど、積極的な性格だった。また正義感が強く、世界中の女性の地位向上を願っていた。

 オンライン寄付は2万5000ドルを目標としている。集まった額の10パーセントは、パキスタンの上水道が完備されていない地域での井戸掘削事業に送られる。

 

 

2018年3月15日 第11号

 ブリティッシュ・コロンビア州ローワーメインランドを走る公共交通機関、スカイトレインの車両が増強される。

 同州リッチモンド市とバンクーバー市をつなぐカナダラインでは、2020年までに24両(12編成)が追加され、30パーセントの輸送量増となる。リッチモンド市のマルコム・ブローディ市長は、効率的な公共交通機関が都市の開発・再開発に大きな影響を与えるとして、今回の決定を歓迎するコメントを発表している。

 またミレニアム・ラインとエキスポ・ラインにも28両が2019年までに、さらに追加の28両が2019年末までに配備される予定で、これは当初計画されていたものより3年前倒しとなる。これにより、ピーク時間の輸送量が毎時8200人増えるという。

 車両追加にかかる費用は、カナダラインが8800万ドル、ミレニアムおよびエキスポ・ラインが2億1000万ドルとなり、公共交通機関整備基金から調達される。

 

 

2018年3月15日 第11号

 アルバータ州エドモントン市の広場で弾いたピアノの動画がもとで話題となったホームレスの男性が2日、市内の支援ホームで静かに息を引き取った。

 路上のピアノマンと呼ばれ、その動画が1100万回以上再生されたのは、アレキサンダー先住民のライアン・アーカンさん(享年46歳)。8歳の時に里親家族に引き取られたアーカンさんは、その家のベースメントで初めてピアノに触れた。すっかりピアノに魅了されたアーカンさんは、時間があればいつでもピアノを弾いていたという。彼と仲の良かったいとこのカリー・ロックウッドさんは、当時のアーカンさんはどもり気味だったが、歌う時にはそんなことがなかったと、当時を振り返る。また別のいとこクリス・イエローバードさんは、アーカンさんは音楽的才能に恵まれた家系に生まれたが、その音楽に対する情熱は子供のころから少しも衰えたことがなかったと話している。

 しかしアーカンさんは20代でアルコール依存症となり、刑務所、病院、そして路上の行き来を繰り返す生活となった。

 2014年、そんなアーカンさんが同市中心部のチャーチル広場で自作の曲をピアノで弾いていたところ、その美しさに感動したロズリン・ポラードさんがその演奏を動画に収め、本人の許可を得てインターネット上で公開した。以来、アーカンさんは路上のピアニストとして一躍有名となった。

 このことがきっかけとなり、アーカンさんは市中心部の支援ホーム、アンブローズ・プレースに入居することができた。またポラードさんが動画を通じて募った寄付金でピアノを購入、彼にプレゼントした。「これで好きな時にピアノが弾けるし、作曲もできる。これがやりたかったことだ」と、アーカンさんは自分のピアノを前に語っていた。

 しかしそんな環境の変化も、彼のアルコール依存症や精神疾患を変えることはできなかった。彼は相変わらず、支援ホームと路上を行き来する生活に戻った。彼は時々聖ジョセフ大聖堂を訪れていたが、同教会のクリス・シュミット准牧師によると、アーカンさんは教会では音楽ではなく、聖書について話をしたがっていたという。また彼が聖書について博識なことに准牧師は感心させられ、「酔っていない時の彼が見せた信仰心は、私を謙虚にさせた」と語っている。しかし酔って教会業務を妨害することが重なり、ついには出入り禁止となってしまう。

 そんな彼に、更生プログラムを提供してきたボイル・ストリート・コミュニティ・サービスのジャード・トゥカチャックさんは、彼は不屈の精神を持っていたと語っている。トラウマや痛み、進行性の機能障害や精神疾患など、多くの問題からアルコールや薬物に依存するようになったが、更生プログラムを諦めることはなかったと語っている。

 支援ホームで静かに息を引き取ったアーカンさん。彼を知る人は皆、音楽抜きには彼のことを語れないと話している。「それは単にピアノがうまいとかということではなく、彼の演奏から伝わってくる優しさによるもの。彼の演奏を聞けば、音楽が彼にとってどれだけの意味を持ち、また彼がどれだけ音楽と共に生きてきたかがわかる」と、トゥカチャックさんは取材に語っていた。

