ANAのバンクーバー=羽田路線に

ボーイング787型機就航

 

7月1日より、ANAのバンクーバー=羽田路線に、ボーイング社の新鋭機787型機が就航する。客室内の快適性、燃料効率の良さなど、次世代ジェット機と呼ばれるこの機体の就航にあわせ、ANAバンクーバー支店長松橋慶典氏に同社の旅客サービスについて聞いた。

 

 

ANAバンクーバー支店長松橋慶典氏(写真撮影 平野直樹)

  

787型機の育ての親である、ANA

 航空機の開発には、莫大な資金が必要となる。そのため、航空機メーカーは開発方針を固めると、各航空会社にその諸元を公表して購入を打診し、ある程度の発注を受けてから初めて、開発・製造を開始する。ちょうど、コンドミニアムの建設が始まる前に、その建築費用をまかなうために販売が開始されるのと同じ考え方だ。

 また最初にまとまった機数を発注し、メーカーを実行に踏み切らせた航空会社を、ローンチカスタマーと呼ぶ。まだ存在しない航空機を大量発注するのはリスクがある反面、その航空会社の要望が優先的に設計に反映されるという、大きなメリットがある。

 この787型機については、ボーイング社の開発意向表明に対しANAが最初に呼応、2004年に50機を発注し、ローンチカスタマーとなった。そして経済性と効率を最優先し、快適性のための装備をできるだけそぎ落とそうとするメーカー側の設計態度に対し、ANAは自社の技術者をボーイング社の工場に常駐させるなどして、同社が求める顧客サービスのニーズを設計段階から各所に反映さるため、粘り強い交渉を続けていった。つまり、この機体の設計思想、特に乗客の快適性については、ANAが中心となって作り上げていったとも言えよう。

 

ANAが開発当初から関わってきた、ボーイング787型機

 

これまでにない機内快適性

 その一例として、温水洗浄機能付きトイレや、水滴落下防止装置を装備して客室内を加湿し、湿度を高めることを可能にしたことなどが挙げられる。そのほか、新素材を多用したことでキャビンが広くなり、天井が高くなったと共に手荷物棚が大きくなったほか、キャビン内の気圧を今までの航空機より地上に近い状態に保つことも可能になり、耳への気圧負担感が減少している。

 このように、今までになかった機内快適性を実現した787型機。そのほかにも、窓がそれまでの機体に比べ1 ・3倍ほど大きくなったこと、LED照明の採用による多彩な照明や、音、振動共に静粛性が高まったエンジンなど、お客様により快適な環境を提供できるとあって、どの航空会社もこぞって導入に踏み切っている。

 ANAは昨年3月末に、バンクーバー=羽田路線を就航させて関東圏へのアクセスを飛躍的に向上させたのに続き、今回の787型機就航と、さらなる顧客サービスの充実を実現した。このことから同社がこの路線を重視していることが見て取れる。松橋氏も、お客様の多くが待ち望んでいた機材とあって、今回の就航に大きな期待を寄せている。

 

大型化されたキャビンで、頭上の空間にも余裕がある

 

顧客サービスが 本当の強み

 しかし使用機材などのハード面が刷新されても、お客様が感じる満足度は、そこで働くスタッフの対応、すなわちソフト面に大きく左右される。特にお客様が最初にANAと接することになる空港カウンターは、これから始まる空の旅の第一印象が決まる場所でもある。

 ANA初のカナダ路線の開設のために昨年1月に赴任して以来、バンクーバー支店長としての業務をこなしながら、バンクーバー空港所長として日々の空港業務にも立ち会っている松橋氏は、この点について念入りな対応をするよう心がけていると話す。

 日本の空港とは違い、海外の空港旅客サービスの場合、地上係員は全員がANAのスタッフというわけではない。育った文化背景や勤務体系も違った現地採用スタッフも大勢いる。そんな環境の中、松橋氏はお客様志向に徹することを第一義としてスタッフをまとめあげ、ANAのサービスの真髄・品質を咀嚼・理解してもらい、チームANAということで一体化できるよう努力しているという。

