2018年9月27日 第39号

 ブリティッシュ・コロンビア州で来月実施される地方選挙が23日から公式に始まった。州内の全市町村で一斉に実施される市町村長、議会議員選挙。通常は現役候補に混じって新人候補が少ない枠を狙う構造だが、今年は少し様相が違っている。

 メトロバンクーバーの現21市長のうち、10月20日の選挙で立候補を表明しているのは8人のみ。あとは全て引退を表明。来月には新市長が少なくとも13人は誕生する。

 特に混戦模様なのがバンクーバー市とサレー市。バンクーバー市はグレゴール・ロバートソン市長が今年になり不出馬を表明。2008年から同市長が率いる現在多数派のビジョン・バンクーバーの市議も次々と不出馬を表明した。ビジョンの市議で立候補するのは一人のみ。10人の市議のうちビジョン1人を含めて現役は4人のみ。6人が入れ替わることになる。

 現在、バンクーバー市長選に立候補しているのは21人、市議は71人。そのほとんどが新人で無所属となっている。

 バンクーバー市の選挙争点は何といっても住宅問題。高騰し続ける不動産への対策と、住宅不足解消が最優先課題として挙げられている。

 今月17日には市長候補による討論会も実施された。現在支持率でトップを走っているのは、元新民主党(NDP)連邦議員で無所属のケネディ・ストゥワート氏。それを追いかけるのが、NPA擁立のケン・シム氏、無所属のシャウナ・シルベスター氏、元保守党連邦議員で連立バンクーバーから出馬のワイ・ヨン氏、そしてイエス・バンクーバーからのヘクター・ブレムナー氏。

 誰が当選しても初当選となる。ストゥワート氏が当選すれば、1980年のマイク・ハーコート氏以来の無所属市長が誕生する。

 バンクーバー市に次ぐ巨大都市サレー市も大混戦となっている。一期限りで退く現役リンダ・ヘプナー市長の後任を狙って市長選に立候補しているのは8人、市議8議席には48人が立候補している。

 サレーでの選挙争点は新しく建設される予定の公共交通機関LRT(ライト・レール・トランジット)。現在バンクーバー市ウォーターフロント・ステーションからサレー市まで延びているキングジョージ・ステーションまでのスカイトレインを、その先へとつなぐ新しい形の公共交通機関となる。予算は16・5億ドルと試算され、連邦政府、BC州政府、サレー市、トランスリンクが資金を分担する。

 しかし市長立候補者は賛否が二分している。反対派はLRTの代わりにスカイトレインの延長が必要と主張している。

 毎回、選挙争点で最重要課題とされるのは市の安全だった。サレー市は銃犯罪や組織犯罪が多く発生する市として知られている。しかし今回はLRTの議論で盛り上がっている。

 

 

2018年9月27日 第39号

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバーで、語学留学のため滞在していた日本人女性の古川夏好(こがわなつみ)さん(30)が殺害された事件の裁判が24日、BC州最高裁判所で始まった。

 裁判の中で死体遺棄現場の状況などが明らかになっている。古川さんを殺害し、死体を放置したとして第2級殺人罪と死体遺棄罪に問われているのは、ウィリアム・ビクター・シュナイダー被告(51)。

 24日、25日に開かれた公判では、検察側が遺体発見の状況やシュナイダー被告が殺害を認める発言を家族にしていたことなどが明らかになった。

 古川さんは2016年9月8日から行方が分からなくなり12日に友人が警察に行方不明を報告した。バンクーバー市警は最後に古川さんの姿が写っていたビデオを公開し、行方を捜索。同年9月28日にバンクーバー市ダウンタウンの空き家で発見された女性の遺体が古川さんだと同30日に発表した。

 24日の裁判では発見された当時の状況の詳細が説明された。警察犬によって発見された遺体はスーツケースに入れられていたという。検察によるとすでに腐敗が進んでいたため、死亡原因は確定できなかったという。ただ外傷はなかったとしている。

 スーツケースが発見された当時、その周りにはビールの空き缶や皮ひも、黒いブーツなどが散乱していたと報告。ただ古川さんの衣類や携帯電話、所持品は見つかっていないと説明。さらにシュナイダー被告がその場にいたという物的証拠もないという。

 シュナイダー被告は9月8日に古川さんと一緒に歩いている様子がダウンタウンのハーバーセンターのセキュリティカメラに写っていた。警察はこの映像を公開。その後、遺体が発見された同日に同州バーノンにいるところを逮捕された。

 この時シュナイダー被告の居場所を警察に報告したのが被告の兄弟ウォーレン・シュナイダーさん。警察が公開した映像を見た被告の姪が父親に報告したという。ウォーレン・シュナイダーさんも今週、裁判で証言する予定になっている。証言内容には、被告が殺人を告白した事実が含まれると検察官は説明している。

 裁判は10月初旬まで続くとみられている。シュナイダー被告は無罪を主張している。

 

 

2018年9月27日 第39号

 ニューブランズウィック(NB)州で24日に実施された選挙は、進歩保守党(PC)が22議席で最多議席を獲得、それまで多数派与党だった自由党は21議席で第2党となった。その他、グリーン党と人民連盟(PA)が各3議席を獲得した。

