2019年2月14日 第7号

1月31日、バンクーバー市のUBCロブソンスクエアで、企友会とバンクーバービジネス懇話会が共催する新春懇談会が開催された。当日は企友会の年次総会が開かれた後、名刺交換と交流の時間が持たれた。懇談会では、羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事と、カナダ三菱商事社長の池田尚氏がそれぞれ講演、56人の出席者が熱心に耳を傾けていた。ここに概要を紹介する。

 

質疑応答では多数の質問が寄せられたほか、活発な意見交換も行われた

 

「最近の朝鮮半島情勢について」
羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事

北朝鮮の核問題

 東アジアの脅威となっている北朝鮮の核開発。冷戦時代にはソ連とアメリカが2大大国として、核兵器を持ちお互いをけん制していた。それぞれの周辺国は米ソの核の傘のもと、安全保障されていたともいえる。冷戦が終了しソ連が崩壊してロシアとなった。日本、中国、韓国、ロシアなどそれぞれの国で国交が正常化した一方で、北朝鮮は日本や米国と国交正常化できなかった。そうしたことから北朝鮮が孤立を深め、自衛に迫られて核兵器の開発を進めてきたという背景がある。1950年代の朝鮮戦争の後、韓国と北朝鮮は休戦状態であり、米国は韓国に軍を駐留させている。北朝鮮としては、いつ米国に攻撃されるか分からないという恐怖も現実のものとして感じているだろう。そうしたことも、北朝鮮が核を持つ判断に至った理由のひとつであろう。また、軍事的バランスの点でも韓国とは差があることから、核兵器を持つ必要性を感じているともいえる。

 北朝鮮の金正恩委員長が政権の座についてからミサイル発射や核実験が増えた。ミサイルの実験では、米国本土まで届くかというところまで能力を高め、核弾頭もミサイルに載せられるほどの小型化に成功したともいわれている。米国のトランプ大統領は、北朝鮮に対して圧力を強めたため緊張が高まった。しかし、2018年の金正恩委員長による新年の辞では韓国との対話意思を表明、また、平昌オリンピックに代表団を派遣すると発表した。さらに米国との対話を希望し、米朝首脳会談が実現した。

 北朝鮮に核を廃棄させるのは容易ではない。廃棄にあたっては、完全検証可能かつ不可逆的なものでなくてはならないが、米朝首脳会談では合意には至らず、非核化に向けた努力に留まった。核をなくすためには、北朝鮮が保有する核物質や核施設の特定、査察の受け入れ、核廃棄物の廃棄作業など課題が多い。北朝鮮としては経済発展のためにも、外国からの制裁が解除され経済的な支援を得ることを、核放棄の絶対条件としたいと考えている。核廃棄までの具体的な道すじで合意できるか、北朝鮮が実際に実行に移していくか、経済制裁解除の時期をどう設定するかが今後のポイントとなっていくだろう。

日韓関係

 日本にとって韓国は重要な隣国であるが、日韓関係は悪化しているというのが現状だ。1965年の日韓国交正常化の際、個人の補償を相手国に請求しないことで合意、日本としては完全かつ最終的に解決済みと捉えている。しかし、最近の韓国の動きは、こうした決定が間違っていたとして蒸し返しているような状況と日本側には映っている。韓国では前政権を担った朴槿恵前大統領が弾劾されたことで、朴政権時代に行われた決定に対する否定的な評価も影響しているのかもしれない。

 韓国人は日本に対して非常に好印象を持つ一方で、世論調査では反日回答をする傾向があるようだ。ソウルにある日本大使館の前にも慰安婦像が建てられており、そこで毎週デモが行われている。日本側としては歴代の首相などが折に触れて謝罪の意を示し、基金を設置して償い金の支給など行ってきているにもかかわらず、責任追及が続いていると感じている。韓国の人にこうした日本人の心境をもっと理解してもらえれば、状況も変わってくるかもしれない。

 1998年、当時の金大中大統領は韓国における日本大衆文化の流入制限の開放を断行した。今の韓国政府に大切なのも、こうした強いリーダーシップなのではないか。韓国は北朝鮮、ロシア、中国、米国、日本などの中心といった地理的な位置にあり、安全保障の面では不安定な地位にあるといえる。そのため、韓国は北朝鮮との融和や中国との関係強化など、さまざまな方面で自国の安全保障の確保を探っている。日韓関係が悪化をたどることで、韓国が北朝鮮や中国寄りになり、日本や米国と敵対することは日本としては避けたいところ。日本の安全保障という観点からも、韓国側が適切に対応するよう求めていく。

 

