2017年3月9日 第10号

行商の魚売りや客引き、子供をあやすおかみさん。

…舞台は暮らしの息づかいが聞こえる江戸時代の京都。歌舞伎のルーツ、歌舞伎踊りを始めた阿国(おくに)をビビッドに表現するのは舞踏家の平野弥生さんである。3月1日、バンクーバーのグランビルアイランド、スタジオ1398で、世界的ピアニスト、サラ・デイビス・ビュクナーさんを迎えて行われた「阿国(オクニ)―マザー・オブ・カブキ」は、マイムと踊りと音楽による生の歓喜にあふれたステージだった。(バンクーバー国際ダンスフェスティバルの一環として3月10日まで公演)。

 

かぶきもの(風変わりな人)と呼ばれた阿国を演じて(撮影 Yukiko Onleyさん)

 

オープニングは庶民たちの姿を生き生きと

 生成りの布に京の町のイラストが映し出された背景。ステージ右手ではサラさんがダイナミックかつ繊細に『ラプソディ・イン・ブルー』をピアノ演奏。弥生さんは、そのリズムに乗ってさまざまな人物を軽やかに演じた。手にした生魚の新鮮さ、盗人が逃げ隠れする土壁、船頭が操る舟の動きの緩やかさ。何もない空間に何一つ持たず、からだの動きだけで物の形、人の姿を次々と創出する。その巧みさに会場から感嘆の声がもれる。楽しい、面白い。言葉にすると単純だが、その源に、極めに極めた芸の力がある。

 

優雅な舞いからコミカルな演技まで多彩に

 弥生さんは本公演にあたり、資料を読みあさり、日本の各地に足を運んで阿国を研究。さらに阿国が習ったであろう舞楽を学び、ステージ構成、振り付け、演出、衣装を構想した。そうして作り上げた舞台の第1部では、京の都の人たちの味わいを。第2部では巫女の舞いや能の舞いで阿国の修行時代を表現。第3部で阿国独自の踊りの再現を試みた。

 陽気さ、荘厳さ、神秘、情愛、実に多くの要素を含んだ舞台を、サラさん、山本実さん(笛と太鼓)の豊かな音色が盛り上げる。そしてエンディングにふさわしい演技で公演を締めくくると、会場全体がスタンディングオベーションで絶賛の思いを伝えた。

 

初日の公演を終えて

 「ほっとしています。このステージを作り上げたのはチームの力」と弥生さん。米国から来加して演奏に臨んだサラさんは「これまで一緒にステージを作った人の中で、弥生さんは最強のエナジーの持ち主。コンビでの出演は毎回とても楽しいです」、ナレーションや黒子で登場した高山宙丸(そらまる)さんは「舞台やスタッフへのちょっとした気遣いなどに弥生さんのプロフェッショナルさ、(人間の)大きさを感じています。舞台では弥生さんが楽しんでいるので、僕もその楽しさに乗っからせてもらった感じです」、舞台大道具を手掛けた甲斐静香さんは「満ち足りた思いを感じています」と、それぞれの思いを語ってくれた。

 

観客の感想

 日本人の母へのプレゼントを兼ねて親子で来場したアキ・カルテンバックさん。「興味深く鑑賞しました。僧侶の舞いが一番気に入りました。日本の伝統的な踊りの学びにもなりました」。ブレンダ・ウェブスターさん。「うっとりしました。最後の場面が特に胸に迫り、涙が出ました。操り人形の場面もとってもよかったです」。

(取材 平野 香利)

 

落語の小話さながらに町人を演じる弥生さん(撮影 Yukiko Onleyさん)

 

能の演目「海人(あま)」で、子のために命を投げ出す海人の気迫を表現(撮影 Yukiko Onleyさん)

 

初演を終えてほっとする(左から)平野弥生さん、アンジェラ・ホリンジャーさん(ヤヨイ・シアター・ムーブメント理事)、サラ・デイビス・ビュクナーさん

 

 

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