2017年11月30日 第48号

「体の具合が悪くなったが、安静にすべきか、病院へ行くべきか迷う」「友人が帯状疱疹にかかり大変な思いをしていた。予防するワクチンがあるらしいが」「任意加入の医療保険は入る価値があるのだろうか」——。11月19日、日加ヘルスケア協会と在バンクーバー日本国総領事館、桜楓会が共催の講習会「BC州の医療・保険の上手な利用法」(会場—リステル・バンクーバー・ホテル、参加者45名)は、そうした疑問に答える会だった。

 

日本人に役立つ情報を伝えた専門家たち。写真左から、千葉あゆみさん、田中朝絵医師、ミナさん、小澤祐喜さん、松田茂領事

 

BC州の医療システム—— 田中朝絵医師

 ファミリードクター は、「ゆりかごから墓場まで」と生涯の健康管理を手助けする存在。家族が同じ医師にかかることで、情報が一元化され、診断の一助になる。また身辺の急変などで動揺しているといった、明確な病状がない場合でも、ファミリードクターを訪ねてかまわないと田中医師は語る。

<健康診断>
 日本では特別な理由がなくても健康診断を受けられるが、カナダでは医師が必要性を認めないと検査は行わない。検査を希望する場合は「肉親が腸がんを発症したから」など、何か理由を説明しよう。

 病気・病状があれば、年に1度身体検査が受診できる。理由がなくても一律に受診できるのは、大腸がん検査(50〜74歳)、乳がん触診、マンモグラフィー(乳がん検査)(40〜74歳)、子宮頸がん検査(25〜69歳)。

<急に身体の具合が悪くなったら>
 救急病院に行くべきか迷ったら811に電話を。看護師が毎日24時間電話対応するほか、午前9時から午後5時は栄養士・運動療法士(平日のみ)、 午後5時から午前9時は薬剤師(毎日)も対応に当たっており、電話した際、最初に「ジャパニーズ、プリーズ」と告げれば日本語通訳が利用できる。

 健康に限らず、困ったことがあれば211へ。生活全般に対する相談が可能だ。

 

医療機関の受付を円滑に進めるコツ—— クリニック受付 ミナさん

<必要な対応が取られるように>
 医療施設の予約や来院の際には、氏名、生年月日、病状・怪我の説明を簡潔に伝えること。受け付け担当者は、その情報から急ぎの対応が必要かどうかと診察時間を判断する。来院時に英語を話すのが不得意であれば、書面にして提示するとよい。

<救急車を呼びたい場合>
(1)911に電話をかけると、オペレーターが「ファイヤー(火災)、ポリス(警察)、アンビュランス(救急)」の三つのどの用件かを尋ねてくるので「アンビュランス」と答えること。
(2)次に"What is your emergency? "と聞かれた際に、「ジャパニーズ、プリーズ」と言えば、日本語通訳が利用できる。
(3)救急隊員が到着するまでは電話を切らないこと。電話さえつながっていれば、万が一、最初の説明で救急車が該当の場所にたどり着けなくても、次の指示を与えることが容易になる。

 

知っておくと便利な薬局のサービス—— 薬剤師 千葉あゆみさん

<薬局で接種を受けられる予防接種>
 5歳以上の人であれば、薬局で次に挙げる予防接種を処方箋なしで受けることが可能である。インフルエンザ、肺炎、帯状疱疹、麻疹、おたふく風疹、水疱瘡、破傷風ジフテリア、百日咳、A型肝炎、B型肝炎ほか。その病気の発症リスク、あるいは重症化するリスクの高さに応じて、接種が無料となる場合がある。例えばインフルエンザワクチンは、慢性疾患の人、医療従事者、病院等の施設に勤務する人、医療やケアの施設を訪問する人は無料。肺炎ワクチンは65歳以上が無料だが、65歳未満でも慢性疾患、免疫不全患者は料金が無料となる。接種前にはワクチン料金、注射料金、予約の要・不要、医師の処方箋の要・不要を確認するとよい。

