2019年2月14日 第7号

 人生は、不思議なもので面白いものだと、壮春(青春の反語として筆者が考案)に思うことである。

 過日、本紙を読んでいたら、「青年の船」の同窓会に参加した僕のことが書かれてあり、少々驚いたのは、その方の娘さんが小生と同じような「世界青年の船」で、世界の国々を親善訪問されたという話である。

 今回、僕が参加した「青年の船」同窓会である神戸大会で、ホテルの部屋が同じであった友のT君(熊本県出身)も聞けば、「世界青年の船」に乗船されて、カナダに来たという話をしていた。その彼が「佐藤君のことを知っていたら、バンクーバーに寄港した時に連絡をしたのに」と残念がっていた。

 この娘さんと、同じ「世界青年の船」であったかは定かではないが、妙な巡りあわせだという気がした。

 このT君は、九州の某市の市長を二期されたというが、とにかく多忙で運動不足か、中年太りのメタボになり、最近は毎朝、駆け足で山登りをされて、今回は昔のようなスリムなスタイルであった。本人の話では、相当努力されたようである。  さて、もう一人の同室は、広島県出身で、当時は学校の先生をしておられたが、今は親の後を継ぎ、住職をしているという。彼は庭の管理も自分でされて、アジサイをいっぱい植えられ、その数は三千株とか?

 2018年夏にそのことが話題となり、地元紙に紹介されたという。

 ぼく達の中では、背も高くスラッとしていて一番いい男だけど、ボッと彼が言う、「実はな、ぼくは、子供もいるけど離婚したんだわ!」と。現在は、縁あって昔の同級生で医者をしていた彼女と暮らしているとのことであったが、ことのほか、昔のように明るく元気なので安心をしたのである。

 もう一人の友は、奥さんに先立たれて十数年、今回は最近、再婚される様子なのか、幾分若い女性と参加なので、別館に宿泊されているのを、ぼく達の部屋に呼び出して、ねほりはほりと彼に質問をするのである。  彼も、町会議員と某県の町村会議の副議長などを歴任されている極めて真面目な方なのであるが、皆で「奥さんを紹介せよ!」と詰め寄ると、翌日は奥さんと一緒に我々の前に現れた。

 同じ趣味のサークルで知りあったとか?

 ラブラブのお二人であった。この後、車をレントして、明石大橋を渡り、四国方面へ行くという話であった。

 ぼく達は、朝食の後に参加者全員で記念写真におさまり、この日は、多くは貸切バスで観光に行く予定であったが、年長のT君が「俺達は別行動するからー。」という訳で、電車に乗り神戸の街に出て、今回背骨の病気で参加できない、近県に住むO君と神戸駅で合流をして、まだ、夏の花が街角に綺麗にさいている港町を散策したのである。

 阪神・淡路大震災の時は、電気配線のショートによるのか、多くの火災が発生して救助活動も大変であった。僕の従弟も普段は、電気会社で仕事をしている人であるけれども、わが町の消防団員でもある。急遽、地元名古屋郊外の町から、神戸へ応援救済に高速道路を消防団の車を走らせるが、道が渋滞で「大変だった。」と、彼が話をしていたことが思い出されるが、今はそんな面影もなく綺麗な、オシャレな街であった。

 神戸近郊に住むO君は、ぼく達グループの世話役であるけれども、腰がやや曲がってしまい、今日はいささか無理なお願いをした気もした。今は、地方公務員を退職されているが、「北方領土返還」の理事などをされているというお話であった。

 50年の歳月が流れても、こうしてお互い顔を合わせれば遠い日の青春が、一瞬に戻ってくるような午後の港町。街で一番古くておいしいというコーヒー屋さんのコーヒーを飲みながら、遠い過去の日はゆっくりと流れてゆく。

 遠い過去を振り返りながら、ゆっくりと坂を下ってゆく人生もまた、いいものかもしれません。

 

 

 


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