2018年6月7日 第23号

 妊娠週数が増すごとに、子宮は次第に容積を増します。赤ちゃんの発育・成長に支障のないように、快適な環境を提供するためです。ママのお腹は赤ちゃんにとって、自由に動けて、温かく、ママの心臓の音やママの話し声も聞こえるとても安心できる場所なのです。

 妊娠中期に差し掛かってくると、ママの身体は赤ちゃんを迎えるための準備に取り掛かります。胎盤から出るホルモンが乳腺の発達を促し、乳房は体積を増してきます。いわゆる妊婦さんらしい体型に変化します。同時に妊婦さんが一層美しく、輝きを増してくる時期でもあります。このように、目に見える体型の変化は劇的ですが、妊娠の経過が進むごとに、外見的な身体の変化ばかりでなく、目に見えないママの身体の中にも様々な変化が生じてきます。勿論、ママのお腹で赤ちゃんが大きくなるための目的にかなった変化なのですが、時には病的と言わざるをえない変化が見られることが有ります。

 今回は比較的頻度が高い貧血症を取り上げます。妊娠によって生じる生理的変化でもありますが、血漿量(血液の液体成分)が増え血球量(血液の固体成分)の増加を上回るため(水血症)見かけ上の貧血症がみられます。しかし、中には妊娠の初期から貧血症を示す方もみられ、加えて、妊娠による水血症を来しますと、貧血症は一層深刻な問題となります。妊娠に合併する貧血症の大部分は鉄欠乏性貧血です。必要であれば鉄剤やビタミン剤など、妊婦さんに適した薬剤が処方されます。赤ちゃんを育て、はぐくむ環境は、ぜひとも整え、赤ちゃんに良い状態を提供したいものです。

 一方、貧血症に対する漢方療法を考えてみたいと思います。その前に簡単に東洋医学について見てみたいと思います。東洋医学には漢方医学、和漢診療学、中医学等、ほかにも多くの学派が有り、治療法に於いても多くの方法が有り、生薬を用いる方法や鍼灸治療、指圧やマッサージなど多岐に及びます。ここでは、流派に固執せず、四診(ししん)と弁証(べんしょう)を基本として診断、治療法について話を進めて参ります。少し分かり難いところも有りますが、頑張って、我慢して読んでみて下さい!!

 四診(ししん)と弁証(べんしょう):病状を知るための診察方法と病態の理論的解釈

●四診(ししん):望診(ぼうしん)・聞診(ぶんしん)・問診(もんしん)・切診(せつしん)。計4つの診察法を総称して四診と呼びます。

望診:顔色、皮膚のつや、舌、(舌質(ぜつしつ)・舌苔(ぜつたい))など、視る事により得られる所見

聞診:呼吸音、心音、腸雑音、声など、聴くことにより得られる所見

問診:経過や病歴など、質問することによって得られる所見

切診:触診に加えて脈診によって得られる所見

●弁証(べんしょう):四診(ししん)によって得られた所見から診断を得るための理論的な説明

 とても分かりにくいと思いますが、もう少し頑張って読んでみて下さい!!

 本題に戻りますが、貧血症に関してですが、弁証では気血弁証(きけつべんしょう)で血虚症(けっきょしょう)と診断されますので、補血剤(ほけつざい)の投与と考えがちですが、そのうちのどれが最適なのか選択しなければなりません。そこで必要となるのが、舌診と脈診になります。舌質(ぜつしつ)や舌苔(ぜつたい)の所見、脈の所見によっては、補血剤の与の前に補気剤(ほきざい)で機能の改善を図り回復した後に補血剤が処方されたり、あるいは、気血双補剤(きけつそうほざい)も適応されると思います(舌や脈の所見については、いずれかの機会に紹介致します)。あるいは、西洋医学的な治療と東洋医学的な治療が組み合わされて(東西結合医学)、より効果的な治療が行われる可能性も秘めています。

 ママの治療が進むほどに、赤ちゃんの可愛らしい呟きがママにも届きそうですね。“ママ、有難う。もっと、もっと大きくなって、はやく、ママに会いたいな”そんな赤ちゃんのつぶやきが現実になる日が、もうすぐそこまで来ていますよ!!

 


杉原 義信(すぎはら よしのぶ)

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。 妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。

 

 

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