2018年7月12日 第28号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー島北部の沖合いで2日、シャチの攻撃から身を守ろうとしたアザラシが、自ら観光船の中に飛び込んできた。

 このホエールウォッチングの観光船に乗っていたニック・テンプルマンさんはじめ観光客は、シャチの群れに囲まれたアザラシが、この状況をどうやって乗りきるかを見守っていたところだった。シャチは船に向かってまっしぐらに泳いでくるアザラシを妨害しようと攻撃してきたため、テンプルマンさんはアザラシが船までたどり着けないだろうと思っていたと取材に語っている。

 しかしアザラシは船に到達、そのまま船に飛び込み、船尾に取り付けられていた船外発動機の裏に縮こまった。シャチは獲物を見失ったものの、少なくとも3頭は船のそばにとどまり、明らかにアザラシを探している様子だった。

 一方、観光客らは、滅多に見られない光景を逃すまいと、携帯電話などを取り出しこの様子を録画し始めた。最後にはシャチもあきらめ現場を去って行ったものの、この体験の恐怖心からかアザラシは海に戻ろうとしなかった。そこでアザラシを船に乗せたまま別の場所まで移動、船に乗せていた犬に吠えさせ、アザラシをなんとか海に追い返した。その後もアザラシはしばらくは船から離れようとしなかったという。

 

 

2018年7月12日 第28号

 パキスタンと中国の国境に位置する、世界第2の高峰K2の現地時間で7日、ケベック州の登山家が滑落、死亡した。

 パキスタン山岳クラブによると、標高8611メートルの同峰を目指していた9人チームには、3人の登山家がケベック州から参加。そのうちの一人、サージ・デシュルオさん(53歳)が滑落したのは、6700メートル付近に設置された第2キャンプの近くで、午後零時25分頃のことだった。当時の詳しい状況は、今のところ明らかにされていない。

 デシュルオさんの友人で、2年前にK2登頂を目指したことのあるベノワ・ラモルーさんは、突然の悲報にショックを隠しきれないでいた。2年前の登山では、第3キャンプを襲った雪崩のため、頂上アタックを断念せざるを得なかった経緯がある。

 妻と2人の娘のよき父親であったデシュルオさんはまた、空いた時間をコミュニティのために使っていた、他人を思いやる人物だったとラモルーさんは取材に語っている。またデシュルオさんは登山に関しては常に安全を優先し、功績をあせって無理をするようなことは一切しない人物だと説明、それでも5千メートル以上の山に登る場合には、常にリスクがつきまとうと話している。さらに、デシュルオさんも家族も、そのリスクのことは十分理解していたし、少なくとも彼は愛していた登山で命を失ったことが、せめてもの救いだと付け加えていた。

 デシュルオさんの遺体はベースキャンプを経て、パキスタンの首都イスラマバードに搬送される予定。

 

 

2018年7月5日 第27号

 アメリカのドナルド・トランプ大統領が、カナダからアメリカに輸入される鉄鋼・アルミニウムに対して課した高関税に対抗する報復関税を7月1日から開始すると、カナダ政府が6月30日、その詳細を発表した。

 鉄鋼の町として知られるオンタリオ州ハミルトン市で記者会見を開いたクリスティア・フリーランド外相は、報復関税実施について「カナダが(貿易戦争を)助長するつもりはないが、引き下がるつもりもない」と語った。

 カナダ政府は報復関税と同時に、国内の鉄鋼・アルミニウム産業への補償も発表。最高20億ドルを関連産業も含めて補償すると発表した。

 フリーランド外相は、アメリカのロバート・ライトハイザー通商代表とは継続的に連絡を取っていることを明かし、この問題の解決のために会談する用意があるとも語った。

 今回カナダ政府が発表したのは、アメリカからカナダに輸入される製品に126億ドル相当の関税を課すというもの。そのほとんどが鉄鋼・アルミニウム製品。100品目以上の鉄鋼・アルミニウム製品に25パーセントの関税を課す。さらに生活に密着する製品にも10パーセントの関税が課せられる。それらの中には、コーヒーやヨーグルト、オレンジジュース、醤油、トマトケチャップなどが含まれている。リストにある商品でもアメリカ以外の国からの輸入品に関税は課せられない。関税はアメリカの高関税が撤廃されるまで続けられる予定。

