二度ずつ体験した行事

バンクーバーの秋、それは雨の鬱陶しさも吹き飛ばす、活気に満ちたイベント尽くしの季節です。ありがたいかな、ホストファミリーの行事とプリスクールの行事、2倍の楽しみを享受することができました。
イベントの代表格はハロウィン。9月末のカボチャ狩りを助走に、ハロウィン数日前にはジャコランタンのカービング、そして待ちに待った当日と、私たち親子の気持ちも階段を昇るように盛り上がっていきます。先にホストファミリーでカボチャ狩りとカービングを経験したので、プリスクール行事ではカボチャの茎を鷲づかみにすると繊毛が手に刺さること、カービングは手際よく取りかからないと時間内に仕上がらないことはシミュレーション済み、多少の余裕を持って臨めました。
やはり一番の異国体験は「Trick or Treat」です。「次はあのおうちに行こう」「このおうち明かりがついてないからお留守かなぁ」「ここお化けのホテルだって!」と娘たちのテンションは上がりっぱなし。お菓子を受け取ったら、「Thank you! Happy Halloween!」と挨拶して立ち去ることも覚えました。小雨がだんだん本降りに、風もざわついてきたので「そろそろ帰ろう」と促しますが、「あと1件だけ……」とさらに1時間。パトカーのお巡りさんから最後のお菓子をGetし、手提げ袋を満杯にして帰宅しました。
家でお菓子チェックをしていると「Trick or Treat」とご近所さんがドアをノック。その瞬間、娘がパーッとドアへ走り寄って開けてしまい、ホストマザーに厳しく叱られもしました。言い含めていたにもかかわらず、だったからなおのこと。「Trick or Treat」は隣近所との信頼を柱に成り立っていますが、同時に防犯意識を根付かせるイベントなのかもしれませんね。娘にとっても私にとっても大事なことに気づかされる貴重な経験でもありました。その晩、娘たちは甘いもの過多でなかなか寝付けなかったのは言うまでもありません。
サンクスギビングデーには巨大な七面鳥の仕込みからオーブンに丸ごと入れて焼き上げる過程を目の当たりにしたり、豚や馬や羊と触れ合える遠足に行ったり、お友達のバースデーパーティーに参加したり……次々押し寄せるイベントの波に体をあずけていたら、気づけば通りの家々にはクリスマス・イルミネーションがキラキラ輝き出していました。

ビジター滞在、終了

2012年12月、半年間のビジター滞在のゴールが見えてきました。バンクーバー生活もここで休憩、一時帰国の途につきます。7月にカナダの大地に降り立って、なんとあっという間でしょう。生活を軌道に乗せられたのか。ちゃんと「親子留学」できたのか――。
「とりあえず行ってみよう!」から始まった親子留学計画、半年間でその「お気楽さ」を根っこから矯正された感があります。ビザ取得がスムーズにいかない例や入国の際に強制送還された例など日本人がカナダで生活していく上の現実を耳にして、目の覚める思いもしました。私の「お気楽さ」が手招きしてしまったあんな事件やあんな試練もあったな……。そんな中、ご縁あって出会った友人たちにいつも笑顔と励ましをもらい、親子三人四脚で歩いてきました。これらの出会いがあったからこの半年はかけがえのない時間だったと断言できます。
日本では娘たちの帰りをお父さんはじめ、おじいちゃんおばあちゃん、親戚たちが首を長くして待っています。「みんなに会える……」という期待は私の胸をいっぱいにしましたが、まだ任務の途中という意識が貼りついて「completely relaxed」とはいかない心持ちでの帰郷となりました。かたや娘たちの顔は一点の翳りもない歓喜に輝いていました。

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2013年5月16日 第20号 掲載

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