なでしこジャパン 初陣スイスに辛勝 !!

 

FIFA女子ワールドカップ2015カナダ大会が開幕した。グループCの試合が行われるバンクーバーのBCプレースでは、6月8日に初日を迎え、多くのファンが詰めかけた。 日本代表は第2試合。まだピッチはに太陽光が色濃く楕円を描く中、なでしこのW杯が開幕した。

 

試合開始前の集合写真

 

白星発進  とにかく勝ち点3

 「日本に勝ち点3をプレゼントできてよかった」。佐々木監督の正直な気持ちだろう。前半、MF(ミッドフィールダー)安藤がペナルティエリア内でGK(ゴールキーパー)タルマンと接触。スイスにイエローカードが示され、日本はPK(ペナルティーキック)を獲得した。

 PKを決めたのはキャプテンMF宮間。「安藤選手が体を張って得たPKだったので、何がなんでも決めなくてはいけないという思いだった」。

 日本にPKのチャンスが与えられたことに「スイスにとっては不運だった」とボス・テレンバーグ監督。試合の中で徐々に調子をあげていったし、「少なくとも同点で終われる試合だった」と語った。

 日本は後半、苦戦した。正確なパスは乱れ、前半うまく回っていたパス回しもカットされることが多くなった。「もう少し冷静に試合運びすれば、もっと楽にできた」と佐々木監督。心理的なものもあったのだろうと、思いのほか苦戦したスイス戦を振り返った。

 スイスで特に後半動きがよかったのが、FW(フォワード)バックマン。途中には日本のディフェンスを5人抜きしてシュート直前まで持って行くスーパープレーを見せた。「ゴールできなかったのは、ほんとに残念だった」とバックマン。「90分間、自分たちの方がいい動きをしていたと思う」とアンラッキーなPKに泣いた。

 無駄なパスが多かったし、中途半端なパスで相手にボールを取られる場面が度々あったと厳しい表情で語ったのはFW大儀見。安藤の交代で、自身の役割が微妙に変わりリズムがつかめないまま、守備に回る時間が多くなった、力を発揮できなかったと反省した。

 「決勝トーナメントに上がったときを考えると、あの戦い方だったら厳しいかなって感じるので改善していかなくてはいけないと思う」と初戦白星にも最後まで表情が緩むことはなかった。

 得点は両チーム合わせてこの1点のみ。攻撃がなかなか噛み合わず追加点が取れない中、守備ではGK山根が光った。

 オリンピック、W杯合わせて、今回が初先発。試合後「ひと安心しました」とあどけない笑顔を見せて初勝利を喜んだ。入場行進する時は多少緊張していたという。しっかりと目を開けて、顔をこわばらないようにと言い聞かせて、ピッチへ入場した。試合が始まると、187センチの大柄な体を活かして、思った以上に手ごわかったスイスの攻撃を抑えた。無失点でのW杯初勝利。「自分の体の大きさが活かせたプレーもできたし、自信にしたい」。大型GKの初陣は、どこまでも初々しかった。

 佐々木監督も、8年間望んでやっとこの日が来てくれたと満面の笑みで山根の無失点デビューを喜んだ。次の試合でも先発出場の可能性をにおわせた。

 次は12日のカメルーン戦。「ほんとに初戦の難しさと、自分たちとして後半リズムがつかめない中で、勝ち点3が取れたことはチームにプラスに働くと思います」とキャプテン。次の試合で「なでしこサッカー」を取り戻すことを胸に秘めているようだった。

 

カメルーンが グループC1位に

 この日の第1試合で6ー0とエクアドルを圧勝したカメルーンが、グループCで1位になった。日本代表はそのカメルーンと12日対戦する。

 「気を引き締めていかないといけない」と佐々木監督。スイス同様、女子サッカー全体のレベルが向上している中、どのチームにも簡単に勝てるわけではない。

 カメルーンのンガチュ監督は試合後、「今日の試合には満足している。チームのいいところが出た。しかし、次の対戦相手は日本だから、気を引き締めていかなくてはいけない。世界一のチームだから」と語った。日本対策を聞かれると「まだ試合が終わったばっかりで、次の試合のプランまでは考えられないけど、世界一のチームと対戦するということだ」と笑顔を見せ、上を狙っていると自信をのぞかせた。