 

ビジネス・クレードルと呼ばれるビジネスクラスシート。ゆったりくつろぐのに十分なスペースを確保している

 

会社全体での顧客満足度向上の努力

 そして、そんな松橋氏の努力を成功へと導いているのは、ANAが会社をあげて取り組んでいる、各種サービス品質の向上への取り組みだ。

 同社では外部の調査会社によるお客様満足度調査を年4回行い、その結果に基づいた啓蒙活動や、社外コンサルタントによるセミナーなどを継続的に行って、より良いサービスにつながる気付きを得る工夫をしている。また、社員同士でモチベーションをあげるために、良い仕事をしていたスタッフをお互いにほめるグッド・ジョブ・カード制度を導入するという取り組みも行っている。この制度も、もともとは、お客様と最初の接点になる空港旅客サービスの向上に焦点を当てて取り入れたものだというから、ANAがいかに多角的な顧客サービスを目指しているかがうかがえる。

 

フットレスト、PC用コンセントも装備されたエコノミークラス

 

世界的評価を継続して得ている、 ANAのサービス品質

 その成果として、イギリスの航空サービス調査会社スカイトラックス社が行っている、「エアライン・スター・ランキング」で、最高位の5つ星評価を3年連続で獲得しているANA。独自調査のほか、利用者からの評価にも基づいて行われるスカイトラックス社の格付けは、特定の航空会社などに偏らない公平性から、高い信頼性を得ている。その5つ星評価を獲得している航空会社は世界でたった7社、日本の航空会社ではANAだけだ。

 さらにANAは今年、スカイトラックス社の空港サービス全体を評価する「ワールド・ベスト・エアポート・サービス賞」と、地域ごとに空港スタッフや客室乗務員のサービス品質を評価する「ベスト・エアライン・スタッフ・イン・アジア賞」でも、最優秀航空会社に選ばれている。

 

温水洗浄機能付きトイレも、ANAの意向が反映された装備だ

 

「奥が深い顧客サービス」の、あくなき探求

 こうした顧客志向を徹底した社内文化に支えられながらも、「お客様サービスというのは、奥が深い」と松橋氏。バンクーバー支店に赴任するまでは、空港業務に携わったことはなかったという氏だが、昨年3月末の路線開設から1年3カ月あまり、どのようにすればこの空港で業務がスムーズに行えるかというノウハウを蓄積してきており、「1年前とは、違う私たちです」と話す。以前は空港に行っても、お客様に挨拶をするのが精一杯だったのが、最近は個々のお客様の状況を察して、迅速にサービスを提供できるようになってきたそうだ。

 また日本的な「融通のきく」サービスが提供できるようにも努力していると松橋氏。社内には提供できるサービスについての細かい規定があるが、それに忠実であろうとすると、お客様のニーズに沿えなくなり、杓子定規の対応ではお客様に不快な思いをさせてしまう場合もある。かと言って、どこまでもお客様優先で規定を逸脱すると、その場はうまくとりつくろえたように見えても、その後のオペレーションに支障を来たすこともある。そのような場合、どこまで踏み込むのがベストなのかを判断し、機転のきいたサービスを提供できることが、松橋氏の目指すところだ。

 氏が今まで体験してきた現場での対応例を聞いていると、確かにサービスのプロになればなるほど、「お客様サービスは、奥が深い」と感じるものだということがわかった。毎回異なったシチュエーションで、毎回違った判断を求められる顧客サービス。いっそのこと、規定を盾に、決まりきった対応だけをした方が、統一された業務を遂行するには都合がいいかもしれない。しかし松橋氏は、逆にケース・バイ・ケースの前例を積み上げていって、それを新しいスタンダードとする雰囲気がスタッフの間に形成されれば、全員がサービス品質の向上を目指す気づきの醸成につながると信じている。そこを目指すがゆえの「サービスは、奥が深い」という言葉から、松橋氏をはじめとするANAスタッフの、顧客に対する真摯さが伝わってきた。

 

(取材 平野直樹 / 写真提供 ANA)

 

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