 

MSP適用外医療保険—— 保険スペシャリスト 小澤祐喜さん

 BC州の居住者が加入する医療保険制度(Medical Service Plan)では一般的には、歯科治療、処方箋薬、眼科検診、専門療法(カイロプラクティック、鍼灸など)、差額ベッド代、州外旅行保険にかかる費用はカバーされていない。その医療費のギャップを埋めるのが民間の医療保険である。

 小澤さんは、病気や怪我で、薬の費用や在宅介助を受ける料金などがかかった場合をシュミレーション。医療保険に入っていた場合に、そのような医療費の自己負担額を大きく抑えられる可能性のあるケースも紹介した。

 民間の医療保険への加入により、保障の範囲が増えることで、歯科を受診したり、専門療法の施術を受けたりしやすくなることだろう。健康寿命を長くする方法として一考する価値がある。

 また、田中医師から補足として「医師は、患者が民間医療保険に加入していないと困るんです。特に糖尿病、高血圧などで内科の関係の薬を服用の方は」と語られた。ある種の薬には、服用の量や回数が少なくて済み、副作用が少ない薬(高額)と、服用の量や回数が多く、副作用が出やすい薬(安価)とがあり、患者が民間保険に加入していなければ、経済的負担を考慮して、安価なほうの薬を処方するという。カナダには「二つのレベルの医療が存在するんです」(田中医師)という言葉は印象的だった。

 

在バンクーバー日本国総領事館から—— 松田茂領事

 BC州内には約3万5000人の日本人と約4万5000人の日系人が居住。総領事館では、毎日こうした人々からの各種の相談事を受けるが、実際問題、医療などの相談で総領事館が直接に手助けできることは限られる。そのため今回の講師たちのような「専門家の知恵と力を総動員するのが総領事館の役回りと認識しています」と松田領事。また災害時などに日本人の生命と経済を率先して守る役割を果たすために、二つのことをお願いしたいと述べた。それは在留届けの提出と「たびレジ」への登録。住民票がないカナダにおいて、在留届は日本政府が個人の居場所を知り得る唯一のデータになる。そして「たびレジ」は、個人が滞在先の在外公館から緊急時の情報を得ることができると同時に、在外公館が滞在中の日本人を把握し、災害時に対応するための情報となるもの。国外旅行の際に旅行保険に入るように、「たびレジ」へ登録を。そして「総領事館は皆様にとっての総合窓口として存在できれば。総領事館の敷居は決して高くしておりません。気軽にお問い合わせを」と松田領事は熱を込めて語った。

 

 そのほか講習会では、医師の検索サイトにある情報の読み取り方や、ファミリードクターのもとで受診の最中に利用できる新しい通訳サービス、各種ワクチンの料金、薬局での薬の補充対応などの情報が提供された。また質疑応答を通して、患者が日加の文化の違いを踏まえた上で受付担当者との効果的なコミュニケーションを行うなど、実際的で細やかな内容が紹介された。

 最後に桜楓会会長の久保克己さんからの挨拶と、日加ヘルスケア協会理事の宮地昭彦さんから同協会の活動(医療関係者を招いての月1回の座談会、歩く会、講習会)が紹介され、充実した会が締めくくられた。

 

BC州住民向けの有用な情報源ファミリードクターを探すためのサイト
www.cpsbc.ca > For the Public > Physician Directory

生活全般の援助情報を掲載したサイト
www.bc211.ca

ウォークインクリニックの場所と待ち時間がわかるサイト
medimap.ca

(取材 平野香利)

 

「専門家の人々が情報を提供してくださる貴重な機会」と述べる岡井朝子総領事

 

最新情報を交えてカナダの医療システムを紹介する田中朝絵医師

 

定員を上回る60名以上の参加希望者に健康への関心の高さが伺われた

 

 

 

 

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