2017年9月14日 第37号

 北朝鮮がミサイルをグアム島周辺の海に向けて発射するというニュースが報じられた日、僕は息子夫婦が一週間前に持ってきてくれたチェリーが傷み始めているので、あわててジャムにしようと思い立ち、キッチンの流しの前でチェリーの果肉をむき、種を取り出す作業をしていた。  チェリーの赤いジュースが流しの中に広がる。まるで戦争の爆弾に殺されて赤い鮮血が飛び散るようで、想像するとゾッとした。アメリカと北朝鮮の戦争にならないことを祈るばかりである。

 かって太平洋戦争の始まりで、日本がハワイのパールハーバーをゼロ戦で攻撃したことを思い出す。この戦闘機は補助タンクを取りつけると、その航続距離は当時としては驚異的なものであったらしい。そのことが作戦成功の一つのカギであろうと思われる。

 ハワイ攻撃のことを思えば、いよいよ行き場のなくなった北朝鮮も、かっての日本のように太平洋の米軍基地があるグアム島をミサイル攻撃せざるえないのだろうかと想像をめぐらす。グアム島には沖縄の米軍基地縮小にともない、グアムに海兵隊を移す案があったけれど、あれは実現したのだろうか?

 とにかく米軍の基地があるグアム島を目標として、北朝鮮はミサイルを飛ばそうとしているのである。

 このことは、日米の太平洋戦争が始まる前に、米国からハルノートを突きつけられた当時の日本によく似ている。ハルノートは中国にいる日本軍が撤退するように要求しているが、ベトナム、マレーシアを経てシンガポールからインドネシアに入り、その石油を確保しようとする日本軍には無理なことであったのではと思われる。が、とにかく、米国に譲歩して、日本軍が満州まで引き上げれば、過去の大戦は別の形になり、三百万人以上の戦争の犠牲者を出すことはなかったかもしれないが、現実は不可避の状態であった。しかし、天皇と日本政府は米国と戦争回避の最後の交渉にかけて、その準備がととのいかけていたが、その情報は中国に伝わり、中国側はそれを阻止するべき英国のチャーチルに働きかけるのである。

 チャーチルは、すぐに米国に連絡をとり、日本との会談を取りやめるように進言をする。そのことにより、日本は孤立した。石油の凍結、アメリカ、カナダにいる日本人の資産の凍結などである。日本の選択肢はハワイ攻撃しか残されていなかったのである。東洋の小さな島国が、大げさに言えば西洋の植民地主義に反抗を始めたのである。

 今また、北朝鮮はグローバルな巨大資本主義と戦おうとしているのか?

 北朝鮮の隣にはかっての盟友である巨大な中国がある。その中国も一説には、三千三百兆円の巨大な負債を抱えている大資本主義の国に変貌しつつあるのかのようにも見える。日本がバブルの時は200億円負債、あれから10年以上、しかも人口十倍以上の中国にとって今の負債は日本のバブルの時より小さいことかもしれない。

 その中国は、北朝鮮に対して比較的寛大に見受けられる。北朝鮮の石炭、鉄鉱石、海産物を第三国に輸出する中国企業が5233社あるという。このことは北朝鮮が、今すぐ戦争に踏み切らなくとも、より性能の高いミサイルを開発するべく、日本に向けて飛ばすのみですむことなのだろうか?

 先の本紙(8月24日号)の記事でも述べられた、日本生まれの外交官ハーバート・ノーマンはエジプト共和国の大使であったころにスパイと疑われ、その苦悩によるのか自殺を余儀なくされた。苦い歴史がカナダにもあるが、我々はそういう経験を乗り越えて北欧とか、カナダなどのわりと平和的な国が、今こそ北朝鮮に友好の手を差し伸べるべきではないか?

 50年前の共産国中国とアメリカ、日本も国交はなかった。今こそ、友好の絆を結ぶべきでではないか?

 これは余分なことであるが、ハーバート・ノーマンを記念した「H・E・ノーマン図書館」が東京赤坂のカナダ大使館にあるそうである。僕の推察であるが、彼が共産主義者と疑われたのは江戸時代中期の当時としては珍しい農村の社会学者ともいうべき安藤昌益の書を読んだことにより影響を受けたように思われるが、これは私見である。ノーマンの著書に『忘れられた思想家 安藤昌益のこと』、英語名「Andou Shoeki and the Anatomy Japanese」がある。

 


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