2019年5月2日 第18号

 今回は、冷え性と津液(水)との関連を見て行きたいと思います。その前に、前回の気血津液の概念を簡単に見てみます。気・血・津液は密接に関連しながら、身体の維持・恒常に働いています。気は目には見えないながら、血や津液を過不足なく、滑らかに、のびやかに、身体の隅々まで行き渡らせる原動力としての役割を果たしています。冷え性シリーズ①〜⑤では漢方医学に用いられる「独特な用語」が数多く使われ、ある意味では「理解の妨げ」になったかもしれません。基本的な言葉や定義などは、それ以外に表現する事が出来ず、やむを得ず「独特な用語」を用いました。今回の冷え性シリーズ⑤では、「津液・水」との関連で冷え性を紹介し、服装や冷房等による冷え性を助長する可能性にも触れたいと思います。

 身体に取り込んだ水分は、身体が必要としない余剰分は、体外に排泄されます。しかし、飲食物の摂取、代謝、排泄に関わる臓器(東洋医学でいう、脾、肺、腎)に、機能失調が生じていれば、水液代謝に障害が起き、水液は体外に排泄されず、体内(特に皮下)に蓄積されます。これらは「痰飲(たんいん)」と呼ばれ、水分が長期間停滞して、水分が粘張性を帯びた状態を示します。痰飲は皮下、体表に存在するため、痰飲が身体を覆ってしまい熱を遮断してしまいます。その結果、寒い時には容易に身体が冷えてしまい、「冷え」を感じます。反対に暑い季節等には、身体の熱を容易に逃がす事ができず、他の人に比べて、「暑く」感じてしまうのです。このように、水が変化して病理的な産物である「痰飲」が蓄積してしまうと、極端な程に「暑がり」だったり「寒がり」だったりします。これは、暑がりで寒がりと言う人で、とても周りの人達が理解し得ない程に苦痛なのです。生活を改める事は並大抵な事では有りませんが、寒いから温める、暑いから冷やすのでは何も解決の糸口にはなりません。痰飲の主な原因は、過食と多飲(慢性疾患や糖尿病、代謝性疾患、内分泌疾患などは除外)ですので、摂食時間や飲食の習慣を正す必要が有ります。空腹感を待たずに、摂食したり(しかも過量、高カロリー)、その上、回数が多く(間食・夜食の例が多い)、しかも運動量が少なく、ストレスが多い環境に有る方などは一度、ご自分の生活習慣を見直すことも良い機会かと思います。

 また、良く見られるのが水分の過量摂取です。咽が乾いていないにも関わらず、常日頃から、「習慣化」されているかのように、飲水する方を見かけます。暑い時期や乾燥している時は、勿論、当然摂取しなければいけません。しかし、習慣的な水分の過量摂取は脾(消化管)の負担になるばかりでなく、肺や腎(共に東洋医学での意味です)にも、影響を与えてしまいます。明日と言わず今日からでも生活習慣を見直してみませんか?!

 もう一つだけ、これも習慣に属すことかとも思いますが、身体を日常的に冷やしてしまう服装をよく見かけます。とても軽快で、美しく、躍動感あふれて、素敵です。きっと、ご本人も習慣ですので、決して薄着で「自分で産生した熱を逃がしてしまった結果冷えに苦しんでいる」とは思わないものです。これが習慣というものです。最近では、必要以上に冷房を効かせ、温度設定を低くして、冷え性を助長している方も居られます。これらも、明日と言わず今日からでも、生活習慣を変えてみませんか?

 身体が異常に冷える方(冷え性)は程度の差こそあれ、多かれ少なかれ、生活空間の改善で症状が改善されますが、時には重大な疾患が隠されている事もありますので、重度の冷えを感じたり、生活に支障を来すなど、異常を感じた時は医療機関の受診は申す迄も有りませんね!!

 


杉原 義信(すぎはら よしのぶ)

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。 妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。