2017年4月27日 第17号

 オンタリオ州政府は24日、同州3地区で基本給支給制度を試験的に導入すると発表した。ハミルトン、サンダーベイ、リンジーから4千人を対象に今夏から実施する。

 対象となるのは、失業者、ホームレス、低所得者など。政府が無作為に選択し、対象者に参加意思を確認。参加を希望すれば基本給が支給される。実施期間は3年で、政府は対象者4千人をモニタリングする。

 基本給支給制度とは、生活に必要な一定額に満たない所得者を対象に政府が支給する制度で、ヨーロッパではすでに導入されている国もある。

 今回の同制度導入は、現在オンタリオ州で広がりつつある経済格差による貧困層への支援で、雇用と所得の底上げが可能かを探ることを目的としている。テクノロジー産業など同州経済をけん引する好調な産業がある一方で、製造業や鉄鋼業など貿易摩擦やオートメーション化で失業率が高い産業は厳しい状況にある。さらに同州ではトロント近郊で不動産が高騰。働いていても衣食住で基本的生活に困難な状況が生まれつつある。こうした厳しい現状で、現在は失業者や低所得者として生活していても、基本給制度を受けることで再就職や、より給与の高い仕事に就ける機会を得られる可能性が高くなるかどうかを探る。

 支給額は、1人世帯の場合は年間1万6986ドル、2人世帯では2万4027ドル。障がい者は6千ドルが上乗せされる。所得がある場合は、所得の半額を支給額から差し引かれた額が支給される。

 同日、ハミルトン市で記者会見した同州キャサリーン・ウィン州首相は、以前は1人の所得で家族を養えていたが、現状は大きく変わっていると語り、「我々は以前とは(経済構造が)全く異なる時代に突入した。テクノロジーの進化からトランプ大統領誕生まで、現在は、どのような大きな変化が起こるか分からない時代」と語った。

 今回の制度導入で州政府が負担する費用を5千万ドルから1億5千万ドルと試算している。

 

 

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