2019年11月7日 第45号

 最近の韓国は、なぜに反日的なのかとつくづく考えさせられる。

 日本がデフレ経済で給料や物価が下がってゆき、新規雇用は臨時採用のフリーターというようになっていった当時、カナダに来た若い人に聞けば、フリーターの方が時間給は高いという、その代わりに会社のベネフィットの老齢年金、健康保険とか終身雇用の保証のない臨時雇用の時代であったから海外に行くには会社を辞めればいいだけのことだから、気楽だと若い方は話をしていた。

 日本がデフレ経済でじりじりと低迷してゆく中で、韓国は家電産業などが良かったのか、給料は右肩上がりであったようである。当然、いつの間にか韓国の方が日本より給料が高くなるという現象も見られるようになったという。一説には韓国の大企業の資本の比率は、半分以上が外国資本なので、それを下げることをできなかったともいう。

 そんな中で中国の衣類と家電産業が大きく成長してゆけば、韓国の経済にもかげりがでてくる。すると、にわかに反日的ムードが高くなってきたというのが小生の印象である。一つの仮説として、今の韓国政権はドイツの東西合併のように、南北が合併することにより経済的活路を見出そうとしているのかもしれない。あるいは、一説によれば、千八百兆円の投資マネーがあるという中国を期待しているのやもしれない。当然、日本より中国に希望を見出そうとしているように見えるのは、小生の偏見であろうか?

 過日再読をしていた『この国のはじまりについて』の中に、司馬さんとライシャワー元米国駐日大使の対談があり、それに次のようにある。

 「司馬ーその後の朝鮮半島の歴史で一つの特徴は、李朝が商業を禁止したことだと思うのです。この重要な事実を最近になるまで気がつきませんでした。李朝というと、世界が貿易時代にはいった十四世紀に王朝をひらいて、五百年ばかりつづいた政権ですが、貨幣経済をおさえつづけてきた。あれだけの文明国、文化の進んだ国が、わざと不完全になった。その時まで貨幣経済は小額のものでしかなく、流通経済がないにひとしかった。これは朝鮮人の政治、社会意識や文化を非常に特殊なものにすることになったろうと思うのです。と同時に、物の認識がイデオロギシュになったといいますか、これは悪口じゃないんですが、朝鮮人は観念が先行する。現実の評価よりも、あるいは現実に諸価値があるというよりも、むしろ正義のほうが先行する。(中略)それはきっと、李朝が貨幣経済をなくしたところに、日本は室町以後の貨幣経済が非常に盛んになった。日本と朝鮮の分かれ目がそこにあるとおもうのです。」

 「ライシャワー ー(前略)これはまた先ほど司馬さんがいみじくもご指摘になりましたように朝鮮半島というのは、中国にくらべても、特に貿易とか経済という面において非常に遅れてしまった。それは、おっしゃるように、朝鮮半島が儒教の影響を濃密に受けて、イデオロギーとしての儒教を受け入れたということに理由があっただろうと思います。儒教というのはイデオロギーとしては非常に反商業主義ですし、経済などということに関わり合いのあることは一切これを拒否するというような姿勢が強く、そのことが、朝鮮半島の経済という面における遅れであったように私も考えるわけです。(中略)十九世紀に朝鮮半島が他の世界との関わり合いを持つ際、数世紀も時代遅れであったことの原因になったと思うのです。ですからわたしは、イデオロギーというものは恐ろしいなあと思うわけです。ー要するに朝鮮半島の悲劇というのは、あまりにも儒教に忠実であった、中国以上にそうであったと思います。」 1972年頃春に旅人の小生はアメリカのシアトルにあるYMCAの宿舎で韓国の中年の方とお会いしたことがある。話を聞けば、韓国製の服の生地を売るためにアメリカに来ていると流暢な日本語で話をしてくれたのをおもいだす。かつて、日本が通ってきた繊維貿易の道を韓国が走り、その後中国が走り、やがては東南アジアが同じ道を歩んでゆくかもしれない。安い服とか、家電、車などを買うことができるのはうれしいことでもあるが、そのことが、国と国の悲劇にならぬことを祈りたいものである。

 


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