ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンドの、日系移民の歴史と深い関わりを持つ漁港スティーブストンで、ことし3月に100歳を迎えたカズエ・サカタさん。6月中ごろに脳卒中で倒れてリッチモンド総合病院に運ばれたが、そのまま帰らぬ人となった。

 戦後、日系人が太平洋岸に戻ることを許されて間もない1950年初頭から、現在のスティーブストンの家で暮らし続けてきたサカタさん。もともと農家に生まれたこともあり、ガーデニングに情熱を注ぎ続けてきた自宅の庭は、いつしかスティーブストンはもとより、各地からわざわざ人々が足を運ぶほどの有名な庭園となっていった。

 そんなスティーブストンの歴史遺産ともいえるサカタさんの家を、土地開発業者の手から守るべきだという声が、地元民の間からあがっている。

 マニトバ州ウィニペグ出身で、スティーブストンに移り住んで9年になるアン・ラーナーさんは、これほど美しい場所は絶対に残すべきだとの意見を、市議会議員に述べている。そのうちの1人キャロル・デイ議員は、リッチモンドからどんどん歴史的財産が姿を消していることを懸念し、市の公園・レクリエーション課に対し、市としてどのような協力ができるか問い合わせている。

 デイ議員はまた、1898年に建築されながらも、良好な状態を保ってきたクィーン・アン様式の住宅がつい先日、取り壊されたことにも落胆していた。この住宅はリッチモンド市の歴史遺産候補に挙げられていたが、これは法的拘束力を持つものではなかったため、開発業者の行為を阻止することはできなかった。デイ議員は、ブルドーザーを使うのは最後の手段であって、はじめからブルドーザーありきであってはならないと取材に語っている。

 サカタさんの自宅は1946年に建てられている。完璧と言えるほど手入れが行き届いていた美しい庭は、誰でも足を止めて眺めずにはいられないほどだった上に、サカタさんはそうした自慢の花をよく近所などに分け与えていた。

 デイ議員は、折を見てサカタさんの家族と市の関係者らを交えて話し合う場を設けたいと考えている。BC州土地評価局によると、6600平方フィートのこの土地と建物の評価額は98万5000ドル。娘のキャロル=リン・サカタさんは、母親は101歳までは生きるだろうと信じて疑っていなかったため、まだ今後のことは決めていないと取材に語っているものの、この庭と家を失うようなことにはしたくなく、この夏のあいだに家族で話し合いたいと話していた。

 

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