2017年5月25日 第21号

5月16日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で、桜楓会の講演会が開かれた。日本から移住した人にとって、日本とカナダの医療システムの違いに戸惑うことも多いだろう。医者にかかる際に知っておくと役に立つ心構えを、セントポール病院で長年にわたりボランティア活動を続けている田中昭さんが説明した。

 

講師を務めた田中昭さん。配られた資料はたたんで携帯できるサイズになるよう工夫されていた

 

適切な処置を的確なタイミングで受けるために

 会の冒頭で田中さんは、今回の講演内容はセントポール病院で活動している際に知り得た情報を元にしたものであることを断ったうえで、医療機関を利用する際に知っておくと安心な心構え等を紹介した。

 病院ではたくさんの入院患者を抱え、急患も続々と訪れる。セントポール病院では、午前7〜8時頃が医師や看護師のシフト交代の時間であり、その周辺の時間帯に病院に行くと待ち時間が長くなる傾向があるようだ。こうした交代時間を避ければ待ち時間を減らすことができるのではないかとのこと。また、医師に症状を伝えるときには、どこがいつからどの程度痛い、と具体的に話すことが大切だという。どれくらいの痛みかを、0(痛み無し)から10(最悪の痛み)までの点数で表現するのも伝わりやすい(0〜5段階でいうことも可能)。英語力が心配という場合には、医療通訳者に介してもらうと安心だ。状況によっては、病院が無料の通訳者をアレンジしてくれることもある。

知っておくと便利な情報

 海外からカナダに旅行で訪れた人が、カナダ滞在中に事故にあったり病気になり病院で治療を受けなくてはならなくなったら、かかった治療費や入院費などが実費で請求される。とても高額になることもあるので、医療保険に加入していなかった場合は大変だ。そのことを考えると海外旅行の際に保険を掛けることは非常に大切だといえる。お守りだと思って保険には入ってから出かけよう。

 セントポール病院の緊急救命室(ER)には1日に約300人もの急患が訪れるそうだ。ERに行く場合、911に電話をして救急車に乗っていったほうが待ち時間が短くなるとのこと。救急車を利用すると料金が請求されるが、本当に緊急を要する場合は救急車を使ったほうが良いと田中さんは勧めている。

 また、看護師が医療についての情報やアドバイスを行っているBC Nurse Lineというサービスもある。電話番号は、604-215-4700(グレーターバンクーバー地域)。日本語の通訳が必要であれば、1-866-215-4700(トールフリー)に掛け、その旨を伝えれば、看護師と通訳と電話での3者通話ができるようにしてくれる。911に掛けるほどではないが、心配な症状があるときなどに、相談できる機関を知っておくと安心できるだろう。

 最後に桜楓会副会長の大西真雄さんが、日本人はつい遠慮がちになってしまう傾向があるようだが、自分の伝えたいことははっきりと主張することは大切だと思ったと述べた。会場を訪れた約30人の参加者は興味深く話を聞き、質疑応答も活発に行われていた。

(取材 大島 多紀子)

 

 

開会と閉会の挨拶をした大西真雄さん(右)と、講師の田中昭さん

 

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