2017年12月21日 第51号

12月10日、企友会主催の第15回日系ビジネスアワードとクリスマスパーティーが、バンクーバー市のコースト・コール・ハーバー・ホテルで開催された。岡井朝子在バンクーバー日本国総領事と夫君の岡井知明氏をはじめ、約80人の出席者が集った。

 

日系アワード大賞を受賞した白木正孝さん(左)と前年度大賞を受賞した東條英員さん

 

日系ビジネスアワードについて

 授賞式に先立ち、企友会会長の澤田泰代さんが挨拶した。今年企友会は設立30周年を迎え、「バンクーバー寺子屋」という新しい企画が始まったと紹介。これは参加した人たち同士が意見交換を通じて学び、励み合うことを目的としたものだ。来年も、今の時代に求められるビジネス団体としてできることを見極めながら、コミュニティに貢献していきたいと抱負を語った。

 日系ビジネスアワードの目的は、バンクーバー地区における日系ビジネス関係者に励みと規範となっている人を紹介すること、功績があった人をねぎらうこと、このアワードをきっかけにして日系ビジネス全体のより一層の発展を願うというものだ。受賞者の選定には企友会現会長と理事2人、過去の会長経験者2人の計5人と、バンクーバー新報社の津田佐江子社主がアドバイザーとして加わり審査をしている。

 今年は従来からの選考の目的に加えて、夢を持ってまい進し、その姿が勇気と元気を社会に与えている人に贈りたいという観点も加えられた。今年は以下の人たちに日系ビジネスアワードが贈られた。

 

企友会 日系アワード大賞
 会の内外を問わず、BC州内における事業で大きな功績を残し、日系社会に貢献している人に贈られる。

白木正孝(しろきまさたか)さん
 1950年福井県出身。1974年にカナダに移住、モントリオール銀行本社、日本航空バンクーバー支店で勤務した後、1993年からBC州政府雇用投資省・貿易増進局・日本貿易部業務課長に就任した。2001年に退職後、輸入会社を設立し吟醸酒の市場開拓を始めた。2007年にArtisan Sake Makerを興し、清酒醸造家として活躍している。2013年には、BC州日本酒協会の設立に尽力、カナダにおける日本酒の普及に広く貢献している。また、自社栽培によるカナダ産酒米を使用した酒作りにも取り組み、2013年、初のカナダ産原料米100パーセントの清酒を誕生させた。その後、食米の開発にも着手している。地球温暖化が進む中、お米がカナダの重要農業資源になることを予測し、連邦政府機関と農業コミュニティとの協力体制を築くことを今後の目標としているとのことだ。

 

特別賞
 本年中、カナダや日本政府などから表彰されたBC州内の事業主及び個人に贈られる。

水田治司(みずたはるじ)さん
 水田さんは、日本とカナダの相互理解の促進に寄与した功労により、平成29年度の外務大臣表彰を受章した。1933年BC州レベルストーク出身、少年時代を和歌山県で過ごし、戦後カナダに戻った帰化2世。バンクーバー日本語学校での50年間のうち3回理事長を務めたほか、BC州和歌山県人会で会長職を3回歴任した。受賞スピーチの中で水田さんは、カナダに成人してから戻り、カナダ人になろうと頑張ってきたが、最近になってやはり自分は日本人であると改めて感じるとともに、最後まで日本人でいたいと話した。そしてこれからも日本語を通じて日本文化や日本人の心を伝えたいと願っていると語った。

 

企友会新人賞 
 企友会会員の中から目覚ましい活躍をしている人に贈られる。

繁野充弘(しげのみつひろ)さん
 1970年、米国ワシントン州出身。小学4年生の時に日本に帰国、1993年にオーストラリアへわたりカレッジを卒業。10年にわたり、日本及び海外のクラブメッドホテル8カ所で勤務した後、2008年、シンガポールを拠点とするコンタクトレンズのオンライン販売会社に入社した。2014年、北米展開を開始するため、バンクーバーでLM Global Enterprise社を設立。全くのゼロの状態から約3年でカナダにおける市場シェアの20パーセント以上を獲得、5年後には40〜50パーセントを目指している。2015年から、世界最大のマーケットであるアメリカへの進出も開始した。

松本真子(まつもとまさこ)さん
 医師の両親のもとに生まれ、中医学院医療学科で薬学を学んだ後、祖父の故郷である日本へ渡った。埼玉大学大学院で経営学修士を取得し、大手医薬品メーカーの衛材(えいざい)に就職した。入社4年目で中国室長に就任し、中国で医薬雑貨の製造メーカーを立ち上げる。退職後、JX日鉱日石金属の子会社であるDOHOに就職、採用後4年で日本本社執行役員に就任した。人生の3分の1を中国と日本以外で過ごすという自身のプランを実現させるため、2013年に家族でカナダに移住。貿易会社Suihou Canada Enterpriseを立ち上げたほか、小雪サッポロラーメンをオープンするなど活躍の場を広げている。松本さんは欠席のため、代理として小雪サッポロラーメンのマネージャー、田邊亮喬(たなべりょうすけ)さんが盾を受け取った。

 

日系社会功労賞
 会の内外を問わず、BC州において長期にわたり日系社会に貢献した人を対象に選出。

黒住由紀(くろずみゆき)さん
 大阪外語大学からブリティッシュ・コロンビア大学に編入、政治学科を履修した。その後、商学部大学院で会計士に必要な単位を取得し、バンクーバーの大手会計事務所に就職。10年の経験を積んだ後、1993年に公認会計士として独立、同僚とともに新事務所を開設した。主に日本関係の企業や個人をクライアントに監査、会計、税務業務を行っている。日系女性企業家協会(JWBA)を含むコミュニティでの積極的な活動と、女性としてのリーダーシップを発揮してきたことなどに対し、功労賞が贈られた。

 

 授賞式後、岡井朝子総領事が挨拶で、建国150周年のカナダにおいて、140年前にはすでに日本からの移民がバンクーバーに来ていたことに始まり、戦争中の苦難を乗り越えた日系人や、新移民法制定後の移住者など、当地の日系社会では多様なコミュニティが形成されていると語った。また、今回ビジネスアワード受賞者の「お話を聞いていると、勉強になると共に、非常に心が躍る気持ちがしました」と語り、受賞者へ心からのお祝いの言葉を贈った。そして、来年が企友会の皆さんにとってさらに飛躍の年となるよう祈念して、乾杯の音頭を取った。

 その後はおいしい食事を楽しみながら、歓談の時間へ。テーブル間を移動して挨拶をしたり、交流を深める人たちの姿も多く、企友会メンバー間の風通しの良さを感じさせた。出席者お待ちかねの50/50やドアプライズの発表も、塚本隆志さんの軽快な進行で盛り上がった。最後は、企友会副会長の谷口明夫さんが、今年も有意義な活動ができたことに感謝すると共に、来年も魅力ある楽しい活動を展開したいと挨拶をして締めくくった。

(取材 大島多紀子)

 

岡井朝子在バンクーバー日本国総領事

 

特別賞を受賞した水田治司さん(左)と企友会会長澤田泰代さん

 

新人賞を受賞した松本真子さんの代理で盾を受け取った田邊亮喬さん

 

新人賞を受賞した繁野充弘さん

 

日系社会功労賞を受賞した黒住由紀さん(右)と企友会副会長の谷口明夫さん

 

ピアノ演奏で来場者を出迎えたケネス・ゴングさん

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。