2019年9月5日 第36号

 職場での長いデスクワークから家に帰っても、テレビを観たり、スマートフォンを使ったり。特に現代人は、1日の約6割を座って過ごすとされています。中でも日本人が座って過ごす時間は世界でも上位を占めるらしいのです。そして、この「座りすぎ」が、健康に悪い影響を及ぼす可能性があるという研究結果が出ています。

 この研究は、1日11時間以上座っている人は、4時間未満の人に比べ、死亡リスクが40%高まるというもので、2012年に調査を行ったオーストラリアのシドニー大学などが発表しました。この研究に先駆け、2011年にWHO(世界保健機関)も、「座って動かない生活は、肥満や糖尿病、高血圧、脳血管疾患、認知症などを誘発し、世界で年間200万人の死因になっている」というデータを公表しています。また、日本でも、明治安田厚生事業団体力医学研究所の、2018年の調査によると、1日9時間以上座っている人は、7時間未満の人と比べ、糖尿病を罹患するリスクが2・5倍高くなるという結果が出ています。

 人の体内を循環する血液は、5分座っていると血流速度が急速に下がり、30分座り続けると、その速度は70%も低下するそうです。血流にのって循環することで、酸素や栄養素が体の隅々まで行き渡り、老廃物が回収されます。しかし、座ったままで筋肉が動かないと、足の血流が悪くなり、血液中に老廃物が増えて血液の濃度が濃くなります。

 飛行機で移動する際に、長時間同じ姿勢でいる時などに起きる「肺血栓塞栓症」。飛行機のエコノミークラスの狭い座席で長時間座り、急に立ち上がった時などに発症することが多いことから、「エコノミークラス症候群」の別名もあります。同じように、 座ったままあまり動かない生活習慣が長くなると、血管が詰まりやすくなり、高血圧や動脈硬化が進み、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞のリスクが高まります。さらに、座ったままの状態が続くと、下半身の筋肉がほとんど稼働せず、刺激が少ないため、ブドウ糖の吸収を促すインスリンの効き目が落ちる「インスリン抵抗性」が起こります。その結果、血糖値が上昇することにより、糖尿病になるリスクが高まります。

 また、「座りすぎ」により、脳の記憶形成に欠かせない「内側側頭葉」と「小領域」の皮質が薄くなることで、中年期以降に認知機能が低下することや、認知症を発症する前兆である可能性も考えられることも指摘されています。これは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校にある、セメル神経科学人間行動研究所の研究によるもので、日常的な運動量および過去1週間の1日当たりの平均座位時間と、MRI検査の解析から、座った姿勢で過ごす時間が長いほど、上記の脳の部分が薄いという結果に基づいています。運動量との関連は特に認められなかったものの、座りながら何をしているかにより、影響に差が出る可能性が否定できないことにも言及しています。ただテレビや映画を観るより、座りながら「認知的な活動」をすることが、脳にプラスの影響を与えるようなのです。クロスワードや書き物、仕事上の書類作成、更にはコンピュータゲームも、「認知的な活動」の範疇に含まれます。「座りすぎ」は、 肥満、がん、抑鬱や心理的ストレスに繋がるとも言われています。

 30分以上座っていると代謝が落ちてくるため、一定時間ごとに活動を中断し、椅子から立ち上がり、数分でも体を動かしたり歩いたり、こまめに動くことが大切です。かく言う私も、コンピューターの前に座って作業をしています。日頃から、 時々、席を立って体を動かすようにしていますが、作業が乗ってくるとどうしても時間を忘れてしまいます。アラームをセットし、1時間に5分のブレイクを実行しようと思います。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

 

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