公立か、私立か

カナダ再入国を果たし、まだ地に足がぜんぜん着いていなかった新年早々。「今月末がキンダーガーテンの申込期限」というびっくり情報を入手しました。いやいや確かに年末、そんな話題も出てたっけ。でも一時帰国と再入国で頭がいっぱいで、何の手も打たず年越ししてしまいました。  娘たちは数ヵ月間の短期留学生としてキンダー通いを予定しています。留学生の場合、公立と私立で学費に大差はありません(桁違いの私立もありますが)。ちなみにバンクーバーの公立学校はひと月1300ドル。目の飛び出るような金額ですが、このために今までの超節約生活があったと言って過言でなく……。学費が同程度なら、公立私立にかかわらず娘たちが楽しく通える学校が一番と考えました。しいて言えば、私立のほうがフォローが手厚いかなという期待はありました。
PCとにらめっこしていても始まらないので、プリスクールを見て回ったあの夏のように、とある私立学校へぽんと飛び込みました。アポなし訪問だったものの学校見学もさせてくれ、「娘さんにもぜひ会いたいわ」とウェルカムな対応。私もかねて気になっていたモンテッソーリ教育を柱とする学校です。アクセスもよく、少人数でアットホームな雰囲気に「ここがいいかも!」とプリスクールの先生に推薦状を書いてもらい、後日、娘たちを連れて校長インタビューに臨みました。インタビューは日本で言う「面接」とは趣が異なり、カジュアルでフレンドリーな調子に終始し、申し込み用紙と推薦状を手渡して、もうキンダーは決まったとばかりに足どり軽く帰宅しました。
しかし確かに「来週、連絡します」と聞いたはずでしたが、待てど暮らせど連絡がありません。しびれを切らしてメールすると、「unfortunately」や「waiting list」といった単語が目に飛び込んできます。「クラス編成がまだ決まっておらず……」などと書かれていますが、要はウェルカムでないのだと理解しました。娘たちに英語のフォローが必要なためか短期間がネックなのか、理由は未だにわかりません。失恋に似た落胆とキンダー申込期間がとうに過ぎていることへの焦りと9月以降もカナダに居続けられるのかという不安が交錯しましたが、無理やり頭を上げ、他の学校へのアプローチを開始しました。

灯台下暗し!?

わが家から目と鼻の先に、広々とした公立学校があります。塀もなく地域に開かれ、私たちも夕方しばしばその校庭へ遊びに行く、なじみ深い場所です。よくよく聞けばプリスクールのお友達も二人通うことになっているし、習い事仲間もすでにキンダーに通っているし、スタートダッシュのクラスの先生も顔見知りで、娘たちにとって新しい環境とはいえ、幾分リラックスできる環境です。
まずは話からと学校オフィスを訪れると、受付にいた愛嬌たっぷりの男性(後に校長先生と判明)が、「この子たち双子だってさ! キンダーに入りたいそうだ」と他の職員に紹介し、他の職員も「まあ、楽しみね!」と笑顔のもてなし。なぜ最初にここへ直行しなかった!と自問するほどのあたたかい気持ちに包まれました。
留学生の場合、入学手続きは教育委員会を通して行います。日本人担当者が対応してくれ、ホッとしたのも束の間、「希望する学校は留学生を受け入れた経験がなく、入学できるかわかりません。入学できなければ他の学区に通うことになります。こちらも努力してはみますが……」という不安感の募るお答え。この公立学校は移民で占められてる?というほどの学校だったので、留学生を受け入れたことのない事実にびっくりでした。
……1週間後、無事、入学許可の連絡がありました。保険の手続きや授業料の払い込みを慌ただしく終え、ようやく一安心。ソメイヨシノのピンク色が街路を彩り始めた頃の話です。

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2013年6月20日 第25号 掲載

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