 

 

2018年3月15日 第11号

 ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市で10日、拡張工事が予定されているトランスマウンテン・パイプラインに反対するデモが行われた。地元のスレイ・ワトゥース先住民グループが企画したこのデモには、警察発表で5千人が参加。パイプラインと、その工事を行うキンダーモーガン社に反対するプラカードを掲げたり、ドラムをたたいたり、歌を歌ったりして、抗議の意思を表していた。

 これに合わせ、既存のパイプラインの積み出しターミナルがあるバーナビー市フォレスト・グローブ公園では、同先住民族の有志が工事の動きを見張る監視小屋を建てている。先住民の伝統的住居であるシーシェルト・ロングハウスのスタイルで建てられるこの小屋は、広さが20フィート四方で一本の米ヒバから切り出された建材で作られると、先住民の代表のウィル・ジョージさんは取材に話している。

 また、既存のパイプラインは60年前に先住民族の了承なしに敷設されたが、今回はそうはいかない、タンカーの往来を倍にするパイプラインの拡張には断固反対し、事態が解決するまでこの小屋に居続けるつもりだと語っている。

 小屋が建てられたすぐそばにある、キンダーモーガン社が所有する土地を囲うフェンスには、先日BC州最高裁が出した、キンダーモーガン社の工事を妨害する活動を禁止する暫定命令の写しが張られていた。しかし同地区選出の連邦議会議員ケネディ・スチュワートさんは、こうしたデモ活動が、キンダーモーガン社とジャスティン・トルドー首相の考えを変えさせることになるだろうと、取材に語っていた。

 「連邦政府はパイプラインに反対している勢力を『パイプライン過激派』と称しているが、今日のデモを見てもわかるように、皆ごく一般の人々。これこそが、われわれが最終的に勝利する理由だ」とスチュワートさん。

 監視小屋の建設現場を含め、デモ中は警察官とのトラブルもなく、逮捕者は出なかった。主催者は参加者に対し、抗議活動は平和的に行われるべきだが、今後はパイプライン建設を阻止するためならば逮捕されることもいとわないでほしいと、決意を求めていた。

 

 

2018年3月8日 第10号

 ジャスティン・トルドー首相は約1週間のインド公式訪問を終え、2月27日に国会に出席した。同日には予算案が発表されたが、国会ではインド公式訪問でのテロリスト招待の事情について野党の追及が続いた。

 今回の件は、2月22日にカナダ政府主催で開催された夕食会に、1980年代にブリティッシュ・コロンビア州でインドの閣僚を襲ったテロリストが招待されていたというもの。その人物はジャスパル・アトワル氏。夕食会ではトルドー夫人や同席した閣僚らが一緒に写真に収まっていることも分かった。

 この事実はインドのメディアからの指摘で明らかになった。政府はどのような経緯でこういうことになったのか調査すると現地で語り、その時点では、カナダ首相事務所がこの人物を招待することはあり得ないと語っていた。その後、インド訪問に同行した国会議員の一人、サレーセンター選挙区のランディープ・サライ議員が、アトワル氏の名前を招待客リストに加えていたことが分かった。

 しかし23日になって、カナダの高官から、アトワル氏の出席はインド政府によるものとの情報がメディアに流された。インド政府はこれに反論している。

 そして27日、帰国後初めて国会に姿を現したトルドー首相は、国会の答弁でこの件について追及されると、アトワル氏が招待されていた事実がメディアから指摘された件について、カナダ高官からメディアへのリークがあったことを認め、この高官の行為を信用すると語った。

 さらにこの日、アトワル氏の出席に関わっていたとされる連邦自由党サライ議員は役職を辞任した。

 この件については今後も野党から厳しい追及を受けることが予想されている。

 インド閣僚暗殺未遂事件とは、1986年バンクーバーアイランドでカナダを訪問中だったインドの閣僚シデュー氏が襲われた事件。またアトワル氏は1985年には、後にブリティッシュ・コロンビア州首相となったウサン・ドサージュ氏も襲っている。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。