バンクーバーのある和食レストランの寿司カウンターの上には金色の海を泳ぐ鮭の群れを描いた日本画風の作品が掛かっている。その店に行くたびにこの絵に見惚れていた私は、ある時、その絵が井上悦子さんという方の作と知った。彼女の活動に興味を持ち、インタビューをすることになった。

 


井上悦子さん近影

 

 

—カナダに来たきっかけは?

外資系のエアラインの会社に転職するため、英語のブラッシュアップをしようとカナダに短期留学をしました。福岡でJALPAKという旅行会社で仕事をしていたこともあり、カナダ滞在中にバンクーバー支店を訪れ支店長にお目にかかり、現地旅行会社の現状を伺いました。当時カナダ旅行は全盛の時期でした。その後、一旦帰国してワーキング・ホリデーで再渡加しました。バンクーバーでJALPAKのカスタマー・サービスに10年間勤務しました。

 


—現在のお仕事の内容は?

ブライダル・サービスとウェディングプランナーを養成する講座を行う全米ブライダルコンサルタント協会(世界各地のブライダル業界で活躍するプランナーやコーディネーター、コンサルタント、関係業種の活動組織の中で最も権威ある、そして規模の大きい協会)認定校のRouge Rouge Wedding Studio & Canada Wedding Academy: http://rougerougeweddingstudio.comを主宰しています。ブライダルシーズンにはブライダルデザイナーとして、また、オフシーズンにはウェディングプランナーを目指す方たちのための養成講座を行っております。さらに、企業や学校向けのビジネス・接遇マナーのレクチャーや、ブライダルフラワー講座などを行っています。帰国時には、日本のブライダル専門学校で、北米ブライダルについてのレクチャーをしています。

 


—アートに関してはどのような活動をなさっていますか?

日本画家・書家として活動しています。8歳から始めた書をベースに独学にて日本画の手法を学び、日本古来より伝わる和紙・墨、岩絵の具を使用して日本の伝統アートと現代アートを融合させた作品を生み出し、毎年ソロの個展やグループショーなどを開催しています。

私はFederation Canadian Artist協会とAmerican Watercolor Societyのメンバーで、カナダとアメリカの一部でアート活動をしています。Federation Canadian Artists が会員向けの運営している Federation Galleryへ定期的にアート作品を出展して います。また、Summer Galleryにも出展予定です。書の分野では3年前より、『書のライブ・パフォーマンス』を始めました。和楽器のミュージシャンとのコラボレーションでさまざまなイベントやライブ活動を行っております。このライブ・パフォーマンスは、今後、スティーブストン仏教会やパウエル祭で行われます。

 


—これからの抱負は?

ブライダルでは、自身のブライダルデザイナーとしてのスキルを向上させること。カナダにおいて日本のブライダル要素もミックスしたウェディングをお客様にご提供することです。また、日本国内だけでなく、グローバルに活躍できるウェディングプランナーの育成を目指しています。

カナダに多くの日本文化が入っていますが、日本の伝統文化の一つである日本画や書はまだまだ十分に浸透していない状況です。それは、北米では本物に触れる機会が稀少だからだと思います。爆発的ブームになっている日本のアニメ。これもルーツを辿っていくと書や日本絵画に到達します。その基本となる日本のアートをここカナダで広めて行きたいです。

 

ホームページ:http://galeriedeetsu.com

 


悦子さんのアート作品『Winter White』



 

ウェディング関連の仕事をしながら、精力的にアート作品の制作に励んでいる悦子さん。これからの彼女の活動が楽しみである。

(取材 北風かんな)

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これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。