ブリティッシュ・コロンビア州議会開会で9日に読み上げられた式辞で、液化天然ガス(LNG)への期待はこれまでとは全く違う姿勢が示された。

 これまでクリスティ・クラーク州首相は、LNGはBC州の経済基盤として長期にわたり州の経済と雇用を支えていく産業と声高に主張していた。2011年には、州政府計画として、州北西部の町キティマットに、最低でも1つのLNGパイプラインとターミナルを2015年までに稼働させ、2020年までには3つを稼働させるとしていた。LNGによる経済効果は雇用だけでも10万人と語り、2013年の州選挙前にも大々的にLNGをアピールした。当時はアルバータ州のオイルサンドのように州経済を長期にわたり潤す存在となると語っていた。

 2013年の選挙で予想に反して自由党が選挙に大勝し、公約通りLNG計画が進むかと思われたが、実際には遅々として進まなかった。LNGに関する規則の制定が予定よりも遅れるなど、州政府の対応の遅さも要因だった。LNG開発計画ではBC州で最大手だったマレーシア国営企業ペトロナス社率いる共同事業体が最終投資決定を延期するなどの要因もあった。

 その後、2014年後半から急速に原油価格が値下がり始め、それに呼応するように天然ガス価格も急落。全世界的に石油や天然ガス開発事業への撤退が始まり、カナダも例外ではなかった。現在、ペトロナスはすでに開発することで一応決定をしているが、環境審査でターミナル建設の認可がまだ下りていない。もう一つの大手、ロイヤル・ダッチ・シェルは、最終投資決定を今年末まで延長すると先月発表した。

 こうした状況の中で読み上げられた開会の式辞。州政府はLNG開発から手を引くことはないと強調しながらも、これまでのような強い口調でLNGを経済基盤としていくとは決して語らなかった。

 BC新民主党(NDP)ジョン・ホーガン党首は、「クラーク州首相は3年前にはLNG産業が10万人の雇用を作り出すと語っていたが、今では1万3000人の雇用を守れるかどうかだと述べている」と語り、クラーク州首相のLNG対する見通しが甘かったことを批判した。

 

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