2016年12月8日 第50号

   二.

 アジア各国が完全な完全な自給自足を実現させるのに、人口増加が激しく、まだ長い時間が必要だという説もあるが、アジア地域が将来、有利な自然環境、労働条件なりを利用して、プランテーションのような大型農業を展開する可能性はありうる。プランテーションで生産された農産物が日本にも輸入されるのもそんなに遠い日のことではない。

 現在は貿易のバランスを取るため、いわゆる南北問題を解決するため、開発途上にある国々は農産物などの輸出を増産させることが不可欠である。逆の見方から言えば、日本が工業製品を輸出するために、そのみかえりとして台湾からバナナを、タイからはタピオカデンプン、セイロンからは紅茶、ナイジェリアからは落花生などを輸入している。

 また、これとは別に自由貿易を旗印としたガットがある。ガットについては「日本経済教育研究」は次のように述べている。「ガットの規約で特別の理由がない限り、輸入制限を禁止されています。ところがわが国では、この規約に違反した「残在輸入制限」品目が127(うち農産物が68)もあり、先進国の間でズバ抜けて多いのです。そのため各国からきびしく批判され、とりわけドル防衛に懸命のアメリカは農産物の最大の得意先である日本に、強い攻勢をかけてきています。」

 ヨーロッパにおいてはすでに乳製品は生産過剰にあり、オーストラリアでは日本人向きのチーズの味を研究しているという。 

 世界の産地から安いものが入ってくることは「消費価格を安定させる」、「農業の近代化に好ましい」、「日本は工業国である」などと自由化促進論者は言う。一方、自由化反対論者は「農民の保護の必要性」、「農民の犠牲が大きい」、「近代化には期間が必要」などの理由を挙げている。

 私は自由化を否定はしないが、マルサスの理論からいえば食料の供給は人口の増加に追いつかないのである。その意味で国民生活の基礎物資である食料を自給する必要がある。また国土の有効利用や外貨の節約のためにも国内において、政府がいう(注・1970年頃)75%を少なくとも自給する必要があろう。

 75%の自給率を確保するために、零細な農業を自由から今すこし保護する必要がある。

 ここで、自由化を促進する交通機関に少しふれてみたいと思う。近年、交通機関の発達はいちじるしい。米国にて機械で安く生産された食パンを、EECが飛行機で輸入している。これは、ヨーロッパで作るより、米国で作った安い食パンを輸入した方が安いからである。また、フランスパンは人件費の高い米国で生産するより、フランスから米国に飛行機で移動させた方が安いのである。

 日本においては1968年末にF会社がケーキに使用するイチゴを、例年国内の供給に依存していたものが高値のため、外国から飛行機で輸入した。そのために国内のイチゴの値がいちじるしく安値になった例がある。巨大飛行機ジャンボの就航をまぢかに控えて輸送革命はいちじるしく進行していると言わねばならない。

 交通機関の発達により、外国(注・近年2016年頃は中国)からより安い農産物が入ってくることは時間の問題であり、自由化の問題はこれからの対外政策、あるいは世界の農業を考えてゆくうえで大切な問題であろう。(まだあるのですが以上とします)

 TPPが今回だめになれば、中国により有利となるであろうアジア中心のRCEPへ移行ということになるかもしれないというのが今の流れかもしれません。正確には、20歳になる前に書いたこのエッセイは、今の時代にも通じるようにも思えるのですが、いかがなものでしょうか?

(了)

 


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