山井綱雄さんインタビュー



2012年から毎年バンクーバーやビクトリアで、能楽のワークショップや公演を行ってきた、金春流のシテ方である山井綱雄さん。今回の訪問は4回目となる。日本の文化庁から平成26年度文化交流使として任命され、その活動の一環として2月1日から1カ月半の海外ツアーを敢行している。パリ、ニューヨーク、バーモント州でワークショップを開催。ツアーの最後を締めくくるのはビクトリアとバンクーバーでのワークショップと公演だ。

  

山井綱雄さん(© Yamai Tsunao) 

   

1カ月半の長いツアーですね。

 文化交流使として行く場所は自分で選ぶことができるので、世界中で最も文化の歴史の古い芸術の都パリ、世界最先端の文化都市であるニューヨーク、そして(過去3年間の)ご縁のあるバンクーバーとビクトリアを回ることにしました。バンクーバーへは打ち合わせのために1日滞在して、明日からはポートランドへ行ってワークショップがありまして、その後ビクトリアとバンクーバーで公演をしてから、ロサンゼルス(LA)で公演、またバンクーバーに戻ってワークショップを開催します。  

 

今回の公演「繋ぐ〜多次元を~」について教えてください。

 2月27日にビクトリア、28日にバンクーバー、3月2日はLAと3公演することになっています。ジャズピアニストの木原健太郎、囃子方(小鼓や太鼓などの楽器演奏)など全部で8人編成で行います。文化交流使という役を仰せつかったことから、能楽師として自分にしか見せられない表現は何か、ということを考えてきました。キーワードとして浮かんできたのは、「Be connected、繋ぐ」。そこから公演のタイトルをつけました。

 伝統的な歴史背景、金春流の1400年の伝来といったものを伝えること、それによって普遍的なメッセージを届けたいと思っているんです。人と人とのつながり、それは今この世に生きている人たちとのつながりも大切だし、もう亡くなってしまった大切な人とのつながりというものもある。能の世界は、過去、現在、未来へとつながっていくものも表現しているんです。ですからタイトルには『いろいろなものは実はつながっている、人やものごとも、目に見えないつながりがあるんだ』というメッセージを込めています。

 

ピアニストとの共演ですね。

 木原健太郎とは「縁- enishi」というコンビを組んでいてもう14年くらいの付き合いになります。木原は、バークリー大学で音楽を学んできたし、アメリカ西海岸で演奏活動も行っていてアメリカナイズされた音楽的感覚を持っているんですが、日本のマインドも持ち合わせています。

 伝統芸能が、まるで博物館のガラスのケースに入った展示物のような、『素晴らしい』というだけで終わってしまうものではなく、もっとダイレクトにメッセージを伝えるものを目指しました。ピアノは世界でもっともポピュラーな楽器の1つですし、西洋文化の方たちにも分かりやすいメッセージの伝え方になるのではと考えました。1時間半の公演では、伝統的な能楽の曲を3つ、ダイジェストで演じたあと、ピアノ、舞、謡(うたい)、囃子方が一緒になった演目を披露します。曲がどのような内容かは公演の始めに司会者が一通り説明するだけで、最初から最後まで一気に途切れることなく進行します。

 

 

山井綱雄さんとピアニストの木原健太郎さんによるコラボ(© Yamai Tsunao)

 

前半の3曲は伝統的な形ですか?

 そうです。ただ「羽衣」では、私が装束をつけ、能面をつけるという、普段は舞台裏でやっていることを舞台上で行います。説明は無しで、能の動きとしてこれらの作業をお見せします。

 

最後の曲がまさしくハイライトですね。

 「Kizuna」という、木原と私とで作ったオリジナル作品です。ピアノと舞と謡の組み合わせは、やったことがありますが、そこに囃子方が加わるのは初めての試みです。能というのは楽譜のない世界で、舞台上であうんの呼吸で合わせていくんです。ジャズも即興的な音楽ですから共通する部分もありますね。ただ、今回は即興でというより、全部きちんと決めておいてやっていきます。全部決め事の中であっても、毎回やるごとに違ってくる。その違いを共有しながら舞台を作っていくんです。緊張感もあるし、要所ごとにピタッとあったり、何ともいえないグルーブ感というものが感じられるんですよね。

 

海外の方々の能に対する 反応は?

 海外に住んでいる日本人の方は、ワークショップでの能楽の説明などに対して非常に興味を示してくれますね。能は日本人の心というものを表現している、それがまさに腑に落ちるという感じです。ある意味、日本にいる日本人よりも日本の素晴らしさが分かるのかもしれない。距離感があるから俯瞰する目があるというか。

 今の時代、西洋的な考え方はいろいろな面で行き詰まってきていると思うんです。そうした中で、東洋的な考え方やものごとの捉え方がもっと注目されてきている。今まではどんどん広げていくという感覚だったけれど、限りが見えてきた。これしかないというなら、それをどうやって有効活用したり、やりくりしていくかを考えるのは日本人の特性だと思います。アメリカの大学でもそうした日本人のマインドを研究し取り入れようとする動きがあるようです。

 今回、アメリカの大学でもワークショップをしました。アメリカの将来を背負って立つであろう、トップの大学に通う学生たちに、『新しいジェネレーションとして、新しい価値観を持つことが必要ではないか、私はそのヒントを伝えたいと思いここに来ました』と伝えました。1時間半の予定がオーバーしてしまい2時間かかってしまいまして。途中、大学の先生が帰らなくてはならない人はどうぞ、とアナウンスしたんですが帰る人はいなかったんです。みんな真剣にじっくりと聞いてくれた。こうした反応は嬉しかったですね。こちらの存在意義にもつながりますし、代々伝えてきた能という伝統芸能が、今の時代に生きる人たちへのメッセージを伝える役割があると感じます。

 

公演情報

Continuity & Connection

「繋ぐ〜多次元を〜」 

2月28日(土) 19:30から

Koerner Recital Hall

(Vancouver Academy of Music, 1270 Chestnut Street, Vancouver)

大人 $29  シニア・学生 $19

チケット購入:Tickets Tonight 604-684-2787 / www.ticketstonight.ca

当日券もフロントで購入可

 

 

忙しいスケジュールの合間を縫って快くインタビューに応じてくれた山井綱雄さん 

 

 

山井綱雄さんプロフィール(公式サイトより抜粋)

金春(こんぱる)流能楽師。(公社)能楽協会会員。 (公社)金春円満井会理事。

1973年横浜市出身。國學院大學文学部卒。先代79世宗家故金春信高、現80世宗家金春安明、富山禮子に師事。金春流能楽師であった祖父(故梅村平史朗)の影響で5歳で初舞台。 NHK文化センター青山本校、JR東日本「大人の休日倶楽部」講師。藤嶺学園藤沢中学校非常勤講師。 全国にて能楽公演、学校普及公演、講演会を多数開催。海外での能楽普及にも尽力。「能楽は世界最高の芸術である」との信念の下、「日本人のココロ」の啓蒙に奔走。 趣味はロックバンド活動(ボーカル)、プロレス観戦。聖飢魔Ⅱの熱狂的信者でもある。

(取材 大島多紀子) 


 

 

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