あべなつき。秋田県出身、神奈川県で育つ。神奈川総合高校国際文化コースを卒業後、2007年春にプリンス・ジョージのカレッジへ。1半年後、バンクーバーへ移り、ダグラス・カレッジを経て2010年春からUBCの国際関係学科に編入。2013年春に卒業。現在は非営利組織のキツラノ・ネイバーフッド・ハウスで働く傍ら、7歳から習っている書道を活かし、書道家(雅号:姫洲)として活躍中。

 


阿部なつ希さん

 

 

—留学のきっかけ

小学生の頃から国際平和や国際支援活動に興味があり、海外へ行くと決めていました。ヨーロッパやアメリカなどの大学を見学しましたが、UBCには、唯一の国際関係学科があったので、入学を目指し2007年春に渡加。その後2つのカレッジにて勉強に励み、2010年春に晴れてUBCに編入することができました。

 


—UBCでの大学生活

世界から集まった生徒達と刺激し合いながら勉強に励む傍ら、模擬国連の議長を務め、新入生オリエンテーションでグループリーダーや、非政府組織や非営利組織でインターンなどUBC時代に多くの経験を積みました。卒業前の最後の学期に、半年間スウェーデンに交換留学をしました。

 


—現在の活動

現在は3年間のポスト・グラデュエイト・ビザ(カナダの教育機関を卒業した留学生が一定期間就労できるビザ)で働いています。UBCでの経験を生かし、非営利組織のキツラノ・ネイバーフッド・ハウスという地方自治開発の会社を選びました。

ここでは、移民や低所得の家族や様々な年齢層を幅広い分野にわたって支援をしているので、毎日いろいろな人との出会いがあり、ストーリーがあります。 書道家活動にも力を入れています。私はバンクーバー木曜会 (カナダと日本の交流を促進するために作られた団体)で、文化交流イベント担当として書道イベントなどを企画したり、横浜・バンクーバー姉妹都市交流の活性化の活動もしています。

 

 


夏のパウエルストリート・フェスティバルのブース


—書道について

私は7歳から文化書道会に属していますが、真剣に書道に取り組むようになったのは高校生の頃からです。難しく感じられがちな日本伝統文化の書道を、どうアートとして広めていくか研究を重ねました。そして、自ら写真と書を融合した新しいグラフィック・アート「写心書」を生み出しました。集大成として写心書の作品集を自費出版し、初の書道パフォーマンスを観客の前で発表しました。

 


—書道家としての活動

カナダに来てからは、書道カナダ(トロントを拠点とする書道会)が恒例で開催する競書大会に毎年出展しており、2011年に私の「希望-HOPE-」という作品が金賞を受賞しました。東北の大震災への想いを込めて書いた書で、実際に私の父方の祖父母が被災した時にもすぐ『希望』という書を送り喜んでもらえました。書で人に元気を与えることの素晴らしさを改めて実感しました。

現在は、月に一度、日系センターで書道経験や日本語レベルを問わないワークショップを英語で行っています。基本練習に加え、季節に沿ったカード等作り、アート書道やリレー書道など、書道に興味のある方達みんなに楽しんでもらえるアクティビティを盛り込んでいます。この他イベント参加など、さまざまな活動をしています。

 


—これからの抱負

これからも日本文化を広める種蒔きを世界でしていきたいです。新渡戸稲造の「願わくは、われ太平洋の橋とならん」の言葉のように、私もカナダと日本、そして、世界を繋ぐ架け橋になりたいです。  異国の地で行う書道は、日本で書く書道とは一味違うものがあります。もちろん日本語が共通語ではないところで日本語を筆と墨で書くので周りからの反応はさまざまです。カナダの人達が純粋に日本文化芸術を、楽しい、美しい、と受け取ってくれることにやりがいを感じます。書道を通して多くの人と繋がっていけることがとても嬉しいです。他の分野のアーティストと交流を持ち、コラボレーションのワークショップも増やしていきたいです。こうして少しずつ人の繋がりの輪を広げていくことで、最終的には世界平和に繋がるとも考えています。

(取材 北風かんな)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。