2019年8月1日 第31号

 妊娠中から乳房の緊満や軽度の疼痛を感じた方は多いと思います。時には妊娠の中期頃に、僅かながらでも乳汁の分泌が見られる方も居られたと思います。(初期からの方々も居られます)。妊娠中に乳汁を分泌するホルモン(プロラクチン:PRL)が増えて、ママの身体は赤ちゃんが生まれてくる準備が始まっているのです。でも赤ちゃんがお腹の中に居る間は乳汁を分泌する必要がないので、胎盤から出るホルモンが乳汁分泌をさせないように抑制的に働いているのです。とても、巧みに調節されている事がお分かり頂けると思います。でも、胎盤は分娩が終了するまでの間だけの役割です。分娩時、赤ちゃんが産まれた後それ程時間を待たずに胎盤が娩出されます(殆どの場合10分以内で、多くの場合は5分以内程度)。赤ちゃんを育てはぐくみ、ママとの接点として重要な役割を果たした胎盤は役目を終え、娩出されます。従って、胎盤から出ていたホルモンの濃度が急激に減って来るので、阻害因子が減少する事によって、PRLが本来の役割を発揮し始めます。濃い黄色調の初乳(赤ちゃんへの免疫物質が豊富に含まれています)から、移行乳、成乳へと変化します(色調や成分の変化によって呼び名が変わるだけですので、気になさらず読み続けて下さい)。赤ちゃんが、力強く飲み始めますと、乳汁の分泌を更に刺激すると同時に、子宮の復古を促進します。

 ママのお腹の中で、暖かな愛情と思いやりの中で育ててくれた赤ちゃんからママヘの恩返しの様に思えます。 “育ててくれて有難う! もっと、もっと、たくさんオッパイ飲んで、大きくなるんだ! だけど、チョットだけ、お腹が痛くなるかもしれないよ! ボクの居たお部屋(子宮)を、早く元通りの大きさにしなくっちゃね!” とママに甘えながら、精一杯の恩返しをしていると思いませんか? 赤ちゃんによって、乳頭が刺激され、その刺激が脳に伝達され、PRLの分泌を増やすと同時に子宮を収縮させるホルモンが分泌されてきます(チョット複雑ですね)。まさに、“赤ちゃんの恩返し” ですね。赤ちゃんの哺乳量は日増しに増えてゆきますが、時としては、母乳の分泌量が追い付かないことが有ります。 “どうしよう!どうしよう!” と焦ることは有りません。不安になればなるほど、かえって分泌量が減ってしまうことすら有るのです。そんな時、医療関係者の方々は、優しく微笑み返してくれますよ!

 このような産褥経過を辿る方は決して少なくないのですから!様々な方法で乳汁の分泌が促進するように、工夫してくれます。悩む事よりも、専門家にお願いすることも選択肢の一つですね! 温かく迎えて下さいますよ!!

 一方、これらを、東洋医学的に見てみましょう。乳汁を母体内に溜まった “異物” と捉えてみましょう。何とか“溜まっている異物”を分泌して“外”へ出してしまえば、再び、乳房内に乳汁が蓄積されてくると考えてみましょう。身体の表面に近い部分を“表(ひょう)”と表現し、他方内部の部分(腸、消化管など)を“裏(り)”と表現します。このように見てゆきますと、乳汁分泌は“表症(ひょうしょう)を解除する方剤”(解表剤:げひょうざい)を用いる事によって道が開けてきます。この解表剤の中にも数多くの薬剤がありますので、貴女に適した方剤が選ばれるばかりでなく、微量では有るものの、母乳移行もありますので、母児双方を懸案した上で処方が決定される事は、言うまでも有りません。ここでも、処方を決定するにあたっては、漢方特有な方法で診察(四診(ししん))と、診断(弁証(べんしょう))がなされます。

 …優しいママに抱かれ、温かい母乳を口いっぱいに含み、お腹がいっぱいになると、安心して、気持ちよさそうに眠りに就く赤ちゃん!…焦ることなく、気持ちを楽にして、頑張り過ぎることなく、ゆったりとした育児を心がけたいものですね。

 


杉原 義信(すぎはら よしのぶ)

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。 妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。

 

 

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