「資源取引を通じた日加関係」
カナダ三菱商事社長 バンクーバービジネス懇話会副会長 池田尚氏

資源供給国としてのメリット

 カナダは豊富な資源を有している。ブリティッシュ・コロンビア(BC)州では銅、石炭、シェールガス、アルバータ州では石炭、オイルサンド、サスカチワン州ではウラン、ポタッシュ、オンタリオ州では銅、ケベック州からニューファンドランド州にかけて鉄鉱石。どの資源も世界のマーケットの中で圧倒的なシェアを誇るということはないものの、国内での需要を超す産出能力であり、安定した供給が可能だ。また、政治的安定感があること、資源の採掘、輸送等も先進技術に裏付けされており、供給が滞る可能性が低いこともポイントだ。資源は海上輸送されるケースが多く、航路がどこを通るかはセキュリティ上、重要となる。アフリカ、中東、アジアからの航路は海賊が多いマラッカ海峡、中国との対立が続く東シナ海といった紛争海域を通過しなくてはならない。一方、カナダから日本への航路はそういった紛争海域がないため、地政学的なメリットといえる。

日加間の資源取引

 カナダから日本へ輸出されるものの中で日本にとって重要な意味を持つものとして、石炭、銅、ウラン、ポタッシュを挙げた。

 石炭は用途によって原料炭と一般炭とに分けられる。原料炭は高炉の中で熱源などとして使われる。カナダは生産に占める原料炭の比率が高く、輸出においても圧倒的に原料炭が多いのが特徴だ。原料炭は貴重かつ希少であるため、取引価格も高い傾向にある。一般炭は燃料として使われ、カナダの一般炭の多くは国内で発電用に消費されている。だが、二酸化炭素排出削減のため、石炭による発電を廃止する方向に向かい、国内消費も減少していくことが予想される。日本の輸入量におけるカナダの割合は、原料炭は10%程度で、一般炭はごくわずかである。

 銅は日常生活で頻繁に目にするものに使用されている。日本の10円玉や、電線や導線には銅が使われる。電気自動車1台当たりの銅の使用量はガソリン自動車の3〜4倍以上といわれており、電気自動車普及が進む中、銅の使用も増えていくと考えられる。世界の銅生産ではチリ、ペルーなど南米の国が最大手であり、カナダの生産量は多くはない。日本の輸入に占める割合も10%程度だが、今後需要が増えていくことが考えられ、カナダは重要な供給源であり続けるだろう。

 ウランはほとんどが原子力発電所の燃料として使われている。原子力発電所の事故を防ぐことができる限り、その経済性と環境性は他の資源に比べて高く、二酸化炭素の排出削減を目指すうえで、有力な手段であるといえる。ウラン鉱石として採掘されたものが精製後、濃縮などの工程を経て、ウランペレットという状態になり、燃料集合体として発電所で使われる。世界のウラン資源はカザフスタン、オーストラリア、カナダに多く集まっている。今後の日本のウラン輸入は原発の運転再開具合にかかっているだろう。

 ポタッシュとは塩化カリの俗称で最大の用途は化学肥料の原料だ。生産量はカザフスタンとカナダが多い。日本の肥料会社におけるポタッシュの輸入ではカナダが70%を占め、高い依存度となっている。先進国では健康志向の高まりにより、有機栽培の野菜が増えているが、増加していく人口の食を支えていくには高効率の化学肥料は不可欠だといえる。

 最近、カナダの資源産業として注目されているのがAI/IoT系のスタートアップだ。三菱商事はバンクーバーを拠点としたマインセンスという会社に出資した。この会社は、採掘に使うショベルに特殊なセンサーをつけ、掘りながらその場の地質を把握、その先の採掘計画に反映し採掘の効率を上げる技術などを開発している。天然ガスも資源として注目されている。三菱商事が15%出資するLNGカナダのプロジェクトはBC州のキティマットで動き始めており、2025年には年間1400万トンのLNGを生産する事業が始まる。このうち日本には約210万トンが輸出される見通しだ。また、天然ガスのアジア向け長期契約による輸出が動き出そうとしている。出光興産と三菱商事が折半出資する日本のプロパンガス輸入販売会社アストモスエネルギーが、アルバータ州のエネルギー会社アルタガスから5年にわたってLPGを輸入する契約を締結し、そのデリバリーが今年の春に始まろうとしている。

(取材 大島多紀子)

 

羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事

 

カナダ三菱商事社長 池田尚氏

 

澤田泰代氏(企友会会長)

 

石川満氏(バンクーバービジネス懇話会会長)

 

質問に答える講師の羽鳥総領事(左)と池田氏

 

 

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