 カメルーンは今大会が初出場。この日がW杯初勝利で、いきなり6ー0と大勝した。選手の身体能力の高さは、一目瞭然。アフリカ勢ではナイジェリアがスウェーデンに3ー3と引き分けた。今大会、アフリカ勢が台風の目になる可能性もあるかもしれない。次のカメルーン対日本は注目だ。

 

もう一つのW杯 国際審判員  山岸佐知子さん

 今回のW杯には、日本代表には参加していない、もう一人のなでしこがいる。国際審判員に選ばれた山岸佐知子さん。これまで、オリンピックや昨年カナダで開催されたFIFA女子Uー20の審判も務めたベテランレフェリーだ。

 いよいよ大会が開幕するという直前の5日、「楽しみです」と満面の笑みを見せた。緊張はほとんどなく、「みんないつもやってるメンバーなので、滞在もすごくリラックスできてやってます」と気負いはない。

 サッカー女子審判と言えば、カナダのファンは、2012年ロンドンオリンピックでの準決勝、対アメリカ戦での苦い経験を思い出す。アメリカに有利な判定をされたように見えた場面があったからだ。この判定が影響して、結局カナダはアメリカに惜敗した。カナダとしてはアメリカを倒して決勝に上がれるかどうかの試合だっただけに、世論は沸騰した。

 こんな時、審判はつらい。「担当したレフリーはその時に見たもの、感じたものを素直に判定していると思います。その結果、それがあってないこともあろうし、そしたらその後反省して、その後繰り返さないように、その繰り返しだと思います」。

 試合はこうした審判の影の努力によって公正に行われていく。肉体的にも、精神的にも、厳しいポジションだが、他では味わえない醍醐味があるという。

 選手たちもいろいろな国から参加するが、審判もいろいろな国から参加する。文化も、言葉も違う審判員がサッカーを通じて、一つの大きな大会を成功に導いていく。「いろんなことは違うけれども、みんなで一つのことを成し遂げようっていう、それを通じて一つになれるというのは何とも言えない、他の仕事ではなかなか味わえないことかなって思っているので、これは私が国際審判員として言えるひとつの誇りみたいなものかなと思ってます」と笑顔を見せた。

 モットーは、「サッカーを通じて世界をハッピーにすること」。そんな山岸審判員のW杯もいよいよ開幕を迎えた。

 

この日、代表通算200試合を達成したベテランMF澤

試合終了後、水をかけ合って勝利を喜ぶ選手たち

 

今大会もなでしこを率いる 佐々木監督(中央)

 

自身のシュートが惜しくもポールに当たりゴールできず悔しがるFW菅澤

 

自分の役割が果たせなかったと悔しがったFW大儀見

 

GK山根のセーブでスイスのシュートをなんとか食い止める

 

日本のディフェンスを5人ドリブルで抜き、あわやゴールというスーパープレーを見せたスイスFWバックマン(#10)

FW大儀見とMF澤

 

PKを決めた宮間を囲んで喜ぶなでしこ

 

この日先発出場したMF澤、57分に途中交代した

 

W杯初先発MF宇津木。期待通りの活躍だったと佐々木監督が評した

 

この日、PKを決めPlayer of the Matchに輝いたMF宮間

 

なでしこファン集合!!

 

入場行進。GK山根(右端)、うしろはFW大儀見

 

W杯で審判を務めることが決まっている国際審判員の山岸さん。トレーニング後のグランドで。(6月4日バンクーバー市、撮影:三島直美)

 

(取材 三島直美 Photo by Sam Maruyama)

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