2018年12月6日 第49号

 この頃体重は増えていないのに お腹周りが何となく気になりだして…ダイエットしなくちゃー…。なんて思っている人、結構多いのかも知れませんね!?

 でも、単にシェイプアップや体重を減らすことばかりに目を向けないで、チョッとだけ下腹部の病気の事も考えてみませんか?!下腹部に有って女性に最も関係が深い臓器といえば、卵巣が挙げられます。卵巣は子宮のすぐ脇に有って親指の頭ほどしかない小さな臓器ですが、その働きはとても大きく、女性ホルモンを産生する臓器であるばかりでなく、卵巣の中には卵子が蓄えられています。次の世代を担う大切な赤ちゃんの未来を担っているのです。でも、大切な臓器だからといって病気にならない!と言うわけには行かないのです。残念ですが、それ程大切な卵巣でも他の臓器と同じように、奇形、炎症、腫瘍…などに罹患することが有ります。今回は“沈黙の臓器”と呼ばれる卵巣のオデキ(卵巣腫瘍)について、一度考えて見ましょう。先ず大切な事は、卵巣のオデキ(腫瘍)は、腫瘍が有っても、殆ど症状が無く、相当大きくなってから初めて気がつく事が多いのです。それ程症状に乏しいという事です。ですから、下腹部が大きくなった様に感じた時、単純に“肥満”とかたずけることなく“卵巣腫瘍”と言う事もチョッとだけで結構ですから、頭の片隅に置いといて戴きたいのです! 貴女の健康を守るだけでなく、貴女を取り巻くご兄弟や(未来の)ご主人、更には未来を担い、未来を築く大切な赤ちゃんの為にも、早期の発見と早期治療はとても大切なことだと御気付き戴けた事と思います。でも、卵巣腫瘍って“癌”?と早合点しないで下さい。卵巣腫瘍には良性と悪性がある事はご承知でしょうがその殆どは良性と言われています(90%)。その中で腫瘍が袋状になった物を“嚢腫”と呼んでいます。この卵巣嚢腫の種類には、サラサラした水の様なものが溜まった腫瘍(奨液性嚢腫)や、少しネバネバした粘着性のものが溜まった腫瘍(ムチン性嚢腫あるいは粘液性嚢腫)や、脂肪・毛髪・歯などが溜まった腫瘍(類皮嚢腫)や、チョコレート嚢腫、などが多く見られます。どれも、ジワジワと大きくなって行くのに、症状が伴わないので “下っ腹が出てきた!”と思われても仕方ありませんね!

 でも、時には突然強烈な痛みを伴って、緊急手術を必要とする事があります。卵巣茎捻転と言われ卵巣が大きくなると、卵巣がねじれやすく(捻転)なってしまい、極端な場合、寝返りを打った時や、立ち上がったとき、普通に歩いていた時、バスに乗り遅れないように走った時…例を挙げればきりが有りませんが、特徴的なことは 何の兆しも無く、ある日突然、チョッとしたキッカケで発症する事があります。勿論、それ程頻繁に遭遇する事でもありませんので、ご心配戴く程のことでは有りませんが知識としてご紹介させて戴きます。年代別に見てみますと10 歳代から20 歳代にかけては類皮嚢腫の頻度が比較的高く、30 歳代から40 歳代はチョコレート嚢腫の頻度が高いと言われています。更年期や更年期以降にも卵巣腫瘍が診断されることも稀では有りません。良性腫瘍であれば貴重な卵巣をすべて切除しなければならない事はとても頻度が低いと思います。あなた自身は勿論の事ですが、ご主人、お子様、ご家族の為にも日頃の健康の管理には注意を払いたいものですね!

 子宮癌の検診や乳癌の検診は定期的にお受けになって居ると思いますが、少しでも卵巣の事が気になっていれば、貴女の主治医に御相談なさってみては如何でしょうか。医療者はどんな時でも貴女の健康の事を主眼に考えています。貴女が明るく輝く未来を歩んで行かれることを心から望んでいるのですから!

 


杉原 義信(すぎはら よしのぶ)

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。 妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。