2020年4月30日 第14号

不要不急の外出を控えるよう通達が出てから暫く経ちますが、いかがお過ごしですか?

 WHO(世界保健機関)の新型コロナウイルス(COVIDー19)パンデミック宣言から、すでに 1カ月以上。不要不急の外出の自粛、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)、大きなイベントの中止など、思いもよらなかった状況が続いています。

 パンデミック宣言が出される前から、世間は既にパニックモード。まず、スーパーマーケットの商品棚からトイレットペーパーが消えました。その後、缶詰やインスタント食品などが品薄になり、 「パニック買い」を抑制するために、保存のきく物だけでなく、生鮮食料品にも購入個数の制限がつき始めました。手指消毒剤やマスクに至っては、「パニック買い」による買い占めだけでなく、その後、禁止になりましたが、消費者の不安につけ込んだ、オークションサイトでの高額転売目的の買い占めも横行しました。

 同ウイルスの感染拡大を抑えるため、仕事の仕方も変わりました。職種によりますが、テレワークやリモートワークによる自宅勤務、対面会議のかわりにオンライン会議をするなど、「三つの密」(密閉、密集、密接) を避けることで、感染症患者に直接接触する、あるいは、マスクなどの個人用保護具を装着せずに感染症患者のすぐそばで会話をするなどの、「濃厚接触」を最小限に食い止める努力がなされています。

 感染拡大は、介護にも影響しています。通常、病院、介護施設や長期療養施設では、面会制限があっても、家族の訪問は許されます。しかし現在、家族も訪問ができません。訪問が日課になっていた家族にとって、急に会いに行けなくなり、心配が募ります。食事の介助のために訪問していた場合、一体、誰が食事の面倒をみてくれるのでしょう。認知症の診断を受けている場合は、家族が急に面会できなくなり、環境が変わることで、脳への刺激が少なくなることから、認知機能が低下し、症状が急に進む可能性が考えられます。家族にしかわからない変化が見落とされ、生命の危険に晒されることもありえます。

 入居者だけでなく、介護従事者にも感染者が出ている介護施設や長期療養施設もあり、入居している家族の感染を懸念して、家族を一時的に退所させるケースも出ています。しかし、介護度が高く、在宅介護が難しい場合は、心配でも施設に任せるしかありません。一時的に引き取ることができても、慣れない在宅介護に、介護する家族は身体的、精神的な負担を強いられます。もともと在宅介護の場合でも、訪問看護スタッフや介護ヘルパーなどが、感染者と「濃厚接触」した疑いがあるとわかった時点で、スタッフ全員が「自己隔離」をする必要がでてきます。その間、介護の全てが同居する家族の肩に重くのしかかることになります。もし家族が感染すれば、介護の必要な人も「濃厚接触者」とされ、介護サービスを受けられなくなり、最悪の場合は、ひとり取り残されないとも限りません。

 元気な高齢者でも、特に一人暮らしの場合は、外出自粛は社会からの孤立に繋がります。生活必需品を購入する必要はありますが、頻繁に買い物に出かけることは感染の機会を増やします。電話注文だけでなく、オンラインで買い物をする方法はありますが、普段パソコンを使わなければ利用は無理。誰かに買い物を頼まなくてはなりません。習い事に通っていた近くのコミュニティー・センターも、足繁く本を借りに行っていた図書館も、当分は閉鎖。また、感染を恐れるあまり家にこもりすぎ、「生活不活発(動かないこと)」による健康への影響も心配です。一日中、テレビを見る。ぼんやり過ごし、食事をするのも面倒。誰かと話すことも極端に少ない。このような状態は、体や脳の働きの低下につながります。歩くことや身の回りのことなど、生活動作が行いにくくなったり、疲れやすくなったりし、フレイル(虚弱)が進みます。フレイルが進むと、体の回復力や抵抗力が低下し、感染症も重症化しやすくなります。介護が必要になるかもしれません。脳の働きが極端に低下し、新たに認知症を発症する可能性も考えられます。

 季節性インフルエンザより感染力が高く、無症状のケースも報告されている新型コロナウイルス。今、私たちにできることは、自分自身の感染を防ぎ、もし罹っていても周りの人にうつさないようにすることです。予防の最善策は、石鹸を使った流水での手洗い。

『We are all in this together』

 一人ひとりができることをし、現状を乗り越えましょう。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

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