自由党政権は2月25日、市民権法改正法案を国会に提出、公約通りC-24法の一部を改正する。

 内容では、二重国籍者へのカナダ国籍はく奪の撤回、市民権申請までの国内滞在期間の短縮、公用語取得義務年齢幅の縮小が主に注目された。

 現在施行されているC-24は、前保守党政権時代の2015年5月から実施。「カナダ国籍は特別なもの」という概念のもと、取得条件はより厳しく、はく奪権利は政府が握るという内容に変更された。それが今回は緩和され、保守党政権が変更する前に近くなる。

 特に高い関心を集めたのが、二重国籍者がテロ、スパイ、反逆行為を行った場合、政府がカナダ国籍をはく奪できるという項目の撤回。要点は二重国籍者のみが、この法案の対象になっていること。この日、記者会見を行ったジョン・マッカラム移民・難民・市民権相は、ジャスティン・トルドー首相が選挙戦時に使った「カナダ人は、カナダ人であり、カナダ人だ」という言葉を繰り返し、「カナダ国籍保有者に階級を付けることはできない。みんな同じカナダ人だ」と語った。

 トルドー首相は、選挙戦時に公約として、このC-24の改正を公約として掲げていた。国会が再開し、ようやく公約の実現に一歩近づく。

 国籍はく奪要項が特に注目されているのは、すでにこの法律に則り、国籍をはく奪されたテロリストが存在しているため。ダウンタウントロント爆破計画で2010年に無期懲役となった、いわゆるテロリスト集団トロント18のザカリア・アマラ受刑者。ヨルダン籍も有する二重国籍者で昨年9月にカナダ国籍をはく奪された。今回の法改正案が通過すれば、アマラ受刑者にカナダ国籍が返還される。

 テロリストに国籍が返還されることはどうなのかとの問いにマッカラム移民相は、二重国籍者も含め、全てのカナダ国民はテロ行為を行えば、その行為に対しカナダの法制度の下で裁かれると説明。二重国籍者だけが国籍をはく奪されるという法律は、カナダ国民に階級を作ることになると語った。

 これに対し野党保守党ミッシェル・レンペル議員は「非常に近視眼的」と語り、これで得をするのはアマラ受刑者のみでテロリストに誤った印象を与えると批判した。ただ、同じ犯罪でも二重国籍者のみを対象とした法律を制定した保守党の批判にあまり説得力はなかった。

 その他の改正点では、これまで市民権を取得するための条件としてカナダ在住期間を永住権を獲得して6年中4年としていたのを、5年中3年と改正。さらに留学生として滞在していた期間も1年を上限に3年に含むことができるとする。保守党の改正前は、4年中3年だった。マッカラム移民相は留学期間も滞在期間に含むことに対し、「留学生としてカナダに滞在し、英語もしくはフランス語も流暢で、カナダについてもすでに知識があり、カナダの教育制度を利用している人材ほどカナダ国民に相応しいことはないのではないか」と語り、有能な移民者を、イギリスやアメリカ、オーストラリアと競争しなければならない現在の状況で留学生をはじくことほど馬鹿げたことはないと説明した。

 さらに市民権取得の条件である公用語、英語もしくはフランス語の運用能力を示す必要がある年齢を、14歳から64歳から、18歳から54歳に縮小する。働き盛りの人材は公用語能力が必須だが、高齢者は対象外とした。マッカラム移民相は、高齢者の言語能力を問わないことについて、多くの一世は英語やフランス語がそれほど流暢ではないかもしれないが、その子供や孫はバイリンガルとなり、カナダに貢献してくれていると語った。

 

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