 トランプ政権は安全保障上の問題を理由に6月1日からカナダを含め、メキシコ、欧州連合(EU)からの鉄鋼・アルミニウム製品に対しても、25パーセント・10パーセントの関税を上乗せすることを発表。これに対して各国が報復措置を発表している。

 カナダは現在、アメリカ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)についても交渉中で、アメリカの高関税措置はNAFTA交渉を有利に進めたい狙いがあるともみられている。トランプ大統領はNAFTAに否定的な考えを示している。

 

 

2018年7月5日 第27号

 オンタリオ州選挙で圧勝した進歩保守党(PC)ダグ・フォード党首が6月29日に就任式を終え、正式に第26代オンタリオ州首相に就任した。

 6月7日に実施されたオンタリオ州議会議員選挙で大勝したフォードPC政権が本格的に動き出す。

 この日は、フォード州首相と20人の閣僚が就任式に出席。閣僚は21人中、男性14人、女性7人。そのうち白人以外は1人のみという構成となった。

 就任式を終えた後、集まった約2千人の州民の前に現れたフォード州首相は、「今日ここでオンタリオ州民の前に立ち、私を信頼してくれたことにとても感動している。そして、この先に大きな仕事が待っていることを実感する」と述べた。州民の生活を経済的に豊かにすることが指名と語り、経済対策を最優先とすることを改めて強調した。

 この日就任した閣僚で注目されたのは、PC党首選でフォード氏と党首を争い僅差で負けたクリスティン・エリオット氏。副州首相兼保健相に就任した。

 同じくPC党首選に出馬し3番目となったキャロライン・マルルーニー氏は司法長官兼フランス語担当相に。ヨーク-シムコ選挙区で当選し、今回初めて政界入りした。 ブラウン前PC党首が1月24日に辞任した後、暫定党首を務めたヴィック・フェデリ氏は財務相に就任。注目の環境・自然保護・公園相にはオンタリオ州宝くじ公社やポストメディアのトップを務めたロッド・フィリップス氏が就任した。フォード州首相は、公約にキャップ&トレード制度を含む炭素税の廃止を掲げていて、今後の政策に注目が集まっている。

 オンタリオ州議会は7月11日に再開、12日には開会の式辞でフォード新政権の政策が発表される。

 

 

2018年7月5日 第27号

 オンタリオ州政府は7月3日、同州が導入していた環境対策キャップ&トレード制度から撤退すると発表した。

 今回の措置は先週発足した進歩保守党(PC)新政権が、選挙期間中に公約として掲げていた環境対策炭素税制度からの撤退を実現する第1歩となる。

 PC政権は撤退を実現することで、ガソリン代を1リットルにつき10セント安くするほか、光熱費も引き下げる狙いがあるという。

 さらに、企業に課している事実上の炭素税支払い義務をなくすことで、企業の競争力を高めるとしている。

 オンタリオ州政府は、キャップ&トレード制度は同州民や企業に約80億ドルを課していたにもかかわらず、効果はほとんどなかったと声明で廃止の理由を発表している。

 しかし、すでに導入された制度を利用するために、約30億ドルに値する許可証を購入している企業にとっては、これらの費用が無駄になる可能性があり、州政府が何らかの補償をしなければならなくなるのではと予想されている。もし州政府が補償しなければ、州政府を相手に訴訟が起こる可能性もあると指摘する専門家もいる。

 さらに、連邦自由党政権は、全国横断的炭素税導入を2019年1月から実施することをすでに決定している。

 オンタリオ州以外ではケベック州も導入しているこのキャップ&トレード制度は、連邦政府が導入する炭素税と同等の効果があると政府が認めている。これを廃止するとなれば、それ相当の環境対策制度がオンタリオ州に必要となる。

 今回のオンタリオ州政府の発表について、連邦政府キャサリン・マッケナ環境相は「オンタリオ州政府が気候変動への対策に関心がないことが明らかになった」と批判。カナダ政府としては、今後も環境と経済の両立を目指して対策を続けると声明を発表した。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。