2019年10月17日 第42号

バンクーバー国際映画祭のM/A/D(音楽・アート・デザイン)部門でリンダ・ホーグランド監督の「Edo Avant-Garde(江戸アバンギャルドの保護者)」が招待された。ニューヨーク在住のアメリカ人である監督は、来加してブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市のSFU's Goldcorp Centre for The Artsでの上映とQ&Aに出席。多忙なホーグランド監督だったが10月 4日、宿泊先のザ・サットン・プレイス・ホテル内で本誌のインタビューに応じてくれた。

 

インタビュー時のリンダ・ホーグランド監督

 

日本とアメリカ

 ニューヨーク在住のアメリカ人ホーグランド監督は、金髪に青い目でどこからみても外国人。だが「インタビューは日本語で良いでしょう?」とびっくりするぐらい完璧な日本語が飛び出す。それもそのはず、京都生まれで日本の小・中学校を卒業、高校は神戸のインターナショナル。アメリカのエール大学に通うまで彼女はずっと日本に住んでいたのだ。目をつぶって話を聞くと、普通に関西弁を話す日本人かと思ってしまう。三姉妹だったそうだが自分は特に体も大きく日本ですごく目立った。幼少期はずっと周りに受け入れてほしいと思っていたそうだ。

 

映画監督への道

 監督になる前は日本映画の字幕を担当していたというホーグランド監督。黒澤明、宮崎駿、市川崑、阪本順治、是枝裕和など有名監督の大作映画を多く手がけ、中村勘三郎率いる歌舞伎アメリカ公演の台詞翻訳・英語指導を経て、2004年に外務大臣賞を受賞している。

 そして映画字幕から自然に映画製作に興味を抱いた。最初の作品は自分がそれまでこだわっていた『第2次世界大戦』だった。日本では敗北、アメリカでは勝利。この正反対のギャップの中で育った彼女は、自分の心にある葛藤を埋めるために、『特攻』、『安保』、『広島』と戦争に関する三部作を手がけた。特に『安保』は現在アメリカにある多数の大学図書館で資料として保存されている。

 そしてその後、戦争作品に終止符を打ち、子供の頃の素直な心に戻りたいと思った。それは2014年の『The Wound and the Gift』という動物映画だった。観てくれた人々の心を癒したい思いで、「鶴の恩返しをしました」と明るく笑った。  

 

映画『江戸アバンギャルドの保護者』

 ある時偶然に江戸初期の屏風を見て「これって抽象画?」と考えたホーグランド監督。だがよく見ると1600年と書いてあった。そしてその瞬間、『江戸アバンギャルド』というタイトルが頭をよぎった。「この世の中は全て西洋人の発明からきているとか、西洋が作ったと思われがちな部分を歯がゆく思ったの。嘘ばっかり。日本のモダニズムは300年早かった」。そして3年間かけて勉強して、お金を集めて、NHKも口説いてこの映画を作るに至った。

 初めての4K映像採用。日本の国宝を含む素晴らしい美術品を、ガラスなしで自然光やろうそくの灯りで直接撮らせてもらえた。特に梅の一つ一つの粒など、『繊細でアップに耐える』印象を与えたいと思ったそうだ。今回の4K映像は日本のベテラン・笠松則通監督が引き受けてくれた。彼とは阪本順治監督の映画字幕がきっかけで知り合えた。優しくて冗談も言える、日本で指折りの大監督。「すごく光栄でした」とホーグランド監督は微笑んだ。

 映画の中で奈良にある龍穴神社を初めて訪ねた監督。新幹線がなく、大阪から2時間かけて車でたどり着いた山の中。そこは奈良時代から変わっていないような雰囲気の場所だった。神道について説明があるという話に「どうせ変なおっさん(笑)」が出てくると思っていたら翌日、袴をはいたかっこいい男性が現れて慌ててしまったと笑わせてくれた監督。映画の中にある説明はどれもすごく詳しく、自分自身の勉強になったそうだ。

  監督の作品は『江戸あばんぎゃるど』と題して違う形で1月にNHKで放送された。日本のお宝ものを一人のアメリカ人女性が見方を変えさせるという大胆な発想の裏には、視聴者を喜ばせるための勉強をかかさない姿があった。江戸時代の絵師たちは電光も騒音もなく、いつ津波、火事、洪水などの自然災害に見舞われるか予測もつかない状態だった。彼らにとって自然とは一体何だったのかと監督はかなり長い間想像してみたそうだ。

 日本の演出家だとまずすでに有名なお宝ものを探すが、監督はただ古い小さなカタログから、自分が心打たれる、署名のない作品も選んだ。これは無名のアーティストに敬意をはらいたかったからでもある。 自分は美術学者や歴史家でないから位置づけに興味はない。ただ良いものを映像ではっきりと魅せることに集中した。自然を描写した屏風、掛け軸、絵巻など、好き嫌いがはっきりしている監督が選ぶ作品にはなぜか説得力がある。

 かなりの視聴率がとれたので来年の春にまた新たな撮影に入るそうだ。「もちろん、また日本ものですよ」と笑った監督の次作品に大いに期待したい。

(取材・写真 ジェナ・パーク)

 

Edo-Avant-Garde 2019 ©VIFF

 

上映後のQ & A

 

 

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