南極点の近くにある観測基地で発生した病人の救助に、カナダの航空会社の小型双発機が活躍した。

 2週間ほど前に2人の病人が出たのは、アメリカのアムンゼン・スコット基地。基地に勤務する48人の中には医師や医師助手もいたが、病人のうち1人の治療が現地でできないことが判明、基地を運営するアメリカ国立科学財団が、2人を南極大陸から南アメリカへ救助・搬送することを決定した。なおこの2人は、アムンゼン・スコット基地の運用を担当する、ロッキード・マーチン社の社員とのこと。

 その救助飛行を依頼されたのが、アルバータ州カルガリーに本社を置くケンボレック・エア。折しも夏至を過ぎたばかりの南極点では、9月の冬至まで太陽はまったく上らない日が続く。

 こうした目標物もほとんどない暗闇に加え、機体への着氷や強風、雪、そしてマイナス60度にも達する過酷な環境のため、南極点への飛行機の運行は2月から10月の間は行われないのが一般的。

 南極大陸の大きさは、ほぼアメリカとメキシコを合わせたほどである。今回ケンボレック・エアの飛行機が救助に向けて離陸した、大陸海岸部にあるイギリスのロゼラ観測基地から南極点のアムンゼン・スコット基地まで片道2400キロメートルほどで、その航行には大きな危険が伴う。

 またこうした環境の下では航空燃料やエンジンオイルなどが凍ったり、電気を供給するバッテリーも極端に出力が落ちたりするため、それなりの寒冷地対応が要求される。ケンボレック・エアが運用する、デハビランド・カナダ社が設計・製造したツインオッター機は、こうした過酷な環境への対応がなされており、マイナス75度までは飛行が可能だ。

 南極点近くの氷原は、年間に約1メートルずつ南極点から離れる方向に移動しているため、アムンゼン・スコット基地では恒久的な滑走路は作れず、離着陸用の平坦なエリアを定期的に作り直し、常に同じ地図上の位置に留まるようにしている。

 この困難な救助フライトを2日間かけて行ったツインオッター機は22日に無事、ロゼラ観測基地に帰還。2人の病人は別のツインオッター機に移され、チリの最南端の都市プンタアレナスに向かった。

 

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