 NB議会は25議席以上で過半数となる。今回は主要2党が過半数を取れなかったため、少数派政権となる。

 この少数派政権をどちらが取るかで現在、駆け引きが行われている。

 今回は第2党になった自由党のブライン・ガラント党首が、25日にジョセリン・ロイ-ヴィエヌー副総督に面会。前夜の選挙結果について話し合ったという。

 面会後に記者会見を開いたガラント党首は、副総督が議会で信任決議を受けるまでガラント党首が州首相を継続することを了承したと語った。

 しかし最多議席を獲得したPCブレイン・ヒグス党首は、副総督事務所に確認すると副総督はガラント党首が州首相を継続することを了承していないということだったと自身の記者会見で明らかにした。

 選挙は現在結果が僅差の選挙区で再集計が行われている。その結果が出るのが10月5日。副総督は、ガラント党首に議会で信任が得られるかを確かめ、最終結果が出た後さらに話し合いが必要と語ったと事務所側は説明している。

 ヒグス党首は最多議席を獲得したPCが政権を取るべきで、その準備はできていると語っている。ただ少数派政権であることは間違いなく、グリーン党、もしくはPAの協力が必要となる。

 ヒグス党首はすでにグリーン党デイビッド・クーン党首と話をしたことを明らかにし、できれば早いうちにPAクリス・オースティン党首と話をしたいと語った。PCヒグス党首の最大の課題はフランス語。ニューブランズウィック州はカナダで唯一英仏を公用語としている州。しかしヒグス党首はフランス語ができないため、フランス語圏の州民にも支持を得られる党を選ぶ必要性を示唆している。

 グリーン党クーン党首は、すでに自由党とPCと話したと語り、グリーン党の今後の方針についてはこれから考えると語った。

 今後は最終結果を待つことになる。自由党は議席数では第2党となったものの、得票数では37・8パーセントと最も多い。最多議席のPCは31・9パーセント。これを踏まえると、最終結果の後、自由党ガラント党首が議会を招集し、信任決議によって政権を決めることになるのではとみられている。

 

 

2018年9月27日 第39号

 連邦政府アマルジート・ソーヒ天然資源相は21日、トランスマウンテン・パイプライン拡張工事について、カナダエネルギー委員会(NEB)に22週以内に再調査した結果を発表するよう指示したと発表した。

 アルバータ州エドモントン近郊からブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビー市までの既存のオイルサンド輸送パイプラインを拡張するというトランスマウンテン計画については、2016年11月にカナダ自由党政権が承認した。しかしこの計画は、環境保護活動家や関係する先住民族、さらにBC州バンクーバー市、バーナビー市が、強い反対を表明していた。

 そして今年8月30日には連邦上訴裁判所が、全会一致で工事の差し止めを決定した。理由は、先住民族に十分な説明がされておらず合意が得られていないこと、NEBの環境基準には海洋生物への危険性が考慮されていないことが挙げられていた。

 連邦政府はパイプライン拡張工事を必ず完成させるという姿勢を崩しておらず、今回、まずはNEBの環境基準の見直しを図るために再調査を指示したとみられている。

 22週間以内という期限については、来秋の総選挙を見据えているのではと指摘されている。秋の選挙戦でパイプライン完成の目途を訴えるには、夏までには工事を開始しておく必要がある。そのために、まずは春までに環境基準を整え、足固めをしたい考えとみられている。

 ただ先住民族の強い反対による今回の判決結果だったため、現在は反対している先住民族が工事合意に至るのは難しいのではとの見方もある。

 ソーヒ天然資源相は、先住民族との「意義ある話し合い」への計画と、連邦政府が今後裁判所の判断に対して上訴するかについては、後日発表すると語った。

 

 

2018年9月27日 第39号

 ブリティッシュ・コロンビア州の公立学校の、5年生から8年生までの教科のひとつである外国語。現在は日本語やドイツ語、パンジャブ語など9カ国語が選択肢として用意されているが、これにペルシャ語が加わるかも知れない。ファルシ・ダール・BCと呼ばれる団体が、一般的にペルシャ語として知られるファルシ語を、このリストに追加するよう活動している。

 最近の国勢調査によると、BC州に暮らす4万3千人以上がペルシャ語を母国語とする国ーイラン、イラク、アフガニスタン、およびペルシャ湾岸のいくつかの国ーの出身で、その中の2万8千人以上が家庭内でペルシャ語を日常会話言語として用いているという。さらに同団体の設立者の一人アミール・バジェキアンさんは、この数はBC州内で話される日本語やスペイン語、イタリア語、ドイツ語、そしてフランス語話者の数より多いと指摘、言語教育の選択肢に入れてしかるべきだと取材に語っている。

 またバジェキアンさんによると、いくつかの学校理事会メンバーや州政府の政治家、また地方選挙の候補者たちの中にも、この活動に賛同する動きがあるという。

 なおサウジアラビアやエジプトなど、アラビア半島からアフリカ北部のアラブ諸国で話されるアラビア語は、ペルシャ語と見た目は似ているが、異なる言語である。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。