ここからが「親子留学」スタート

ビジター滞在の半年間は、プリスクールに通う娘たちの母として、それだけの肩書で過ごしてきました。夫は東京在住なので、妻の肩書は日本に一緒に置いてきたようなもの。ましてホームステイ期間は料理すらしていないのですから、主婦とも呼べぬ、なんと身軽な身分! そんな私、一時帰国を経てバンクーバーにカムバックした際、晴れて学生の肩書が加わりました(ビザ取得の話はまたの機会に)。
学生と言ってもESLに通う語学留学生です。二十歳の時に半年間アメリカで語学留学して以来ですから、実に十ウン年ぶり。当時より英語の勉強が格段におもしろくなっていました。大好きとは言えなかった文法も、英語表現を親切に解説してくれる興味深くありがたい存在なのだと再認識。昔は机上の勉強に過ぎなかったのが、今は普段プリスクールママと交わす会話から具体的例文をイメージしやすく、勉強した翌日には日常会話へ還元できるためでしょう。policeは常に複数扱いだとか、週末の予定を言うのにwillを使ってはならないとか、bestやmostなど最上級の前に置く関係代名詞はthatに限られるとか、まあ初心者レベルではありますが、私にとってためになることしきり。
クラスメイトもアジア、南米、欧州と程よくばらつきがあって活気があり、何より先生が魅力的です。一つの説明につき一つの笑いをとることをモットーにしているかのような愛すべきキャラクターで、カナダ文化案内人として見事な役割を果たしています。入学前にレベルテストは受けたものの見学もトライアルもなかったので、よき先生やクラスに巡り会えたことはラッキーでした。

デイケアの避けられない問題

さて、短時間プリスクールに通う娘を持ちながらのESL通いは、デイケア保育に頼る必要がありました。複数の保育士が常駐する大所帯のグループデイケアか一人の保育士が子ども数人を見るファミリーデイケアかと数カ所見学したうち、ここなら安全で楽しい時間が過ごせそうだと考えたグループデイケアにお願いすることにしました。初日、娘たちは「お友達できた〜」と数人の名前を挙げ、おやつやおもちゃ遊びも楽しかった様子で、幸先のよいスタートだと信じていました。ところが数日後、ある問題が浮上してきたのです。
それはお昼寝。5歳の娘たち、2歳過ぎにはお昼寝とはほぼ無縁になっており、デイケアでのお昼寝タイムが苦痛と訴え始めたのです。保育士の先生に相談し、本来2時間のお昼寝のうち、娘たちは1時間でOKという特別待遇もしてもらいました(他の子どもたちの手前、お昼寝なしは許可されず)。がしかし、大人でこそ1時間という時間感覚をなんとなく肌でつかめるものの、娘たちは時計すら見えない仄暗い部屋で、「いつ起こしてくれるのか」「本当に起こしてくれるのか」とひたすら気を揉みながら1分1秒をやり過ごしていたようです。娘の一人は「(先生が日によって変わることがあり)お母さんは今日も先生に伝えてくれただろうか」と不安が増幅し、毎回泣き出していたと言います。眠れない子は横たわった状態でぬいぐるみなど柔らかいもので遊ぶ分にはよしとされていたので、娘たちは顔を描いたフエルトを手袋に縫い付けてパペットを作り、それを「お昼寝の友」にしました。親指のお父ちゃん、人差し指のお母さん……たちを無言でおしゃべりさせれば時間経過はそれなりに早まったようですが、2週間も経つとやはり耐え難くなり……。
ついにデイケア保育は断念せざるを得ませんでした。私のESLは、継続中のクラスの間はお友達ママにシッターをお願いしたり、新規受講クラスは娘たちがサマーキャンプに通える時期に移動させたりして、これまでのところぎりぎりの線で乗り切っていますが……さてどうなるやら。

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2013年6月6日 第23号 掲載

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